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第9章『死者還り』
第64話
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白鷺学園…噂には聞いていたが、校舎がかなり広い。
噂を追うつもりだったが、昼間では生徒の目がある。
先生は職員室だろうし…なんて考えながら歩いていると、いつの間にか足が屋上へと向いていた。
「…いただきます」
穂乃のお弁当の残りを適当につめたものだが、ここなら誰の目も気にせず食べられそうだ。
本を読みながら休んでいると、誰かの声がした。
《う、うう…》
雰囲気で分かる。見つかってはいけないタイプだ。
相手にしないよう気をつけていたが、声がもうひとつ聞こえた。
「あの、大丈──」
《美味ソウ!》
「……!」
間違いない。先程声をかけた生徒だ。
「あなたは…」
「話は後だ。下がっていろ」
《キシシ!》
できるだけ知られたくなかったがやむを得ない。
「…私の方が美味しそうだろ?かかってこい」
こちらに向かって飛びつきそうになったところを、隠し持っていた札で拘束する。
「──燃えろ」
《ギャア!》
相手は悲鳴をあげ、散り散りに消えていく。
「怪我はないか?」
「は、はい…」
嘘だ。腕を庇っている。
「少し待っていてくれ」
「わ、分かりました」
持っていたインカムで先生に連絡すると、すぐ来てくれた。
少女の反応は、傷を見られているのが恥ずかしいのか、それとも──
「心配しなくても先生は怒ってないよ」
「あ…すみません」
「誤解されやすいけど、いい先生なんだ」
素の部分を知っている生徒は烏合学園でも少ない。
他校ならなおのこと知られていないだろう。
「ありがとうございました」
そこで少し話して判明したのが、どうやらこの制度が車掌の知り合いらしいということだ。
一旦先生とその場を離れたものの、このあたりで怪異らしきものを視たのは初めてだったかもしれない。
「それにしても、まさか車掌の知り合いだったとは…」
「そうだな。意外だった」
「友だちなのか、特別な関係なのか…」
「…あいつはできるだけ人間に深入りしないようにしていたが、あの生徒のことは放っておけなかったんだろう」
「その気持ちは分かる気がする」
あの生徒の目には危うさが滲み出ていた。
まるで、今すぐその場から消えてしまいそうな…。
「とにかく、夜まで大人しくしておいた方がいいだろうな」
「そうだな」
ふと中庭に目をやると、巨大な扉が鎮座している。
「先生、あの扉って…」
「生死の境目が曖昧になるって言っただろ?…暴走や死者還りを助けるためのものだ。
あの扉を護るのも黄泉行列車の管轄になっている」
「色々大変なんだな」
先生は苦笑しながら答えた。
「この町は俺たちが暮らしている場所と比べて、圧倒的に噂が広まりづらい。…死者と対話するには影響を受けにくくて丁度いいんだろう」
噂を追うつもりだったが、昼間では生徒の目がある。
先生は職員室だろうし…なんて考えながら歩いていると、いつの間にか足が屋上へと向いていた。
「…いただきます」
穂乃のお弁当の残りを適当につめたものだが、ここなら誰の目も気にせず食べられそうだ。
本を読みながら休んでいると、誰かの声がした。
《う、うう…》
雰囲気で分かる。見つかってはいけないタイプだ。
相手にしないよう気をつけていたが、声がもうひとつ聞こえた。
「あの、大丈──」
《美味ソウ!》
「……!」
間違いない。先程声をかけた生徒だ。
「あなたは…」
「話は後だ。下がっていろ」
《キシシ!》
できるだけ知られたくなかったがやむを得ない。
「…私の方が美味しそうだろ?かかってこい」
こちらに向かって飛びつきそうになったところを、隠し持っていた札で拘束する。
「──燃えろ」
《ギャア!》
相手は悲鳴をあげ、散り散りに消えていく。
「怪我はないか?」
「は、はい…」
嘘だ。腕を庇っている。
「少し待っていてくれ」
「わ、分かりました」
持っていたインカムで先生に連絡すると、すぐ来てくれた。
少女の反応は、傷を見られているのが恥ずかしいのか、それとも──
「心配しなくても先生は怒ってないよ」
「あ…すみません」
「誤解されやすいけど、いい先生なんだ」
素の部分を知っている生徒は烏合学園でも少ない。
他校ならなおのこと知られていないだろう。
「ありがとうございました」
そこで少し話して判明したのが、どうやらこの制度が車掌の知り合いらしいということだ。
一旦先生とその場を離れたものの、このあたりで怪異らしきものを視たのは初めてだったかもしれない。
「それにしても、まさか車掌の知り合いだったとは…」
「そうだな。意外だった」
「友だちなのか、特別な関係なのか…」
「…あいつはできるだけ人間に深入りしないようにしていたが、あの生徒のことは放っておけなかったんだろう」
「その気持ちは分かる気がする」
あの生徒の目には危うさが滲み出ていた。
まるで、今すぐその場から消えてしまいそうな…。
「とにかく、夜まで大人しくしておいた方がいいだろうな」
「そうだな」
ふと中庭に目をやると、巨大な扉が鎮座している。
「先生、あの扉って…」
「生死の境目が曖昧になるって言っただろ?…暴走や死者還りを助けるためのものだ。
あの扉を護るのも黄泉行列車の管轄になっている」
「色々大変なんだな」
先生は苦笑しながら答えた。
「この町は俺たちが暮らしている場所と比べて、圧倒的に噂が広まりづらい。…死者と対話するには影響を受けにくくて丁度いいんだろう」
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