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桜の下
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「…小鞠、この中で大人しくしててね」
動く人形がいるなんて噂になってしまえば、きっと小鞠によくないことがおきる。
ただ、だからといって部屋に閉じ込めておくつもりはない。
『この時間帯は人間がいないんですね』
「たしかに人通りは多くないかもしれない。大体の人たちは寝ているだろうから…」
それは今の俺にとってありがたいことだった。
人が少なければ、そう簡単に見つかることもないだろう。
「…小鞠、出ておいで」
『ぴょこん』
「そう、そのままぴょこんってしておいてね」
何故わざわざ口で効果音を出したのは分からないものの、小鞠が楽しんでいるなら問題ない。
本当はもう少し遠出してもよかったのだが、いきなり自転車に乗せるのは気が引けた。
「その花は桜っていうんだ。俺は結構好きだけど、小鞠はどうなんだろうな」
『好き』
『今のは疑問符でしょうか?それとも肯定でしょうか…』
「どっちともとれるけど、どう答えるのがいいんだろう」
瑠璃と話をしながらふと顔をあげると、1番大きな桜の木の下に誰かが立っている。
ここで何も言わないのも変な気がするし、挨拶はしておいた方がいいかもしれない。
「おはようございます」
「おはようございます」
「桜花…!」
「すみません、俺はこれで失礼します」
恐らく彼女のことを呼んでいたのだろう。
ここにいたら邪魔になると思い、荷物をまとめて別の場所に移る。
「…ごめん、小鞠。続きはまた今度にしよう」
ここで騒いでいれば迷惑になる気がして、一礼してその場から離れようとする。
誰かに見られていた気もするけど、あまり気にしないようにした。
『…左眼、今日は隠さないんですか?』
「隠してるつもりだったんだけど、髪が乱れて隠しきれなかったみたいだ」
『掴んだ』
「何かいいものかな?」
『これ』
小鞠は満足げに手のひらにのせた花びらを見せてくれる。
「俺は掴もうとしても掴めなかったからな…可愛いと思う」
『可愛い』
「うん。小鞠も可愛いよ」
『口説き文句みたいですね』
「そんなつもりじゃなかったんだけど…」
人が多いのは得意じゃないけど、ふたりと話をしていると嫌なことを考えずにすむ。
「家に着いたら団子でも食べようか。三色団子がいいかな」
『団子』
『楽しみですね』
周りに誰もいないはずなのに、近くで声が聞こえたような気がする。
気のせいだと自分に言い聞かせて歩いたものの、家まで辿り着いた後で瑠璃が苦笑していた。
「…やっぱり何かいたのか」
『すみません。答えていいのか不明だったのでやり過ごしました』
「今度会ったら話してみよう」
今度なんてないと思っていた。
…その機会が近々やってくることを、このときの俺は知らない。
動く人形がいるなんて噂になってしまえば、きっと小鞠によくないことがおきる。
ただ、だからといって部屋に閉じ込めておくつもりはない。
『この時間帯は人間がいないんですね』
「たしかに人通りは多くないかもしれない。大体の人たちは寝ているだろうから…」
それは今の俺にとってありがたいことだった。
人が少なければ、そう簡単に見つかることもないだろう。
「…小鞠、出ておいで」
『ぴょこん』
「そう、そのままぴょこんってしておいてね」
何故わざわざ口で効果音を出したのは分からないものの、小鞠が楽しんでいるなら問題ない。
本当はもう少し遠出してもよかったのだが、いきなり自転車に乗せるのは気が引けた。
「その花は桜っていうんだ。俺は結構好きだけど、小鞠はどうなんだろうな」
『好き』
『今のは疑問符でしょうか?それとも肯定でしょうか…』
「どっちともとれるけど、どう答えるのがいいんだろう」
瑠璃と話をしながらふと顔をあげると、1番大きな桜の木の下に誰かが立っている。
ここで何も言わないのも変な気がするし、挨拶はしておいた方がいいかもしれない。
「おはようございます」
「おはようございます」
「桜花…!」
「すみません、俺はこれで失礼します」
恐らく彼女のことを呼んでいたのだろう。
ここにいたら邪魔になると思い、荷物をまとめて別の場所に移る。
「…ごめん、小鞠。続きはまた今度にしよう」
ここで騒いでいれば迷惑になる気がして、一礼してその場から離れようとする。
誰かに見られていた気もするけど、あまり気にしないようにした。
『…左眼、今日は隠さないんですか?』
「隠してるつもりだったんだけど、髪が乱れて隠しきれなかったみたいだ」
『掴んだ』
「何かいいものかな?」
『これ』
小鞠は満足げに手のひらにのせた花びらを見せてくれる。
「俺は掴もうとしても掴めなかったからな…可愛いと思う」
『可愛い』
「うん。小鞠も可愛いよ」
『口説き文句みたいですね』
「そんなつもりじゃなかったんだけど…」
人が多いのは得意じゃないけど、ふたりと話をしていると嫌なことを考えずにすむ。
「家に着いたら団子でも食べようか。三色団子がいいかな」
『団子』
『楽しみですね』
周りに誰もいないはずなのに、近くで声が聞こえたような気がする。
気のせいだと自分に言い聞かせて歩いたものの、家まで辿り着いた後で瑠璃が苦笑していた。
「…やっぱり何かいたのか」
『すみません。答えていいのか不明だったのでやり過ごしました』
「今度会ったら話してみよう」
今度なんてないと思っていた。
…その機会が近々やってくることを、このときの俺は知らない。
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