197 / 258
遡暮篇(のぼりぐらしへん)
ほろ酔い気分
しおりを挟む
ぼんやりしていると、玄関の扉が2回ノックされる。
急いで開けた瞬間、飛びこんできたのは予想どおりの人物だった。
「ごめんなさいね、遅くなっちゃって...」
「け、ケイト、様...」
真っ青な顔をしたシェリの肩に手をのせ、母はにこりと笑った。
「いいのよ。お友だちと話をしていれば遅くなることもあるでしょう?」
「は、はい...」
「シェリ、誰もあなたのことを怒ってなんかいないわ。
ただ...帰ったらどんなことをしたのか教えてね」
「はい」
一礼して去っていく背中を見送っていると、母がこそっと耳打ちした。
「クレール、私が持っている分を置いていくわ。もう少しで来るはずだから、それまでの辛抱よ」
手に握らされたのは、ふたつの小瓶。
母だって辛いはずなのに、何故僕にくれたのかよく分からない。
内心感謝しつつ、早速そのうちのひとつに口をつける。
...以前のものよりも甘い。
「木葉、それは...」
「さっきクレールを少しだけ分けてもらったんだ。でも、いつもとちょっと味が違うような気がする」
不安げに瞳を揺らす七海に大丈夫だからと声をかける。
本当は少し体が怠いような気がしたが、そのことは黙っておくことにした。
──どのくらい時間が経っただろうか。
片づけを終えて眠ってしまった彼女の頭を撫でながら月を眺めていると、激しい音をたてながら扉がノックされる。
そこにいたのは、焦った表情のラッシュさんだった。
「木葉、もしかしてあいつからもらったもんを呑んだんじゃ...」
「呑んだよ。いつもより甘いね」
そう言葉を発した瞬間、目の前の彼は何故か顔を両手で覆ってしまう。
何がなんだか分からないままその様子を見つめていると、後ろからからんからんと杖の音がした。
「こんばんは。何かあったんですか?」
「いいか、お嬢さん。今のこいつはクレールに酔ってる」
「酔ってるってどういうこと?」
「...自覚がないのか」
はあ、と息を吐きながら、ラッシュさんは説明してくれた。
「おまえに渡す分は、実は俺みたいな純血種が使うものを薄めている。
人体に影響を及ぼさない程度の薬剤を使ったりもしてるが、それはまだ調合を終わらせてなかったものだ。それを呑んだってことは...」
だんだん頭がくらくらしてきた。
話を聞かないといけないのに、強い眠気に勝てそうにない。
「木葉、大丈、」
七海の声がしたような気がしたが、気のせいだろうか。
そんなことを考えているうちについに限界に達したらしく、そのまま瞼をおろした。
急いで開けた瞬間、飛びこんできたのは予想どおりの人物だった。
「ごめんなさいね、遅くなっちゃって...」
「け、ケイト、様...」
真っ青な顔をしたシェリの肩に手をのせ、母はにこりと笑った。
「いいのよ。お友だちと話をしていれば遅くなることもあるでしょう?」
「は、はい...」
「シェリ、誰もあなたのことを怒ってなんかいないわ。
ただ...帰ったらどんなことをしたのか教えてね」
「はい」
一礼して去っていく背中を見送っていると、母がこそっと耳打ちした。
「クレール、私が持っている分を置いていくわ。もう少しで来るはずだから、それまでの辛抱よ」
手に握らされたのは、ふたつの小瓶。
母だって辛いはずなのに、何故僕にくれたのかよく分からない。
内心感謝しつつ、早速そのうちのひとつに口をつける。
...以前のものよりも甘い。
「木葉、それは...」
「さっきクレールを少しだけ分けてもらったんだ。でも、いつもとちょっと味が違うような気がする」
不安げに瞳を揺らす七海に大丈夫だからと声をかける。
本当は少し体が怠いような気がしたが、そのことは黙っておくことにした。
──どのくらい時間が経っただろうか。
片づけを終えて眠ってしまった彼女の頭を撫でながら月を眺めていると、激しい音をたてながら扉がノックされる。
そこにいたのは、焦った表情のラッシュさんだった。
「木葉、もしかしてあいつからもらったもんを呑んだんじゃ...」
「呑んだよ。いつもより甘いね」
そう言葉を発した瞬間、目の前の彼は何故か顔を両手で覆ってしまう。
何がなんだか分からないままその様子を見つめていると、後ろからからんからんと杖の音がした。
「こんばんは。何かあったんですか?」
「いいか、お嬢さん。今のこいつはクレールに酔ってる」
「酔ってるってどういうこと?」
「...自覚がないのか」
はあ、と息を吐きながら、ラッシュさんは説明してくれた。
「おまえに渡す分は、実は俺みたいな純血種が使うものを薄めている。
人体に影響を及ぼさない程度の薬剤を使ったりもしてるが、それはまだ調合を終わらせてなかったものだ。それを呑んだってことは...」
だんだん頭がくらくらしてきた。
話を聞かないといけないのに、強い眠気に勝てそうにない。
「木葉、大丈、」
七海の声がしたような気がしたが、気のせいだろうか。
そんなことを考えているうちについに限界に達したらしく、そのまま瞼をおろした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる