ハーフ&ハーフ

黒蝶

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断暮篇(たちぐらしへん)

再来

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それから数日、また特に変わりない生活を送れている。
「野崎さん、この話いいですね」
「ありがとうございます」
まだ走れるほどではないけれど、怪我もそこそこ回復した。
早くひとりでも出掛けられるようになって、木葉の負担を減らしたい...そう思っていると、カフェの入り口の方で誰かが待っているのが目に入る。
間違いない、木葉だ。
「お疲れ様。ごめんね、早く来すぎちゃったみたい」
「ううん。すごく嬉しい。今、この前書き終わった新作を読んでもらって...」
渡瀬さんはそんな私たちに微笑ましそうな視線をおくってくれる。
「すみません...」
「いえ、もう終わりましたので大丈夫ですよ。それに、僕も早く帰って嫁さんと子どもと出掛ける予定なので」
本当に仲のいいご家族だ。
少しだけ羨ましく思いつつ、颯爽と歩いていく後ろ姿を見つめる。
「今日はこっちの道を通って帰ろうか」
「...?うん」
どうしてと訊く間もなく、そのまま道を進んでいく。
その先に見えてきたのは小さな花畑だった。
「綺麗な紫陽花...」
「さっきたまたま見つけたから、喜んでもらえるといいなって思ったんだけど...どうかな?」
「こんなに綺麗な景色、久しぶりに見たかもしれない。ありがとう」
木葉はただ嬉しそうに微笑んで、杖を持っていない方の手を握ってくれる。
その仕草にどきどきして、心臓が壊れてしまいそうだった。
...そんな甘い時間さえ、今の私たちには楽しむことができないらしい。
(今、何か通ったような...)
ものすごい勢いで紙のようなものが飛んでくる。
「え...」
「こっちだよ」
木葉が思いきり抱きしめてくれたおかげで、なんとか絡まらずにすんだ。
「ありがとう。さっきのって...」
「ごめん。大通りまでこのまま走るね」
「え?」
木葉は早口でそう告げると、私を横抱きにしたまま走りはじめた。
杖も鞄も全部持ってくれていて、私はただ大人しくしていることしかできない。
「...まいた、かな。ごめん、いきなりだったから吃驚したよね」
「木葉は気づいてたの?」
優しくおろしてくれた彼の瞳は、申し訳なさそうに揺れている。
「人の気配が多くなってきてることは分かってたけど、敵意を向けられてることに気づいたのはあの紙みたいなものが飛んできてから...。
ところで、あれって何だったの?」
「多分だけど、美桜さんから教えてもらったことのなかに書いてあったものと同じだと思う。
...捕まえて、強引にでも連れていこうとしてるみたい」
人が多ければ流石に襲ってはこない。
ただ、どこまでも人の心がないものが迫ってきている事実に恐ろしさを感じる。
「少しだけ休んでから帰ろうか」
「...うん」
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