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強い想い
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「いきなりそんなことを言われても、」
『俺にはもう何もできないんです。あいつはもうすぐ手術で、その日だけは側にいていいって言われてて…。
でも俺、この場所で転んで死んだんです。ほんと運ないですよね…」
相手が視えなければ、自分の言葉ひとつ届けることさえできない。
念の為スクラップ帳を開くと、そこにはかなり物騒な事件の記事が残っていた。
「君の名前は?」
『吉岡です。吉岡蒼汰」
「…嘘を吐くようなら協力はできない」
『どういう意味ですか?」
「君が死んだ理由は転倒じゃない。…喧嘩の仲裁に入った瞬間ナイフで刺されたことによる殺人同然の事件だ」
この場所でおこった事件についての記事を持っているとは思っていなかったらしい。
『な、んで…」
「君は時々、無意識のうちに服の上から脇腹あたりを触っている。転んで死んだというなら、頭を押さえるんじゃないかと思ったんだ。
痛まない場所を気にしたりはしないだろう?」
『…降参です。だけど、そんなの人に言うほどのことじゃないって思ったんです」
「嘘を吐かれるのが嫌なんだ。それなら君が伝えたい想いだって嘘で、俺は今からかわれているのかもしれないって考えてしまう」
そう話すと、どこからか突風が吹き荒れた。
『俺は、俺が…嘘なんて、そんなこと、絶対にない!」
「…ごめん、俺が言い過ぎた。俺にもそういう相手がいたから、その気持ちが嘘じゃないことは分かった」
『俺の方こそすみません。そもそも俺が嘘を吐いたのがいけなかったのに…」
あれだけ怒りを表現できるほど想いが強いなら、相手も知りたいと思っているかもしれない。
「…たとえ届く保証がないとしても、君はやってみたいんだね?」
『お願いします。俺にはもう頼れる人がいないんです…」
「分かった。君のその気持ちに免じて、やれるだけのことはやってみるよ」
『ありがとうございます…!」
相手に想いを届けるが難しいのは、これだけもどかしいことなのか。
それだけ想いあえていたであろう相手からの言葉なら、やっぱりなんとかして届けたい。
『あの、」
「ごめん、まだ名乗ってなかったね。俺は八尋。君はどんな方法で想いを届けようと思ってる?」
『八尋さん、字が綺麗ですよね?さっきのノート、ちらっと見えたんですけど…」
「そうかな?あんまり言われたことないけど…」
『それで、その…代筆してもらえませんか?」
まさかそんな方法になると思っていなかった俺の思考はしばらく停止した。
人の想いをのせた手紙なんて書ける気がしない。
「俺にはそんな高等テクニックはないよ?人づきあいでさえ苦手なのに…」
『いいんです。前々から七葉とは手紙を交換してたし、きっといつもの暗号を入れておけば本当に俺からだって分かってもらえるはずです。
なんとか目に残る形で残しておきたいんです。…お願いします」
これだけ頭を下げられてしまえば、できることはすると言った手前断ることもできない。
病院に入院しているであろう相手に全く知らない…ましてやこんな俺に会ってもらえるとも思えず、覚悟を決めた。
「…分かった、やれるだけやってみるよ。便箋と封筒を用意してくるから、明日またここで会おう」
『ありがとうございます…!」
嬉しそうにしている彼に手をふり、そのまま帰路につく。
瑠璃が肩の上でため息を吐くのを感じて、指で頭を撫でた。
『俺にはもう何もできないんです。あいつはもうすぐ手術で、その日だけは側にいていいって言われてて…。
でも俺、この場所で転んで死んだんです。ほんと運ないですよね…」
相手が視えなければ、自分の言葉ひとつ届けることさえできない。
念の為スクラップ帳を開くと、そこにはかなり物騒な事件の記事が残っていた。
「君の名前は?」
『吉岡です。吉岡蒼汰」
「…嘘を吐くようなら協力はできない」
『どういう意味ですか?」
「君が死んだ理由は転倒じゃない。…喧嘩の仲裁に入った瞬間ナイフで刺されたことによる殺人同然の事件だ」
この場所でおこった事件についての記事を持っているとは思っていなかったらしい。
『な、んで…」
「君は時々、無意識のうちに服の上から脇腹あたりを触っている。転んで死んだというなら、頭を押さえるんじゃないかと思ったんだ。
痛まない場所を気にしたりはしないだろう?」
『…降参です。だけど、そんなの人に言うほどのことじゃないって思ったんです」
「嘘を吐かれるのが嫌なんだ。それなら君が伝えたい想いだって嘘で、俺は今からかわれているのかもしれないって考えてしまう」
そう話すと、どこからか突風が吹き荒れた。
『俺は、俺が…嘘なんて、そんなこと、絶対にない!」
「…ごめん、俺が言い過ぎた。俺にもそういう相手がいたから、その気持ちが嘘じゃないことは分かった」
『俺の方こそすみません。そもそも俺が嘘を吐いたのがいけなかったのに…」
あれだけ怒りを表現できるほど想いが強いなら、相手も知りたいと思っているかもしれない。
「…たとえ届く保証がないとしても、君はやってみたいんだね?」
『お願いします。俺にはもう頼れる人がいないんです…」
「分かった。君のその気持ちに免じて、やれるだけのことはやってみるよ」
『ありがとうございます…!」
相手に想いを届けるが難しいのは、これだけもどかしいことなのか。
それだけ想いあえていたであろう相手からの言葉なら、やっぱりなんとかして届けたい。
『あの、」
「ごめん、まだ名乗ってなかったね。俺は八尋。君はどんな方法で想いを届けようと思ってる?」
『八尋さん、字が綺麗ですよね?さっきのノート、ちらっと見えたんですけど…」
「そうかな?あんまり言われたことないけど…」
『それで、その…代筆してもらえませんか?」
まさかそんな方法になると思っていなかった俺の思考はしばらく停止した。
人の想いをのせた手紙なんて書ける気がしない。
「俺にはそんな高等テクニックはないよ?人づきあいでさえ苦手なのに…」
『いいんです。前々から七葉とは手紙を交換してたし、きっといつもの暗号を入れておけば本当に俺からだって分かってもらえるはずです。
なんとか目に残る形で残しておきたいんです。…お願いします」
これだけ頭を下げられてしまえば、できることはすると言った手前断ることもできない。
病院に入院しているであろう相手に全く知らない…ましてやこんな俺に会ってもらえるとも思えず、覚悟を決めた。
「…分かった、やれるだけやってみるよ。便箋と封筒を用意してくるから、明日またここで会おう」
『ありがとうございます…!」
嬉しそうにしている彼に手をふり、そのまま帰路につく。
瑠璃が肩の上でため息を吐くのを感じて、指で頭を撫でた。
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