191 / 258
遡暮篇(のぼりぐらしへん)
昔話
しおりを挟む
事情を聞いた僕は、ただ息を吐いた。
威圧したつもりはなかったものの、シェリの生い立ちから想像するべきだったと猛省する。
「ごめん。別に怒ってる訳じゃなくてほっとしたんだ」
「ほっと...?」
頷いてみせると、不思議そうな表情で尋ねてきた。
「ど、して、怒ら、ないん...ですか?」
「わざとじゃないんだし、昔からノワールには無茶をする癖があるんだ」
「昔から?」
これには七海も興味津々のようだ。
本当は話すつもりはなかったのだが、少しでもシェリの心が晴れればいいと話してみることにした。
「小さい頃、実家の近くで遊んでいたら木から落ちて怪我しそうになったことがあったんだ。
...もう駄目だと思っていたのに、下敷きになってたのはノワールだった」
僕はいつだってノワールに助けられている。
彼にはそんなつもりはないのかもしれないが、僕にとっては心の支えだった。
他の誰とも同じになれないことが苦痛で仕方なかったとき、いつも側にいてくれた大切な友人だ。
「そのときもノワールは怪我をしたの?」
「打ち所が悪かったら死んでたかもしれないっていうのは後で聞いた。
だから、僕を助けないでってお願いしたんだけど...」
言葉を濁すと、七海ははっとした様子で申し訳なさそうに俯いてしまった。
どうしようかと考えていると、シェリが口を開く。
「優しい、ですね。ノワール、さんに...伝わった、と思い、ます」
「何が?」
「...木葉様の、優しさ、です」
「僕の、優しさ...」
シェリが微笑みかけてくれて、そっと頭を撫でる。
七海も顔をあげ、僕の方を真っ直ぐ見つめていた。
「ありがとう。そう言ってもらえるとすごく嬉しいな」
「事実、ですから」
「シェリも木葉も仲良しさんだね」
3人で笑いあっていると連絡が入る。
ディスプレイに表示された番号には覚えがあった。
「...どうしたの、ラッシュさん」
『そっちにシェリはいるか?』
「うん、いるけど...」
真っ青な顔をしている人を...ましてやこんな真夜中に少女をひとりで帰すわけにはいかない。
数秒の沈黙の後、思いきって口を開いた。
「今夜はシェリをうちに泊めるから」
「...!」
『あいつには俺から話しておく。それから、クレールが近いうちに手に入りそうだから知らせておく』
「分かった。ありがとう」
通話を終えると、ぽかんとした表情のまま立ち尽くしているシェリに声をかけた。
「というわけで、こっちの奥の部屋ならちゃんと片づいてるから好きに使って」
「あ、ありがと、ございます...」
何度も頭を下げる様子を見ながら、七海とふたりみつめあう。
...どうやら考えていることは同じのようだ。
威圧したつもりはなかったものの、シェリの生い立ちから想像するべきだったと猛省する。
「ごめん。別に怒ってる訳じゃなくてほっとしたんだ」
「ほっと...?」
頷いてみせると、不思議そうな表情で尋ねてきた。
「ど、して、怒ら、ないん...ですか?」
「わざとじゃないんだし、昔からノワールには無茶をする癖があるんだ」
「昔から?」
これには七海も興味津々のようだ。
本当は話すつもりはなかったのだが、少しでもシェリの心が晴れればいいと話してみることにした。
「小さい頃、実家の近くで遊んでいたら木から落ちて怪我しそうになったことがあったんだ。
...もう駄目だと思っていたのに、下敷きになってたのはノワールだった」
僕はいつだってノワールに助けられている。
彼にはそんなつもりはないのかもしれないが、僕にとっては心の支えだった。
他の誰とも同じになれないことが苦痛で仕方なかったとき、いつも側にいてくれた大切な友人だ。
「そのときもノワールは怪我をしたの?」
「打ち所が悪かったら死んでたかもしれないっていうのは後で聞いた。
だから、僕を助けないでってお願いしたんだけど...」
言葉を濁すと、七海ははっとした様子で申し訳なさそうに俯いてしまった。
どうしようかと考えていると、シェリが口を開く。
「優しい、ですね。ノワール、さんに...伝わった、と思い、ます」
「何が?」
「...木葉様の、優しさ、です」
「僕の、優しさ...」
シェリが微笑みかけてくれて、そっと頭を撫でる。
七海も顔をあげ、僕の方を真っ直ぐ見つめていた。
「ありがとう。そう言ってもらえるとすごく嬉しいな」
「事実、ですから」
「シェリも木葉も仲良しさんだね」
3人で笑いあっていると連絡が入る。
ディスプレイに表示された番号には覚えがあった。
「...どうしたの、ラッシュさん」
『そっちにシェリはいるか?』
「うん、いるけど...」
真っ青な顔をしている人を...ましてやこんな真夜中に少女をひとりで帰すわけにはいかない。
数秒の沈黙の後、思いきって口を開いた。
「今夜はシェリをうちに泊めるから」
「...!」
『あいつには俺から話しておく。それから、クレールが近いうちに手に入りそうだから知らせておく』
「分かった。ありがとう」
通話を終えると、ぽかんとした表情のまま立ち尽くしているシェリに声をかけた。
「というわけで、こっちの奥の部屋ならちゃんと片づいてるから好きに使って」
「あ、ありがと、ございます...」
何度も頭を下げる様子を見ながら、七海とふたりみつめあう。
...どうやら考えていることは同じのようだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる