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遡暮篇(のぼりぐらしへん)
新鮮な仕事方法
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そんな日が何日続いただろうか。
「包帯、換えてもいい?」
「うん。お願いします」
クレール不足はなかなか解消されず、あれからラッシュさんからくる連絡の内容はほとんど変わらない。
純血種の方が優先になるのは当然だし、人間を襲いたくない彼の気持ちはよく分かる。
だからこそ、僕はただクレールが早く供給されることを願うだけだ。
「はい、これで終わり」
「...ありがとう」
「どういたしまして。そういえば、新しい物語を書きはじめたの?」
最近の七海はよくパソコンとにらめっこしている。
怪我でカフェに行くことさえ難しくなった彼女は、ビデオ通話でなんとか打ち合わせをしているのだと教えてくれた。
「渡瀬さんのおかげですごく助かってる」
「七海が楽しそうでよかった」
ふたりでそんな話をしていると、画面に渡瀬さんの文字が浮かびあがってきた。
保留にして出るのかと思っていると、七海は勢いよく通話ボタンをクリックする。
『野崎さん、こんにち...すみません、お邪魔でしたね!』
「あ、いえ!僕の方こそすみません...」
なんだか気まずい空気が流れそうになるなか、お茶を淹れてくるからと伝えてそのまま退室する。
仕事の話なら、僕はこのまま聞かない方がいいのかもしれない。
七海が気に入っていた白桃の香りがするお茶を淹れたものの、ドアの前でただ立っていることしかできずにいた。
すると、中でどんな話をしているのかが少しだけ聞こえてくる。
「...と、思うんですけど、どうでしょうか?」
『いいですね!その展開でいきましょう』
「はい」
なかなか上手くいっているらしいと思うと、ついにやけてしまう。
やはり入るべきではないと扉から離れようとすると、渡瀬さんの声が響いた。
『野崎さん、恋人さんと本当に仲がいいんですね』
「...木葉は最高の恋人です」
まさかそんなふうに言ってもらえるとは思っていなくて、動揺してしまう。
少し動くと、かちゃんとカップが鳴ってしまった。
「...入っても大丈夫だよ」
恐る恐る扉を開けると、そこには満面の笑みを浮かべる七海と画面越しに笑う渡瀬さんの姿があった。
『物語の話は詰まってきましたので大丈夫です。彼氏さん、いつも親切にありがとうございます』
「いや、えっと、僕は何も...」
『曙書店で働いてくださってますよね?』
まさかこの場で職場の質問が飛んでくるとは思わず戸惑っていると、あそこは知り合いの店なのだと教えてくれた。
『中津さんとお友だちさん?がよく動いてくれて助かっているという話は聞いています』
「は、初めて知りました...」
話を続けようとすると、お父さんと呼ぶ声が聞こえる。
『すみません、また連絡します』
「はい。それではまた」
通話が切れた画面の先では、きっといいお父さんとしての仕事が待っているのだろう。
七海の前にお茶を出すと、花のような笑顔を見せてくれる。
ありがとうの言葉だけでいつも以上に緊張した。
「包帯、換えてもいい?」
「うん。お願いします」
クレール不足はなかなか解消されず、あれからラッシュさんからくる連絡の内容はほとんど変わらない。
純血種の方が優先になるのは当然だし、人間を襲いたくない彼の気持ちはよく分かる。
だからこそ、僕はただクレールが早く供給されることを願うだけだ。
「はい、これで終わり」
「...ありがとう」
「どういたしまして。そういえば、新しい物語を書きはじめたの?」
最近の七海はよくパソコンとにらめっこしている。
怪我でカフェに行くことさえ難しくなった彼女は、ビデオ通話でなんとか打ち合わせをしているのだと教えてくれた。
「渡瀬さんのおかげですごく助かってる」
「七海が楽しそうでよかった」
ふたりでそんな話をしていると、画面に渡瀬さんの文字が浮かびあがってきた。
保留にして出るのかと思っていると、七海は勢いよく通話ボタンをクリックする。
『野崎さん、こんにち...すみません、お邪魔でしたね!』
「あ、いえ!僕の方こそすみません...」
なんだか気まずい空気が流れそうになるなか、お茶を淹れてくるからと伝えてそのまま退室する。
仕事の話なら、僕はこのまま聞かない方がいいのかもしれない。
七海が気に入っていた白桃の香りがするお茶を淹れたものの、ドアの前でただ立っていることしかできずにいた。
すると、中でどんな話をしているのかが少しだけ聞こえてくる。
「...と、思うんですけど、どうでしょうか?」
『いいですね!その展開でいきましょう』
「はい」
なかなか上手くいっているらしいと思うと、ついにやけてしまう。
やはり入るべきではないと扉から離れようとすると、渡瀬さんの声が響いた。
『野崎さん、恋人さんと本当に仲がいいんですね』
「...木葉は最高の恋人です」
まさかそんなふうに言ってもらえるとは思っていなくて、動揺してしまう。
少し動くと、かちゃんとカップが鳴ってしまった。
「...入っても大丈夫だよ」
恐る恐る扉を開けると、そこには満面の笑みを浮かべる七海と画面越しに笑う渡瀬さんの姿があった。
『物語の話は詰まってきましたので大丈夫です。彼氏さん、いつも親切にありがとうございます』
「いや、えっと、僕は何も...」
『曙書店で働いてくださってますよね?』
まさかこの場で職場の質問が飛んでくるとは思わず戸惑っていると、あそこは知り合いの店なのだと教えてくれた。
『中津さんとお友だちさん?がよく動いてくれて助かっているという話は聞いています』
「は、初めて知りました...」
話を続けようとすると、お父さんと呼ぶ声が聞こえる。
『すみません、また連絡します』
「はい。それではまた」
通話が切れた画面の先では、きっといいお父さんとしての仕事が待っているのだろう。
七海の前にお茶を出すと、花のような笑顔を見せてくれる。
ありがとうの言葉だけでいつも以上に緊張した。
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