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断暮篇(たちぐらしへん)
幸福の夢
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──どんどん周りの声が遠ざかっていく。
流石に疲れてしまったからか、あたりどころが悪かったのか。
ただ、目の前の光景が現実でないことは確かだ。
星々が輝く空の下...私がいるのはどこかの花畑のような場所で、誰かが座っているのが見える。
「ここはいいね。星が幾つも瞬いていて、やっぱり落ち着くの」
後ろ姿だけでは判別できないが、取り敢えず女性だということは理解した。
どこかで聞いたような、懐かしい声。
引き寄せられるように近づこうとすると、女性は強めの口調で制止する。
「こっちに来ては駄目。あなたはそこまでよ」
「どうして...」
「それは秘密。ねえ、あなたの話を少し聞かせてもらえないかな?」
普段ならよく分からない相手に話そうとは思えない。
けれど、何故かそうすることができなかった。
(...ううん、本当は分かってる)
ひと呼吸間を置いて、少しずつ話してみることにした。
「私には護りたい日常があって、そこには大切な人たちがいて...」
「それなら、あなたはそこへ帰らないといけないわね」
「...もう少しだけ、ここにいてもいいですか?」
女性の肩が小刻みに震えているのは、きっと泣いているからだ。
ポケットに入っていたはずのハンカチを探すけれどどうしてか見当たらない。
「あの、えっと...どうして悲しんでいるんですか?」
「ごめんなさい、悲しいわけじゃないの。ただ、ちょっと嬉しかっただけ」
漸くこちらを振り返った女性は、予想どおりの人物だった。
現実では二度と会えない、それでももう1度だけでいいから会いたかった人。
「もう美桜さんが見つかることは絶対にない」
「うん」
「私が狙われることはあるだろうけど、今の私は独りじゃないからきっと頑張れる」
「...うん」
「だから、心配しないでねお母さん」
「本当に大きくなったわね、七海」
抱きついてしまってもいいのだろうか。
沢山怖いことがあったのだと、もっと話をしていたい。
...どこまでなら望んでいいんだろう。
「七海、美桜さんに伝えて。どれだけ離れていても、私はあなたの大切な友だちでいるからって」
「...うん」
瞬間、目の前の母親に抱きしめられる。
沢山の花が咲いているはずなのに、今立っている場所だけはまるで何かの境界線になっているかのようにただ土が広がっているだけだった。
「それじゃあ、そろそろ行くわね」
「...お母さん」
「どうしたの?」
「あのとき、私を護ってくれてありがとう。そのおかげで今があるから、だから...またね」
母は驚いたような表情をしていたけれど、すぐにぱっと明るい笑顔になった。
「いってらっしゃい。気をつけてね」
母の背中は過去のものと変わらず、別の道に吸いこまれていった。
...もし次に会えたら、どんな話をしようか。
流石に疲れてしまったからか、あたりどころが悪かったのか。
ただ、目の前の光景が現実でないことは確かだ。
星々が輝く空の下...私がいるのはどこかの花畑のような場所で、誰かが座っているのが見える。
「ここはいいね。星が幾つも瞬いていて、やっぱり落ち着くの」
後ろ姿だけでは判別できないが、取り敢えず女性だということは理解した。
どこかで聞いたような、懐かしい声。
引き寄せられるように近づこうとすると、女性は強めの口調で制止する。
「こっちに来ては駄目。あなたはそこまでよ」
「どうして...」
「それは秘密。ねえ、あなたの話を少し聞かせてもらえないかな?」
普段ならよく分からない相手に話そうとは思えない。
けれど、何故かそうすることができなかった。
(...ううん、本当は分かってる)
ひと呼吸間を置いて、少しずつ話してみることにした。
「私には護りたい日常があって、そこには大切な人たちがいて...」
「それなら、あなたはそこへ帰らないといけないわね」
「...もう少しだけ、ここにいてもいいですか?」
女性の肩が小刻みに震えているのは、きっと泣いているからだ。
ポケットに入っていたはずのハンカチを探すけれどどうしてか見当たらない。
「あの、えっと...どうして悲しんでいるんですか?」
「ごめんなさい、悲しいわけじゃないの。ただ、ちょっと嬉しかっただけ」
漸くこちらを振り返った女性は、予想どおりの人物だった。
現実では二度と会えない、それでももう1度だけでいいから会いたかった人。
「もう美桜さんが見つかることは絶対にない」
「うん」
「私が狙われることはあるだろうけど、今の私は独りじゃないからきっと頑張れる」
「...うん」
「だから、心配しないでねお母さん」
「本当に大きくなったわね、七海」
抱きついてしまってもいいのだろうか。
沢山怖いことがあったのだと、もっと話をしていたい。
...どこまでなら望んでいいんだろう。
「七海、美桜さんに伝えて。どれだけ離れていても、私はあなたの大切な友だちでいるからって」
「...うん」
瞬間、目の前の母親に抱きしめられる。
沢山の花が咲いているはずなのに、今立っている場所だけはまるで何かの境界線になっているかのようにただ土が広がっているだけだった。
「それじゃあ、そろそろ行くわね」
「...お母さん」
「どうしたの?」
「あのとき、私を護ってくれてありがとう。そのおかげで今があるから、だから...またね」
母は驚いたような表情をしていたけれど、すぐにぱっと明るい笑顔になった。
「いってらっしゃい。気をつけてね」
母の背中は過去のものと変わらず、別の道に吸いこまれていった。
...もし次に会えたら、どんな話をしようか。
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