ハーフ&ハーフ

黒蝶

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遡暮篇(のぼりぐらしへん)

仕切り直し

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「この間はあんまりゆっくり見られなかったから、あの場所が見える別の道を通って帰ろうか」
そう話した木葉に腕をひかれてやってきたのは、先日まったりしようとした場所だった。
なんだか胸が熱くなるのを感じていると、そっと手を繋いでくれる。
「こうしてた方が歩きやすいでしょ?」
「ありがとう...」
ちょっとだけ恥ずかしく思いながらも、少しずつ前へと進む。
体を動かす度、かつんと杖の音だけが響く。
(たまにはこんな夜もいいな...)
呑気なことを考えていると、バランスを崩しそうになる。
もう駄目だと思ったそのとき、力強く引っ張られた。
「よかった、セーフ...大丈夫だった?」
「うん。ごめんね」
「これだけいい夜なんだもん、誰だってぼうっとしちゃうよ。でも、転んだら大変だからやっぱり手は繋いでおこう」
「ありがとう...」
最近木葉に感謝の言葉をかけることが多くなっているような気がする。
迷惑をかけて申し訳ないという気持ちもあるけれど、それよりも助けてくれたお礼を伝えたい。
...やっぱり、過去の話を聞いたからだろうか。
「もし七海さえよければだけど、今夜は夜更かししない?」
「唐突だね...」
「ラッシュさんがお菓子をくれたんだ。早く食べないといたんじゃいそうだから...駄目?」
「駄目じゃないよ。それなら急いで帰ろう」
軽くでも夕飯を食べておかないと、なんだか落ち着かない。
太ってしまったらどうしようと想像しないわけでもないけれど、今日は少し歩いたからよしとしよう。
(...やっぱり私、木葉の『駄目?』には弱いみたい)
内心そんなことを考えながら、歩調をあわせてくれる彼にありがとうと伝えた。
「いただきます。それから、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした。...いただきます」
流石に作る気力はないからとコンビニで買ったものを並べる。
どれから食べようか迷っていると、木葉がいつも私が飲んでいるノンアルコールカクテルの缶を持ってきてくれた。
「これで乾杯しよう。僕も久しぶりに呑もうかな」
「いつもより体に沁みるかもしれないね」
私たちはふたりしてお酒に強い方ではない。
だからこうして、夕飯にノンアルコールの飲み物を試してお酒を嗜む気分を味わうことが時々ある。
「それじゃあ、乾杯!」
「乾杯」
ころんと缶独特の音を聞いた瞬間、無事に今日を終えられるんだなとほっとした。
あの人たちの狙いは分からないけれど、なんとか日常が壊れなければいい。
...ただ、今は目の前の笑顔を追うだけでせいいっぱいだ。
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