ハーフ&ハーフ

黒蝶

文字の大きさ
239 / 258
断暮篇(たちぐらしへん)

番外篇『依頼者Kの覚悟』

しおりを挟む
「お願い、ラッシュさん...」
どこか見覚えのある、真剣味を帯びた瞳。
それを前に、俺はどうしても断ることができなかった。
「それで、お嬢さんの追っ手についてだが...」
それから数日以内で調べあがり、木葉には書店での仕事帰りに立ち寄ってもらっている。
なんだか今にも消えてしまいそうで、思わず肩を掴む。
「何かあったのか?」
「あ、えっと...家に七海ひとりだから、心配だなって。ごめん」
「...それだけじゃないだろ」
史上最悪とも言われている、深刻なクレール不足。
俺はある程度血液を呑まない生活に慣れているが、ある日突然吸血が必要になった木葉は少しタイプが違うのだろう。
そのうえ人間とのハーフで、純血種とは他にも違いが出てくるはずだ。
「一旦これ呑んで休息をとるように」
「でも、クレールはすごく貴重なのに、」
「目の前に倒れかけてる奴がいて、救える術だってあるのにそれをしないのは俺のポリシーに反する」
こう言っておかないと、こいつはきっと呑んだりしないだろう。
特殊調合が施されたものだから、酔ってしまうということはないはずだ。
「いいから呑め。...できるだけお嬢さんのことを咬みたくないんだろう?」
「ごめん。いただきます」
愛する相手を傷つけたくない...その気持ちは理解できる。
俺だって、できるだけアイリーンに傷をつけたくなかった。
どうしても抑えられなくなったときには、謝りながら少しずつ吸血したのをよく覚えている。
「それで、こいつらの根城らしき場所だが...」
手に入れた情報の仔細を話していくと、木葉の瞳は一気に不安の色に染まった。
...無理もない。まさかこんな近くにいると誰が予測できただろうか。
「こっちのビジネスホテルからあたっているが、あんまりヒットしない。
もし普段使っている道がここなら、しばらくは避けた方がいいかもな」
「そっちは使ってないよ。でも、意外と数が多そうで吃驚してる。...暴走したりしないかな」
その言葉の意味は何がと訊かずとも理解できた。
木葉はハーフとはいえヴァンパイアだ。
...それも、恐らく純血種よりも強大な力を秘めている可能性がある。
「どうしようもなく不安に思ったら、おまえにとって1番大切なものを思い浮かべろ。
...それがコントロールできる可能性がある方法だ」
「1番、大切なもの...」
「そろそろ時間だ、これを持っていけ」
ひとまとめにした情報を手渡すと、木葉はふたたび真剣な表情になる。
「ありがとう。...絶対に終わらせてみせるから」
その決意が揺らぐことはないだろう。
だが、もう少し周りを頼ってもいいんだ。
「...じゃないと、心配になるだろ」
時計の音だけが虚しく鳴り響く。
いつもは羽織らないマントを身につけ、そのまま1歩踏み出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...