未熟な蕾ですが

黒蝶

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「……じゃあ」
「おい、ちょっと待、」
最近、どことなく瞬が素っ気ない気がする。
知らないうちに何かしてしまったのか、寂しさを抱えているからか。
ここ数日、ほとんど会話らしい会話をしていない。
それでも昼食の弁当だけは必ず用意してくれる。
自分で作るからいいと言ったのだが、納得がいかないからと最近ずっと甘えっぱなしだ。
「室星先生、少しよろしいですか?」
「ああ…はい」
副校長とは相変わらず波長が合う。
そういえば、最近瞬の墓参りに行っていなかったな。
「実は、監査部で調べてほしいことがありまして…」
普段は優しいおじいちゃんキャラの紳士だが、この老人はかなり勘が鋭い。
「…お願いできますか?」
「分かりました。俺の方でも見回っておきます」
「ありがとうございます。頼ってばかりで申し訳ない」
「副校長は仕事量が尋常ではないでしょう?だったら俺が適任です」
突然不登校になった生徒の周囲の調査を依頼されたが、どうしたものか。
この生徒は学校に来なくなったのではなく、忽然と姿を消したのだ。
両親が共働きで多忙なためか怪異案件だからか分からないが、行方が分からなくなっていることを誰も感じ取っていない。
「…おまえと少し似ているのかもしれないな」
流山瞬という生徒の家庭環境は複雑だった。
目の前で動いている人物の墓があるという不思議な感覚は相変わらずなくならない。
「…これで大丈夫か」
俺以外が来た形跡が全くない墓前であの日の後悔を忘れないようにしている。
流山瞬の家族はどうしているだろう。
葬儀のこともその後のこともよく覚えている。
この場所は折原たちには教えていない。
俺だけが知っている場所だ。
掃除を終え、花を供えてその場を離れる。
「あ、室星先生!」
「どうした?何かあったのか?」
「ちょっと授業で分からないところがあって…」
「私も聞きたいです!あの先生、質問しても後でって言ったまま忘れちゃうから…」
この時期には珍しく、別の学校からやってきたらしい理科全般担当の教師。
前回の学校でも生徒との間でトラブルがあったと聞いている。
「そっちの空き教室でやるか。時間は大丈夫そうか?」
「はい」
「ありがとうございます!」
それも最近どたばたしている理由のひとつだ。
現状、理科担当の教員が足りていない。
新しくやってきた教師は基本的に生徒たちの話を聞いていないように見える。
それが生徒たちにも伝わっているのか、他の教員への負担も半端ではないものになっているのだ。
「ありがとうございました!」
「また分からないことがあったら言ってくれ」
一瞬視線を感じたような気がしたが、特に気にすることなく教室を後にする。
理科教師としての仕事に監査部の調べ物、噂にまつわる事件…どうしても時間がとれそうにない。
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