ハーフ&ハーフ

黒蝶

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断暮篇(たちぐらしへん)

もちもちお茶時間

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連絡してから10分も待たないうちに、側に駆け寄ってくる音がする。
「ごめん、お待たせ!」
「そんなに急がなくても大丈夫だったのに」
「早く会いたかったっていうのもあるけど、折角のお気に入りのカフェの場所を突き止められるのも嫌でしょ?
...それに、ちょっと寄り道してたんだ」
何かいいことがあったのか、然り気無くカフェの支払いをするついでに茶葉を買っている。
「何かあるの?」
お金を返そうとしても、木葉はいいからとしか言わない。
何を買ったのか訊いても、帰ってからのお楽しみだとはぐらかされてしまった。
(何があったんだろう...)
笑っているのだから悪いことがあった訳ではなさそうだ。
それなら帰ってからでも遅くないかと手を繋いで歩き出す。
ふたりでいられるのが何よりも心地よかった。
「今日はこれを買ってきたんだ」
「それって、福寿草の大福?」
「知ってるの?」
「詳しくはないけど、美桜さんが美味しいんだって教えてくれた。...多分、お母さんの馴染みの店」
私にはまだまだ分からないことが多い。
幼い頃にいつもご褒美にと和菓子をもらっていたけれど、どこのものかさえ分からなかった。
『あれは福寿草というお店のものだと海穂が言っていた。...場所までは分からないけど』
木葉は袋から茶葉を取り出して、そのままお茶の準備をはじめる。
「何か手伝えることはない?」
「大丈夫だから座って待ってて。...ノワールの包帯を換えてもらえるとありがたいな」
「任せて」
ノワールが大人しくしていてくれたおかげで、あっという間に終わってしまう。
遣ることがなくなって少し退屈に思っていると、目の前にもちもち食感のものが用意された。
「丁度おやつどきでよかった」
「そうだね。...いただきます」
一口囓るとたちまち懐かしい香りが漂う。
少し泣いてしまいそうになりながらもう一口頬張る。
「...美味しい」
「そうだね。実はここの大福、僕の学生時代の思い出の味なんだ」
「そうだったの?...私にとっても忘れられない味だから、お揃いだね」
「やっぱり僕たちってちょっと好みが似てるのかな?」
薄れていた母親の面影を、そっと心に描く。
もし生きていたら、今の状況をどう思っただろうか。
...もしかすると、追いかけられているのは自分のせいだと責めていたかもしれない。
「七海?大丈夫?」
「うん。...やっぱり美味しいなって思ってただけだから」
なんとか笑ってみせたけれど、誤魔化しきれただろうか。
今だけは考えないように蓋をして、心からこの時間を楽しもう。
木葉がいてくれると、やっぱり心が安らぐ気がした。
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