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断暮篇(たちぐらしへん)
神様から届いたもの
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「...ノワール、ありがとう」
その烏が運んできたものは、とてつもなく重みがあるものだった。
舞う為にはどうしても必要なものばかりで、道具を手入れしてくれていたことに感謝しかない。
幼い頃から、私は剣舞よりお神楽が好きだった。
それに、刀だと重すぎて上手く足運びができない可能性がある。
今の体では満足に舞うこともできないだろうけれど、それでもいい。
(何もせずにはいられない...)
木葉に見られない時間帯でなければと思うけれど、夜に舞うものが多いので見つからないようにするのは難しい。
どうしようかと迷っていると、扉をたたく音がする。
「...ちょっとだけ待って」
急いで部屋の隅に仕舞った後、何事もなかったかのように部屋に招き入れる。
「どうかしたの?」
「特段何かあった訳じゃないんだけど...ただ話したかったんだ」
木葉が言葉を呑みこんでくれたことは言われずとも理解した。
けれど、今はまだお神楽のことは隠しておきたい。
話せばきっと、何に代えても止められてしまうだろうから。
(いつだって木葉は私のことを考えてくれるから...やっぱり言えない)
木葉が護りたいと思ってくれているのはすごく嬉しい。
ただ、私だって彼の隣にいられるように護りたいと思っている。
...その為に必要なものを美桜さんに調達してもらったのだ。
「どんな手紙が届いたの?」
「えっと...秘伝のレシピ」
「秘伝のレシピ?」
嘘は言えないけれど、本当のことを話すわけにはいかない。
【強力なお守りの作り方】と書かれているその紙には、たしかに秘伝のレシピが載っている。
(ごめんね木葉。...今は話せない)
いつもどおりにコンビニまで歩いて、いつもどおりにアイスを買って食べる。
この程度のことと言われてしまうかもしれないけれど、私にとってはこれで幸せだった。
独り疎まれ育った私には、今の状況がどれだけ幸福なことかよく分かる。
「おやすみ」
「七海」
部屋に戻ろうとした瞬間、手首をいつもより強く掴まれる。
「どうかしたの?」
「...ひとりで抱えて、無茶なことはしないでね」
「木葉もだよ」
扉を閉めた瞬間、頬を一筋の雫が伝う。
泣いていても仕方ないのに、それでもやっぱり怖かった。
御守りも朝陽に合うようなお神楽も、動きがあまり得意なものではない。
何よりも木葉に黙っていることに罪悪感が溢れてしまいそうだ。
この怪我では止められてしまうと分かっていても、話すべきだったのかもしれない。
「...まずは御守りを作らないと」
徹夜覚悟で裁縫道具を握る。
これが正しい選択ではなかったとしても、木葉にばかり負担はかけたくない。
その烏が運んできたものは、とてつもなく重みがあるものだった。
舞う為にはどうしても必要なものばかりで、道具を手入れしてくれていたことに感謝しかない。
幼い頃から、私は剣舞よりお神楽が好きだった。
それに、刀だと重すぎて上手く足運びができない可能性がある。
今の体では満足に舞うこともできないだろうけれど、それでもいい。
(何もせずにはいられない...)
木葉に見られない時間帯でなければと思うけれど、夜に舞うものが多いので見つからないようにするのは難しい。
どうしようかと迷っていると、扉をたたく音がする。
「...ちょっとだけ待って」
急いで部屋の隅に仕舞った後、何事もなかったかのように部屋に招き入れる。
「どうかしたの?」
「特段何かあった訳じゃないんだけど...ただ話したかったんだ」
木葉が言葉を呑みこんでくれたことは言われずとも理解した。
けれど、今はまだお神楽のことは隠しておきたい。
話せばきっと、何に代えても止められてしまうだろうから。
(いつだって木葉は私のことを考えてくれるから...やっぱり言えない)
木葉が護りたいと思ってくれているのはすごく嬉しい。
ただ、私だって彼の隣にいられるように護りたいと思っている。
...その為に必要なものを美桜さんに調達してもらったのだ。
「どんな手紙が届いたの?」
「えっと...秘伝のレシピ」
「秘伝のレシピ?」
嘘は言えないけれど、本当のことを話すわけにはいかない。
【強力なお守りの作り方】と書かれているその紙には、たしかに秘伝のレシピが載っている。
(ごめんね木葉。...今は話せない)
いつもどおりにコンビニまで歩いて、いつもどおりにアイスを買って食べる。
この程度のことと言われてしまうかもしれないけれど、私にとってはこれで幸せだった。
独り疎まれ育った私には、今の状況がどれだけ幸福なことかよく分かる。
「おやすみ」
「七海」
部屋に戻ろうとした瞬間、手首をいつもより強く掴まれる。
「どうかしたの?」
「...ひとりで抱えて、無茶なことはしないでね」
「木葉もだよ」
扉を閉めた瞬間、頬を一筋の雫が伝う。
泣いていても仕方ないのに、それでもやっぱり怖かった。
御守りも朝陽に合うようなお神楽も、動きがあまり得意なものではない。
何よりも木葉に黙っていることに罪悪感が溢れてしまいそうだ。
この怪我では止められてしまうと分かっていても、話すべきだったのかもしれない。
「...まずは御守りを作らないと」
徹夜覚悟で裁縫道具を握る。
これが正しい選択ではなかったとしても、木葉にばかり負担はかけたくない。
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