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遡暮篇(のぼりぐらしへん)
安眠
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どんな話をしているのか私には分からない。
ただ、今夜はもう遅いから部屋を借りられることになったことと一緒に寝ようという話はした。
「この部屋、結構広いね...」
「そうだね。僕もびっくりしてる」
ふたりで顔を見あわせ笑いあう。
ただそれだけのことでも、今はすごく安心する。
「今は平気...?」
それはきっと、心身共に大丈夫そうなのかという意味なのだろう。
ケイトさんがいて、シェリがいて、ラッシュさんがいて、美桜さんがいて...。
(いつだって木葉がいてくれる)
「うん。さっきは話を聞いてくれてありがとう」
「僕にはあれくらいしかできないから...」
ラッシュさんからもらったお茶をすすっていると、弱々しい言葉が返ってくる。
「...私にとってはすごいことなんだけど、それじゃ駄目かな」
「やっぱり七海は優しいね」
「木葉だって優しいよ」
杖を使わないと歩けない私に歩調をあわせてくれたり、荷物もちを買って出てくれたり...私からすればいつだって優しさの塊だ。
「おふたりさん、俺も交ざっていいか?」
咳払いをして部屋にやってきたラッシュさんを見ていると、だんだん恥ずかしさがこみあげてくる。
もしかすると、さっきの会話も聞かれていたのだろうか。
(どうしよう、すごく恥ずかしい...)
木葉も同じように思ったのか、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
なんとなく気まずい沈黙が少し流れたけれど、ラッシュさんは気さくに話しかけてくれる。
「ふたりとも、この部屋は狭くないか?」
「全然大丈夫だよ。...寧ろ広すぎるくらい」
「夜分にありがとうございます」
私が頭を下げるとぽんぽんと優しく撫でられる。
「困ったときはお互い様だろ?気にしなくていいから、今夜はふたりでゆっくり眠ればいい」
「...はい」
「おやすみ」
「ラッシュさんもちゃんと寝ないと駄目だよ」
「おまえに説教されるほどじゃない。とにかくちゃんと休むように」
然り気無く下げられたティーカップを目で追いながら、少しずつ体をベッドに沈めていく。
「今夜は僕もよく眠れそう」
「最近ふたりで遅くまで起きてたもんね...」
「お互いの環境がこんなに地獄だとは思ってなかったから、やっぱりいい機会になったって僕は思ってる」
「...うん、私も」
そんな話をしながらゆっくり瞼をおろす。
今夜はいい夢が見られるかもしれない、そんなことを考えているうちに深い眠りに落ちていた。
ただ、今夜はもう遅いから部屋を借りられることになったことと一緒に寝ようという話はした。
「この部屋、結構広いね...」
「そうだね。僕もびっくりしてる」
ふたりで顔を見あわせ笑いあう。
ただそれだけのことでも、今はすごく安心する。
「今は平気...?」
それはきっと、心身共に大丈夫そうなのかという意味なのだろう。
ケイトさんがいて、シェリがいて、ラッシュさんがいて、美桜さんがいて...。
(いつだって木葉がいてくれる)
「うん。さっきは話を聞いてくれてありがとう」
「僕にはあれくらいしかできないから...」
ラッシュさんからもらったお茶をすすっていると、弱々しい言葉が返ってくる。
「...私にとってはすごいことなんだけど、それじゃ駄目かな」
「やっぱり七海は優しいね」
「木葉だって優しいよ」
杖を使わないと歩けない私に歩調をあわせてくれたり、荷物もちを買って出てくれたり...私からすればいつだって優しさの塊だ。
「おふたりさん、俺も交ざっていいか?」
咳払いをして部屋にやってきたラッシュさんを見ていると、だんだん恥ずかしさがこみあげてくる。
もしかすると、さっきの会話も聞かれていたのだろうか。
(どうしよう、すごく恥ずかしい...)
木葉も同じように思ったのか、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
なんとなく気まずい沈黙が少し流れたけれど、ラッシュさんは気さくに話しかけてくれる。
「ふたりとも、この部屋は狭くないか?」
「全然大丈夫だよ。...寧ろ広すぎるくらい」
「夜分にありがとうございます」
私が頭を下げるとぽんぽんと優しく撫でられる。
「困ったときはお互い様だろ?気にしなくていいから、今夜はふたりでゆっくり眠ればいい」
「...はい」
「おやすみ」
「ラッシュさんもちゃんと寝ないと駄目だよ」
「おまえに説教されるほどじゃない。とにかくちゃんと休むように」
然り気無く下げられたティーカップを目で追いながら、少しずつ体をベッドに沈めていく。
「今夜は僕もよく眠れそう」
「最近ふたりで遅くまで起きてたもんね...」
「お互いの環境がこんなに地獄だとは思ってなかったから、やっぱりいい機会になったって僕は思ってる」
「...うん、私も」
そんな話をしながらゆっくり瞼をおろす。
今夜はいい夢が見られるかもしれない、そんなことを考えているうちに深い眠りに落ちていた。
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