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彼の名前
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『どうやって喋ったんでしょうか?』
「それより、さっき言ってた矢野って誰のことだろう?」
『ええ…もうそっちなんですか?』
「確かに気にならないわけではないけど、多分視えないだけであるんだと思う」
そう、今の彼はクビトリさんだ。
もし噂から開放されれば、今はなかった顔が見えたりするかもしれない。
『彼ははじめから妖ものかもしれません』
「そうなの?」
『死霊ならもう少し雰囲気が違います。相変わらずあなたは判別できないようですね』
「…ごめん」
『別に謝らなくても大丈夫です。その為に私がいるんですから』
片翼を伸ばしながら、瑠璃は歌うように言う。
その言葉が、俺にとってはとてもありがたいものだった。
それからしばらく起きていたものの、残念ながらクビトリさんと会うことはできないまま夜が明ける。
『少し寝てください』
「ごめん、そうさせてもらうよ」
うつらうつらしていると、だんだん目の前が真っ暗になってくる。
あまり眠れる気はしないが、体を休ませておかなければ確実に動けなくなってしまうだろう。
──そう思っていたはずなのに、何故俺の夢はいつもとは違う形で騒がしい。
『矢野は友を作らないのか?』
「そんなのいらない。どうせ裏切られるなら、あなたといられればそれでいい」
『勿体ない気もするが、おまえの意思を尊重することにしよう』
「あなたはいつも私の言葉を聞いてくれるから、それだけで充分なの。ありがとう、幎」
その少女はどんな場面においても独りだったが、彼と一緒にいる時間だけは楽しそうだった。
そんな折、自転車に乗った彼女は飲酒運転の車にはねられる。
『大変だ、すぐに医者を、』
「……そっか、もう、終わり」
『諦めるな、なんとかするから、』
「幎、伏せて」
その言葉が彼に届く前に、よく分からない謎の影が勢いよく武器を振り下ろす。
幎と呼ばれた彼に関しては偶然だったようだが、間違いなくふたりともに攻撃が命中した。
『ああ、早くしなければ…早くしなければ、矢野が…』
「幎……明日は、あの花、咲いてるかな?咲いてたら一緒に見て、それから、えっと…」
『──八尋!』
「瑠璃?」
『不思議な夢でも見ましたか?』
「ああ、ごめん。本当にごめん…」
何故だか涙が止まらない。
彼の首が視えない理由は、ただの妖だったにも関わらず事件に巻きこまれたから。
そして恐らく、矢野と呼ばれた少女も無事ではすまなかったはずだ。
まだぼやける視界を誤魔化しながら、なんとかスクラップ帳を開く。
そうしているうちに、小さく書かれた記事を見つけた。
【事故隠蔽の凶行!少女惨殺か】
「それより、さっき言ってた矢野って誰のことだろう?」
『ええ…もうそっちなんですか?』
「確かに気にならないわけではないけど、多分視えないだけであるんだと思う」
そう、今の彼はクビトリさんだ。
もし噂から開放されれば、今はなかった顔が見えたりするかもしれない。
『彼ははじめから妖ものかもしれません』
「そうなの?」
『死霊ならもう少し雰囲気が違います。相変わらずあなたは判別できないようですね』
「…ごめん」
『別に謝らなくても大丈夫です。その為に私がいるんですから』
片翼を伸ばしながら、瑠璃は歌うように言う。
その言葉が、俺にとってはとてもありがたいものだった。
それからしばらく起きていたものの、残念ながらクビトリさんと会うことはできないまま夜が明ける。
『少し寝てください』
「ごめん、そうさせてもらうよ」
うつらうつらしていると、だんだん目の前が真っ暗になってくる。
あまり眠れる気はしないが、体を休ませておかなければ確実に動けなくなってしまうだろう。
──そう思っていたはずなのに、何故俺の夢はいつもとは違う形で騒がしい。
『矢野は友を作らないのか?』
「そんなのいらない。どうせ裏切られるなら、あなたといられればそれでいい」
『勿体ない気もするが、おまえの意思を尊重することにしよう』
「あなたはいつも私の言葉を聞いてくれるから、それだけで充分なの。ありがとう、幎」
その少女はどんな場面においても独りだったが、彼と一緒にいる時間だけは楽しそうだった。
そんな折、自転車に乗った彼女は飲酒運転の車にはねられる。
『大変だ、すぐに医者を、』
「……そっか、もう、終わり」
『諦めるな、なんとかするから、』
「幎、伏せて」
その言葉が彼に届く前に、よく分からない謎の影が勢いよく武器を振り下ろす。
幎と呼ばれた彼に関しては偶然だったようだが、間違いなくふたりともに攻撃が命中した。
『ああ、早くしなければ…早くしなければ、矢野が…』
「幎……明日は、あの花、咲いてるかな?咲いてたら一緒に見て、それから、えっと…」
『──八尋!』
「瑠璃?」
『不思議な夢でも見ましたか?』
「ああ、ごめん。本当にごめん…」
何故だか涙が止まらない。
彼の首が視えない理由は、ただの妖だったにも関わらず事件に巻きこまれたから。
そして恐らく、矢野と呼ばれた少女も無事ではすまなかったはずだ。
まだぼやける視界を誤魔化しながら、なんとかスクラップ帳を開く。
そうしているうちに、小さく書かれた記事を見つけた。
【事故隠蔽の凶行!少女惨殺か】
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