峽(はざま)

黒蝶

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第3幕

くすぐったい心☆

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一人で寝るのが寂しいと思っていたのを見抜かれて、真昼の布団のなかにいる。
「...」
「...」
けれど、二人とも黙りこんでしまって少しずつ心が凍っていくような感じがする。
(どうしよう、やっぱり迷惑だったんじゃ...)
「...手、繋いどくか?」
「うん、繋ぎたい」
ぎこちなく絡められた指に、私もどきどきしてしまう。
「千夜」
「どうかしたの?」
「ちょっとだけ...ごめん」
「...んっ」
口づけられて、何も考えられなくなる。
ここにくる前に沢山呑んでおいたからなのか、 珍しく喉の渇きを感じない。
(真昼、温かくて安心する...)
心もどんどん温かくなってきて、真昼の指に指を絡めかえす。
真昼はびくっと体を震わせたけれど、そのまま更に強く握りかえしてくれる。
「真昼」
「ん?どうした?」
「...好き」
「ばっ、いきなりそんなこと言うな!...照れるだろ」
ふりかえると、真昼の頬は茜色に染まっていた。
私はそんな真昼に、小さくお願いを告げた。
「真昼...」
「どうした?」
「好きって、言って...?」
「...断る」
「そっか...」
しゅんとしてしまったけれど、好きと言うのは少し恥ずかしいと思ったのかもしれないと考えた。
「顔あげろ」
「どうして?」
「おまえ、本当に顔に出やすいな。...言葉よりこっちの方が伝わるだろ」
優しく口づけられて、鼓動が高鳴る。
「恥ずかしい...」
「好きだ。...言葉だけじゃ足りないくらいに」
「...!」
嬉しい気持ちと恥ずかしいという思いがごちゃ混ぜになって、どう反応していいのか分からなくなる。
「ほら、もう寝るぞ」
「う、うん...」
「...抱きしめていたら寝やすい?」
首を小さく縦にふると、絡めていた指が離れて体の向きを変えられて...そっと腕が背中からのびてきた。
やっぱり恥ずかしいと思ったけれど、その腕をそっと掴んだ。
「...おやすみ」
「ああ」
私はそのまま目を閉じる。
いい夢が見られるといいなと小さく呟かれた言葉を聞きながら、そのまま夢のなかに落ちていた。
「ん...?」
後ろを見てみると、目を閉じたままの真昼がいる。
寝顔までかっこよくて、私はどうすればいいのか分からなかった。
起こすのは悪くて、真昼と向かい合わせになったままもう一度目を閉じる。
「...ありがとう。大好き」
きゅっと真昼に抱きついて、今日のことを考える。
お昼からの勤務を真昼と一緒にできる。
大学の授業はお休みだと言っていたのを思い出して、更に嬉しくなる。
(もう少し、一緒にいられるかな...?)
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