ハーフ&ハーフ

黒蝶

文字の大きさ
251 / 258
断暮篇(たちぐらしへん)

目覚め

しおりを挟む
七海が負った怪我は、予想以上に酷いものだった。
長い夜が明け朝陽が降り注ぐなか、僕の瞼はどんどん重くなっていく。
「私たちは起きているから、あなたは少し休みなさい。ずっと起きているのも辛いでしょ?」
「...ごめん」
「俺たちのことは気にせず休息をとれ。おまえだって怪我をしているんだから、ちゃんと治さないとな」
未だ眠ったままの七海の手を握ったまま、そっと目を閉じる。
本当はずっと起きて側にいたいが、残念なことにそれはどうしても叶わなかった。
「こ、こんにちは...」
「ノワールと、シェリ?」
次に目を開けたとき、すぐ側にいたのは七海の友人と1羽の烏だった。
何故ふたりがここにいるのか分からず、少しだけ頭が混乱する。
そんな様子を見ていたからか、シェリが慌てて説明をはじめた。
「えっと...おふたりは、お仕事で、私は、お休みで、」
えっと、と繰り返す彼女を見ているといつもどおりでなんだかほっとした。
「つまり、母とラッシュさんは後処理に出掛けたんだね?」
朝陽なんて敵だ、昼間の高温で焼けてしまいそうだと話していたふたりが動いてくれたのは僕の為だと分かっている。
こくりと頷くシェリは俯きがちに呟いた。
「...起きない、です」
「そんなにすぐは起きないんじゃないかな」
「でも、手、離さない、から...」
そういえばと自分の手の方に目を向ける。
僕の左手は、弱々しい力であったもののしっかり握り返されていた。
「気づいてなかった...。ありがとうシェリ。ノワールのこと、任せてもいい?」
「分かり、ました」
「今日は仕事もないし、あとは僕が看てるから大丈夫だよ」
シェリは何か言いたげな表情をしていたが、やがて静かに部屋を出る。
彼女に続くノワールの後ろ姿を見送り、ベッドの側に座りなおした。
「七海...」
すぐには起きないんじゃないかなんて口では言っておきながら、実は不安で仕方がない。
もしこのまま目が覚めなかったら、そのままぬくもりが失われていったら...ついそんな悪いことばかりに目がいってしまう。
「七海はやっと自由になったんだよ。もうあの家の人たちが追ってくることは絶対にない」
あの人たちなりの正義があったとしても、七海が望んでいないのなら大人しく引き渡すわけにはいかない。
だからといってこんなふうに怪我をさせるつもりなんかなかったのにと、ただただ後悔しかなかった。
「もう逃げ隠れするような生活をしたり、怖い思いをするようなことも絶対にさせない。
だから...お願い、起きて。ふたりで話がしたいんだ」
どんな言葉でもいいから、どんなに拙くてもいいから声が聞きたい。
突っ伏して零れる涙を隠していると、少し遠くから小さく声が届く。
その声は、間違いなく僕を呼んでいた。


──木葉
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...