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遡暮篇(のぼりぐらしへん)
早く側に
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「仕事、すぐ終わらせてくるね」
ひとりで置いていくのは心配ではあるものの、僕の仕事は休むことができない。
もし七海に何かあったらと思うと、いつもは楽しい本を持つ手も止まってしまう。
「木葉、大丈夫?」
「柊...」
表情豊かになった友人に目をやると、心配そうに顔を歪めている。
どんな反応をすればいいのか分からないなりに僕は平気だからと伝えた。
ただ、そう話した瞬間にため息を吐かれてしまう。
「どうして溜め息?」
「僕は大丈夫と言っているときほど、本当は大丈夫じゃないような気がするから」
柊は本当に人をよく観察している。
僕ももっと他人のことが分かるようになりたいと思いつつ、かけられた言葉に苦笑するしかなかった。
「七海のことが心配なんだ。だから、できるだけ仕事を早く終わらせられるように頑張ろうって思ってはいるんだけど...」
「思ってはいるものの、気になって手がつかない?」
「何でもお見通しなんだね」
ふたりで話していると少しだけ緊張が解れて、いつもよりはぎこちないものの手が進むようになった。
「ふたりとも、少しいいかな?」
仕事終わりに何故か店長に呼ばれ、まさかクビになってしまうのではと不安になりながら部屋に入る。
その瞬間、渡されたのは少し分厚い封筒だった。
「ふたりはいつもよくやってくれているから、ほんの少しだけどボーナスだよ」
「そんな、これはいただけません」
ふたりで慌てていると、店長は優しく微笑んだ。
「...実は月に2,3人にだけ渡しているんだ。今回はやっと君たちに渡すことができる」
どうして彼がほっとしたような表情を浮かべているのかは分からないが、役に立てていると思えば素直に嬉しかった。
「私が受け取ってほしいんだ。...駄目かな?」
「そういうことなら、ありがたくいただきます。...感謝します」
「ありがとうございます」
そうして片づけを終えた頃には、月が真上までのぼっていた。
「ごめん、僕急ぐから...。でも、柊のおかげで今夜も楽しかったよ。ありがとう」
「別に僕は何もしていない。...気をつけて」
臨時収入を鞄の奥の方に仕舞い、そのまま七海のところに向かう。
早く帰って話をしたい。
そして、また朝までふたりでゆっくり話をするのだ。
「ただいま」
「おかえりなさい」
僕を待っていたのは、お菓子を焼いている七海...だけではなかった。
「お、おじゃましています」
「こんばんはシェリ。こんな時間にどうしたの?」
事情を訊こうとすると、ノワールが窓から勢いよく入ってきた。
「すみません、ノワールさんに怪我をさせてしまいました...」
ひとりで置いていくのは心配ではあるものの、僕の仕事は休むことができない。
もし七海に何かあったらと思うと、いつもは楽しい本を持つ手も止まってしまう。
「木葉、大丈夫?」
「柊...」
表情豊かになった友人に目をやると、心配そうに顔を歪めている。
どんな反応をすればいいのか分からないなりに僕は平気だからと伝えた。
ただ、そう話した瞬間にため息を吐かれてしまう。
「どうして溜め息?」
「僕は大丈夫と言っているときほど、本当は大丈夫じゃないような気がするから」
柊は本当に人をよく観察している。
僕ももっと他人のことが分かるようになりたいと思いつつ、かけられた言葉に苦笑するしかなかった。
「七海のことが心配なんだ。だから、できるだけ仕事を早く終わらせられるように頑張ろうって思ってはいるんだけど...」
「思ってはいるものの、気になって手がつかない?」
「何でもお見通しなんだね」
ふたりで話していると少しだけ緊張が解れて、いつもよりはぎこちないものの手が進むようになった。
「ふたりとも、少しいいかな?」
仕事終わりに何故か店長に呼ばれ、まさかクビになってしまうのではと不安になりながら部屋に入る。
その瞬間、渡されたのは少し分厚い封筒だった。
「ふたりはいつもよくやってくれているから、ほんの少しだけどボーナスだよ」
「そんな、これはいただけません」
ふたりで慌てていると、店長は優しく微笑んだ。
「...実は月に2,3人にだけ渡しているんだ。今回はやっと君たちに渡すことができる」
どうして彼がほっとしたような表情を浮かべているのかは分からないが、役に立てていると思えば素直に嬉しかった。
「私が受け取ってほしいんだ。...駄目かな?」
「そういうことなら、ありがたくいただきます。...感謝します」
「ありがとうございます」
そうして片づけを終えた頃には、月が真上までのぼっていた。
「ごめん、僕急ぐから...。でも、柊のおかげで今夜も楽しかったよ。ありがとう」
「別に僕は何もしていない。...気をつけて」
臨時収入を鞄の奥の方に仕舞い、そのまま七海のところに向かう。
早く帰って話をしたい。
そして、また朝までふたりでゆっくり話をするのだ。
「ただいま」
「おかえりなさい」
僕を待っていたのは、お菓子を焼いている七海...だけではなかった。
「お、おじゃましています」
「こんばんはシェリ。こんな時間にどうしたの?」
事情を訊こうとすると、ノワールが窓から勢いよく入ってきた。
「すみません、ノワールさんに怪我をさせてしまいました...」
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