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第2幕
危機一髪★
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いつもどおり大学を出て、カフェに向かう。
なんとなくだけれど嫌な予感がして、いつもより自転車を早くこいだ。
(...!あいつらは)
以前コンビニで見かけた、千夜を追いこんだ奴等だ。
「...うちの従業員に何か用ですか?」
気づけば俺は、千夜を背中に隠していた。
店長が千夜の手をひき、シェフのところへ連れていくのが目にはいった。
「私、あの子の友だちで、」
「...彼女は困っている様に見えましたが」
本当は泣いていたはずだ。
それを、こいつらは...本当に何も分かっていないのか。
(無自覚な悪意ほどたちが悪いものなんかない)
「ご注文、俺が承ります」
「いいの?じゃあこれ!舞花は?」
「私もそれにする!」
「...かしこまりました」
かっこいいだのイケメンだの、どうでもいいことでずっと騒いでいる。
「ねえ。千夜、大丈夫かな?」
「舞花、あんな根暗なの放っておけばいいじゃん!ていうか本当にさっきの店員さんイケメンだったよね!」
「たしかにそうだね」
舞花と呼ばれた女が呑気に千夜の名前を出したところに苛ついていると、肩をぽんとたたかれた。
「シェフ...千夜はどこにいますか?」
「佐藤さんはスタッフルームだ」
「ありがとうございます」
「あの客は俺とあいつでなんとかする。...御舟」
「...すみません」
シェフは店長に目で合図を出して、俺を真っ直ぐ見た。
「謝る必要はない。...こういうときに一人は辛いだろうから、ちゃんと側についててやれ」
「はい、ありがとうございます」
スタッフルームの扉を開けると、そこには小刻みに震えている千夜が座りこんでいた。
「千夜...!」
「ま、真昼、私、私ね...っ」
今にも泣き出しそうな表情を見て、反射的に抱きしめていた。
「大丈夫。もう大丈夫だから」
「だけど、お店の人たちに迷惑かけて...ここにいられなくなったらどうしよう」
そうか、それが不安だったのか。
普段なら自分より他人優先の千夜がぽろぽろと涙を零すくらいなのだから、今日の出来事がそれだけショックだったということだろう。
(くそ、油断した)
このカフェで奴等が大きな問題をおこさない限り、出禁にすることはできない。
...この場所は、誰でもきていい場所なのだから。
「私、ここにいてもいいのかな」
「少なくとも、俺はいてほしいって思うよ」
「だけど、」
そのとき、背後から扉が開く音がした。
「御舟、佐藤。...終業後に少し話そう」
震えたままの千夜の手をそっと繋いで、力強く頷いた。
なんとなくだけれど嫌な予感がして、いつもより自転車を早くこいだ。
(...!あいつらは)
以前コンビニで見かけた、千夜を追いこんだ奴等だ。
「...うちの従業員に何か用ですか?」
気づけば俺は、千夜を背中に隠していた。
店長が千夜の手をひき、シェフのところへ連れていくのが目にはいった。
「私、あの子の友だちで、」
「...彼女は困っている様に見えましたが」
本当は泣いていたはずだ。
それを、こいつらは...本当に何も分かっていないのか。
(無自覚な悪意ほどたちが悪いものなんかない)
「ご注文、俺が承ります」
「いいの?じゃあこれ!舞花は?」
「私もそれにする!」
「...かしこまりました」
かっこいいだのイケメンだの、どうでもいいことでずっと騒いでいる。
「ねえ。千夜、大丈夫かな?」
「舞花、あんな根暗なの放っておけばいいじゃん!ていうか本当にさっきの店員さんイケメンだったよね!」
「たしかにそうだね」
舞花と呼ばれた女が呑気に千夜の名前を出したところに苛ついていると、肩をぽんとたたかれた。
「シェフ...千夜はどこにいますか?」
「佐藤さんはスタッフルームだ」
「ありがとうございます」
「あの客は俺とあいつでなんとかする。...御舟」
「...すみません」
シェフは店長に目で合図を出して、俺を真っ直ぐ見た。
「謝る必要はない。...こういうときに一人は辛いだろうから、ちゃんと側についててやれ」
「はい、ありがとうございます」
スタッフルームの扉を開けると、そこには小刻みに震えている千夜が座りこんでいた。
「千夜...!」
「ま、真昼、私、私ね...っ」
今にも泣き出しそうな表情を見て、反射的に抱きしめていた。
「大丈夫。もう大丈夫だから」
「だけど、お店の人たちに迷惑かけて...ここにいられなくなったらどうしよう」
そうか、それが不安だったのか。
普段なら自分より他人優先の千夜がぽろぽろと涙を零すくらいなのだから、今日の出来事がそれだけショックだったということだろう。
(くそ、油断した)
このカフェで奴等が大きな問題をおこさない限り、出禁にすることはできない。
...この場所は、誰でもきていい場所なのだから。
「私、ここにいてもいいのかな」
「少なくとも、俺はいてほしいって思うよ」
「だけど、」
そのとき、背後から扉が開く音がした。
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震えたままの千夜の手をそっと繋いで、力強く頷いた。
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