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第2幕
優しい声☆*
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「...どういうこと?」
「気を悪くしたならごめん。けど、俺の血がほしいのかなって思ったんだよ」
どうしていつも真昼には全てが分かってしまうのだろうか。
(もしかして、私...隠すのが下手なのかな)
今までこんなふうに人に気づかれたことなんてなかった。
そもそも、人の血液がほしいなんて思ったこともなかった。
「...いいの?」
「当たり前だろ」
真昼は躊躇することなく、指先を私の口に近づけてきた。
「痛がったりするかもしれないけど...ごめんな」
「私の方こそ、ごめんね」
真昼はただ笑っていた。
私には、こんなふうにいつも全てを受け入れられるような心はない。
もしかすると、心そのものに余裕がないのかもしれない。
「真昼...ごめん。ごめんなさい」
「っ...!」
やっぱり真昼は少し痛がっていたけれど、私はそれどころではなくなっていた。
(何、これ...甘い)
自分の血は不味いわけではないけれど、真昼の血のように甘みが強いわけでもない。
「...っ、は、」
口に含んでいた指を吸うのをやめて呼吸を整えていると、真昼に反対の手で撫でられた。
「これで足りたか?」
「...ごめんなさい」
「なんで謝るんだよ。...悪いことをしたわけじゃないだろ」
やっぱり真昼は眩しいほどに優しくて、私は思わず俯いてしまった。
(申し訳なさすぎるよ...)
どうしていいのかも分からずずっと俯いていると、真昼はまた優しい声で私に語りかけてきた。
「大丈夫。...俺はそんなに痛くなかったし、おまえが加減してくれてたから」
「真昼はすごいね。...なんでも作れちゃいそう」
真昼は私を抱きしめて、そのまま唇を重ねる。
「すごいのはおまえの方だろ。...外では欲求抑えて、俺相手でも傷つけたくないって我慢して...」
「どうして分かったの?」
「分かるよ。...おまえのことだから」
私の視界は徐々に歪みはじめる。
「真昼...ありがとう」
「何もお礼を言われるようなことはしてない」
堰を切ったように涙がぽたぽたと零れ落ちる。
真昼の優しさに、ただ溺れていたかった。
「千夜」
「...?」
しばらくして声をかけられる。
「俺の血が必要になったらいつでも言え。...無理するなよ」
「ごめんなさい...。だけど、ありがとう」
「ほんと、その笑顔は反則だろ」
真昼も笑顔を見せてくれて、そのお陰で決意が固まる。
(やっぱり、真昼を傷つけたくない)
なんとかコントロールして、できるだけ真昼に迷惑をかけないようにしよう。
そう心に誓ったのだけれど、数日後再び真昼の血を口にする機会がきてしまうとはこのときは思っていなかった。
「気を悪くしたならごめん。けど、俺の血がほしいのかなって思ったんだよ」
どうしていつも真昼には全てが分かってしまうのだろうか。
(もしかして、私...隠すのが下手なのかな)
今までこんなふうに人に気づかれたことなんてなかった。
そもそも、人の血液がほしいなんて思ったこともなかった。
「...いいの?」
「当たり前だろ」
真昼は躊躇することなく、指先を私の口に近づけてきた。
「痛がったりするかもしれないけど...ごめんな」
「私の方こそ、ごめんね」
真昼はただ笑っていた。
私には、こんなふうにいつも全てを受け入れられるような心はない。
もしかすると、心そのものに余裕がないのかもしれない。
「真昼...ごめん。ごめんなさい」
「っ...!」
やっぱり真昼は少し痛がっていたけれど、私はそれどころではなくなっていた。
(何、これ...甘い)
自分の血は不味いわけではないけれど、真昼の血のように甘みが強いわけでもない。
「...っ、は、」
口に含んでいた指を吸うのをやめて呼吸を整えていると、真昼に反対の手で撫でられた。
「これで足りたか?」
「...ごめんなさい」
「なんで謝るんだよ。...悪いことをしたわけじゃないだろ」
やっぱり真昼は眩しいほどに優しくて、私は思わず俯いてしまった。
(申し訳なさすぎるよ...)
どうしていいのかも分からずずっと俯いていると、真昼はまた優しい声で私に語りかけてきた。
「大丈夫。...俺はそんなに痛くなかったし、おまえが加減してくれてたから」
「真昼はすごいね。...なんでも作れちゃいそう」
真昼は私を抱きしめて、そのまま唇を重ねる。
「すごいのはおまえの方だろ。...外では欲求抑えて、俺相手でも傷つけたくないって我慢して...」
「どうして分かったの?」
「分かるよ。...おまえのことだから」
私の視界は徐々に歪みはじめる。
「真昼...ありがとう」
「何もお礼を言われるようなことはしてない」
堰を切ったように涙がぽたぽたと零れ落ちる。
真昼の優しさに、ただ溺れていたかった。
「千夜」
「...?」
しばらくして声をかけられる。
「俺の血が必要になったらいつでも言え。...無理するなよ」
「ごめんなさい...。だけど、ありがとう」
「ほんと、その笑顔は反則だろ」
真昼も笑顔を見せてくれて、そのお陰で決意が固まる。
(やっぱり、真昼を傷つけたくない)
なんとかコントロールして、できるだけ真昼に迷惑をかけないようにしよう。
そう心に誓ったのだけれど、数日後再び真昼の血を口にする機会がきてしまうとはこのときは思っていなかった。
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