ハーフ&ハーフ

黒蝶

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追暮篇(おいぐらしへん)

閑話『真相の話』・参

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「僕のお嫁さんになってください」
ある日告げられた言葉に、私はただ固まることしかできなかった。
私は人間ではない、ずっと側にいては人間を襲いかねない種族...ヴァンパイアだと説明した瞬間に差し出されたのがそれだったからだ。
「酔った勢いではなく?」
「勿論だよ。僕はそんなに簡単に酔わないし...」
私の手を握る蓬の手は温かくて、ただそっと握りかえす。
硝子のような冷たさが伝わってしまわないかと不安になるけれど、それよりも彼の側にいたい気持ちが勝っていた。
「私でよければよろしくお願いします」
「本当!?よかった...」
私には人間としての戸籍がないから、挙式はふたりだけのものになった。
魔界のことを話すつもりはなかったし、事実婚でも幸せだ。
「いらっしゃいませ」
深夜のバーでの仕事も続けながら、一緒にいられる時間があるだけで幸せだった。
それ以上なんて望んだらバチが当たりそうで、ただ隣にいたいと願って毎日を過ごす。
そんな暮らしがしばらく続いたある日のこと、私はまた失態をおかした。
「ケイト、もし僕の血を飲んで楽になれるなら...」
「駄目よ。そんなことをすれば、あなたがどうなるか分からないもの」
純血種である私が噛んでしまえば、それだけで蓬は人間のままではいられなくなるだろう。
そんなことになるくらいなら、私が我慢すればいい。
そんなことを考えていると、目の前にぽたぽたと血が滴り落ちた。
それをペットボトルに入れると、彼はただ微笑む。
「噛むのに抵抗があるなら、こうしてしまえばいい」
「どう、して...」
「僕はケイトと一緒にいたいんだ」
中津蓬はとても優しい人だ。
私の恋人は、一生出会えないだろうというほどの優しさの塊でできている。
飲み終えた後、恐る恐る彼の表情を確認すると菩薩のように笑っていた。
「ごめんなさい...」
「仕方ないよ。生きるのに必要なら、僕がいくらでも力を貸す。
...だから、そんなに申し訳なさそうな顔をしないで」
瞬間、距離が一気に零になる。
そのままベッドでじゃれあいながら、貪るようにお互いの体温を分けあう。
その間だけは、嫌なことも全て忘れられた。
「...ケイト」
「ラッシュ、どうしたの?」
「おまえ、最近食事がまともにとれてないんじゃないか?」
それから数日後、久しぶりに会った友人に指摘される。
自分では分かっていなかったけれど、確かに少し体重が落ちているようだった。
「病院に行った方がいい。...あいつを心配させたくないんだろ?」
「ありがとう」
蓬とラッシュは何度か顔をあわせているらしい。
...ふたりとも意気投合したとしか教えてくれないから、どうやって仲良くなったのかは想像することしかできないけれど。
そうして病院に行ってみて分かった。
「蓬、私...子どもを身ごもったみたいなの」
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