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遡暮篇(のぼりぐらしへん)
ちょこっと返し
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少し遠くから聞きなれた声がする。
そっちの方へ向かうと、押し問答するふたりの姿があった。
「でも、泊めていただいたのに何もしないわけにはいきません」
「弱ったな...」
「それなら僕が何かするよ」
「あ、おはよう木葉」
七海に挨拶を返し、この場所の持ち主に向き直る。
「ラッシュさん、何か手伝えることある?」
「そうだな...」
重い頭を押さえながら体を起こしたのは、いつもより遅い時間だった。
あまり眠りすぎるのもよくないことは分かってはいるのだが、やはり朝はどうしても起きられない。
「それじゃあ、品出しとちょっとした接客を頼めるか?」
「分かった、頑張る...」
この体力でもできそうなものを頼んでくれるのだから、ラッシュさんは本当にいい人だと思う。
個々の実力を伸ばすのが上手い人だとは思っていたが、完全に予想外だった。
「いらっしゃいませ。本日はご来店ありがとうございます」
なんとか笑顔を心がけるものの、そう簡単にはいかない。
どうしてもぎこちなくなってしまうことを申し訳なく思っていると、後ろからひらひらした格好をした見覚えのある杖を持った女性が現れる。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
「七海...」
「接客は頑張るから、お客様に渡す荷物を用意してもらってもいい?
...私にはできないことだから」
「ごめんね。ありがとう」
七海だって人と接するのはあまり得意な方ではないはずなのに、それでも僕が困っているからと手伝いに来てくれたらしい。
それに、身につけているものは間違いなくこのお店のオーダーメイド品だった。
「ラッシュさんの新作?」
「どうかな...?」
「すごく綺麗だよ」
お客さんが途切れた少しの間にそんな言葉を交わす。
顔を赤くした七海は小さくありがとうと言って離れていく。
はじめは慣れないと思っていたことも、気づいたときには空が茜色に染まっていた。
「ふたりともありがとう。本当に助かった」
「それならいいけど、僕ほとんど何もできなかったよ?」
「それを言うなら私はもっとできてないと思うけど...」
瞬間、ラッシュさんが声をあげて笑いだす。
不思議に思って首をかしげていると、ふたり揃って勢いよく頭を撫でられた。
「本当に仲がいいな。...羨ましいくらいだ」
「あの、また手伝いに来てもいいですか?」
「それは歓迎だ。ただ、お嬢さんはもうちょっと怪我を治してからだな。
木葉は...まあ、昼過ぎじゃ力が出ないだろうから夜呼び出す」
「七海と一緒がいいな...」
少しでも何か返せていればいい。
お世話になりっぱなしな気もするが、これから沢山のことを返していこう。
改めて考えた1日になった。
そっちの方へ向かうと、押し問答するふたりの姿があった。
「でも、泊めていただいたのに何もしないわけにはいきません」
「弱ったな...」
「それなら僕が何かするよ」
「あ、おはよう木葉」
七海に挨拶を返し、この場所の持ち主に向き直る。
「ラッシュさん、何か手伝えることある?」
「そうだな...」
重い頭を押さえながら体を起こしたのは、いつもより遅い時間だった。
あまり眠りすぎるのもよくないことは分かってはいるのだが、やはり朝はどうしても起きられない。
「それじゃあ、品出しとちょっとした接客を頼めるか?」
「分かった、頑張る...」
この体力でもできそうなものを頼んでくれるのだから、ラッシュさんは本当にいい人だと思う。
個々の実力を伸ばすのが上手い人だとは思っていたが、完全に予想外だった。
「いらっしゃいませ。本日はご来店ありがとうございます」
なんとか笑顔を心がけるものの、そう簡単にはいかない。
どうしてもぎこちなくなってしまうことを申し訳なく思っていると、後ろからひらひらした格好をした見覚えのある杖を持った女性が現れる。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
「七海...」
「接客は頑張るから、お客様に渡す荷物を用意してもらってもいい?
...私にはできないことだから」
「ごめんね。ありがとう」
七海だって人と接するのはあまり得意な方ではないはずなのに、それでも僕が困っているからと手伝いに来てくれたらしい。
それに、身につけているものは間違いなくこのお店のオーダーメイド品だった。
「ラッシュさんの新作?」
「どうかな...?」
「すごく綺麗だよ」
お客さんが途切れた少しの間にそんな言葉を交わす。
顔を赤くした七海は小さくありがとうと言って離れていく。
はじめは慣れないと思っていたことも、気づいたときには空が茜色に染まっていた。
「ふたりともありがとう。本当に助かった」
「それならいいけど、僕ほとんど何もできなかったよ?」
「それを言うなら私はもっとできてないと思うけど...」
瞬間、ラッシュさんが声をあげて笑いだす。
不思議に思って首をかしげていると、ふたり揃って勢いよく頭を撫でられた。
「本当に仲がいいな。...羨ましいくらいだ」
「あの、また手伝いに来てもいいですか?」
「それは歓迎だ。ただ、お嬢さんはもうちょっと怪我を治してからだな。
木葉は...まあ、昼過ぎじゃ力が出ないだろうから夜呼び出す」
「七海と一緒がいいな...」
少しでも何か返せていればいい。
お世話になりっぱなしな気もするが、これから沢山のことを返していこう。
改めて考えた1日になった。
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