カルム

黒蝶

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極秘

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「仕方ない。2度も見られたんだから、もう言い訳のしようもないだろうし話す」
まさか中津先輩だけでなく山岸先輩まで人間じゃないとは思っていなかった。
俺の周りには、意外と人間社会に溶けこめている人間じゃない人たちが多いのかもしれない。
「君が感じたとおり、僕は人間じゃない。本来なら生死を彷徨う人間に選択肢を提示するのが僕の仕事なんだけど、最近はあんなふうに死後こっち側に留まっている人たちの相手をすることもある」
「人手不足ってことですか?」
「それもあるけど、ちょっとした事情があって色々駆り出されてる」
「そうなんですね…」
人には人の事情がある。
分かっていたつもりではあったものの、いざ目の前にすると少し怖い。
本当に聞いてしまってもいいのだろうか。
「別に、僕は君のことをどうこうするつもりはない。ただ、これから話すことは秘密にしてほしいんだ」
「中津先輩は知ってるんですか?」
「うん。ちょっとした腐れ縁、みたいなものだから」
目の前にいる先輩は本当にいつもの先輩で、何も変わらないような気がする。
「さっきの子は、天国にいけたでしょうか」
「そうだといいな、とは思ってる。死神だからといって、全部が分かるわけじゃないから。
…ただ、僕はどんな最期であれ生を全うした人を心から尊敬している。この生きづらい世界で必死にもがいて、最期くらい自分で選んでもバチは当たらないと思うんだ」
いつもの言い方から、この人はどういう人なんだろうと思っていた。
冷静沈着でスキがない、真面目だけど表情が変わることはほとんどない。
その程度にしか感じていなかったのに、彼は何人も死んだ人を見てきた優しい人だと理解した。
「辛く、ならないんですか?」
「僕にはあまり人間らしい感情がないから平気。…いや、平気だったときもあれば全然平常心を保てなかったこともある。他に聞きたいことは?」
「充分です。ありがとうございます」
彼はすごい人で、それでも周りに秘密にしなければならないことで…それが分かっただけで充分だ。
「君は、木葉の正体も知っているの?」
「…言わない約束なので」
「そう。彼は悪い人じゃないから、気が向いたら相手してあげて。それから、僕はその左眼を隠す必要ないと思うけどね」
「え…」
呆然と立ち尽くしていると、いつの間にか星明りの下独りきりになっていた。
左眼は隠しておかないと、またあんな思いをすることになったら困る。
ただ、今日話した優しい死神さんのことは覚えておこう。
…次のバイトでどんな顔をしたらいいか分からないけど。
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