ハーフ&ハーフ

黒蝶

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断暮篇(たちぐらしへん)

笑ってほしくて

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真夜中の道をふたりで歩く。
なんだかいけないことをしているような変な気分になるが、目的はアイスだけだ。
七海は空を見上げ、ぽつりと呟いた。
「今日は星がすごく綺麗だね」
「確かに...全然気づいてなかった」
下ばかり見ていたせいか、輝く星々にさえ気づけていなかった。
こんなに余裕をなくしてはいけないと分かっているのに、どうしても気になってしまう。
七海の白い首筋に、うっすらと残る朱。
これが何を意味しているかくらいすぐ分かる。
「ちょっとごめんね」
「え...」
流石に見られてしまってはまずいからと絆創膏を貼らせてもらった。
七海はいつも痛くないと話すが、僕に気を遣ってくれているだけなのではと不安になる。
だが、それとは裏腹に彼女はただ笑った。
「ありがとう。全然気づいてなかった...」
「...本当に痛くない?」
そう訊いても、いつものように痛くないと話すだけだった。
ただ、貧血気味であることに気づけなかったのはただただ申し訳なく思う。
「着いた...今日は何にしようか」
「僕はいつもの棒アイスにしようかな」
「私は...このカップアイスにする」
レジに向かおうとする七海を止め、コロッケやとりの唐揚げをかごに入れる。
「...貧血なら、せめてこれくらいは食べた方がいいんじゃないかな?」
「それじゃあ木葉も一緒に食べよう」
ふたりで夜食というのも悪くない、そう思いかごにふたり分入れる。
あれもこれもと選んでいるうちに、気づいたときには15分ほど経過していた。
「そろそろ帰ろうか」
「あ...」
財布を出そうとした七海を制止し、呆然としている隙にすっとお札を出す。
「ありがとうございました」
いつも会う店員さんに微笑ましいという表情を向けられながら店を後にした。
ふたりで手を繋いで歩いていると、隣からぽつりと言葉が漏れ出る。
「...ああいうのは、狡いと思う」
「ああでもしないと、いつもお金を払おうとするからだよ」
七海は無自覚なのだろうとは思うが、すぐにバッグから財布を取り出そうとする。
以前なら一瞬で会計が終わっていたと思うが、そうなる前に止める術を身につけた。
ひとり暮らしの癖なのか、それとも別の理由があるのかは分からない。
「たまにはこういう時間もいいね」
「そうだね。...温かいうちに食べよう」
「その間はアイスを冷やしておかないといけないね」
そんな話をしていると、あっという間に家の前に辿り着く。
七海をなんとか笑顔にしたくて、会話が途切れないように話題をふり続けた。
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