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第3幕
気遣い上手☆
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真昼が急いできてくれたのは、見ていれば分かる。
「御舟、佐藤。...今日のシフトのことで話があるからちょっときて」
「...分かりました」
「着替えたらすぐ行きます」
店長さんは言わないでいてくれたけれど、きっと私が遅刻したせいだ。
真昼も巻きこんでしまって、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
(ちゃんと真昼に謝っておかないと)
「二人には今日、遅番の仕事を任せる」
「分かりました」
「あと、佐藤」
「はい」
「遅れた理由があるならちゃんと言ってくれればよかったのに」
どういうことか分からずに固まっていると、真昼は店長さんの方から私の方に視線を向ける。
「店長から聞いた。...おまえが遅刻したって」
「それは、」
「わざわざ大学まで俺の忘れ物を届けてくれたからだろ?」
そう言われると、ただ黙って頷くことしかできない。
「そういうのは言ってくれていい」
「...でも、その後道に迷ったのも原因なんです。それは、言い訳にしかならないから...ごめんなさい」
頭をさげると、店長さんに頭をあげるよう言われる。
そっとあげると、二人はふっと息を吐いた。
「佐藤。それは言い訳じゃない、事実だ。言い訳っていうのは、『連絡するのを忘れてて』とか、『間に合ってると思いました』とか、まるで自分は悪くないような言い方をすることだと私は思ってる」
「でも、」
「おまえは俺に届けてくれた。そのせいでいつもと違う道を使うことになり迷った。...連絡できないほど焦ってたのは店長も想像がつく」
二人とも、私を怒らない。
怒っているとすれば、どうして話さなかったのかということに対してだ。
「ごめんなさい」
「まあ、言い訳がましく言わずに真っ先に反省してたところはすごいと思うけどね。それじゃあ二人とも、遅番よろしく」
「はい」
「...頑張ります」
ぱたんと扉が閉まって、真昼とふたりきりになる。
「悪い、そんなことになっていたとは知らず...。店長には俺から説明しておいたから」
「ありがとう」
周りの人たちを気遣うところ、そういうところがかっこいいと思う。
真昼は少し、店長さんに似ているところがあるのかもしれない。
「遅番、頑張ろうな」
「...うん」
文句一つ言わない、優しい、親切、気配り上手...真昼のいいところは一言では表現できない。
「千夜」
「どうしたの?」
「...何かあったら言え」
「うん。真昼もね」
二人で夕方の仕事に集中する。
...遅番というのは何をするのか、少し楽しみに思いながら。
「御舟、佐藤。...今日のシフトのことで話があるからちょっときて」
「...分かりました」
「着替えたらすぐ行きます」
店長さんは言わないでいてくれたけれど、きっと私が遅刻したせいだ。
真昼も巻きこんでしまって、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
(ちゃんと真昼に謝っておかないと)
「二人には今日、遅番の仕事を任せる」
「分かりました」
「あと、佐藤」
「はい」
「遅れた理由があるならちゃんと言ってくれればよかったのに」
どういうことか分からずに固まっていると、真昼は店長さんの方から私の方に視線を向ける。
「店長から聞いた。...おまえが遅刻したって」
「それは、」
「わざわざ大学まで俺の忘れ物を届けてくれたからだろ?」
そう言われると、ただ黙って頷くことしかできない。
「そういうのは言ってくれていい」
「...でも、その後道に迷ったのも原因なんです。それは、言い訳にしかならないから...ごめんなさい」
頭をさげると、店長さんに頭をあげるよう言われる。
そっとあげると、二人はふっと息を吐いた。
「佐藤。それは言い訳じゃない、事実だ。言い訳っていうのは、『連絡するのを忘れてて』とか、『間に合ってると思いました』とか、まるで自分は悪くないような言い方をすることだと私は思ってる」
「でも、」
「おまえは俺に届けてくれた。そのせいでいつもと違う道を使うことになり迷った。...連絡できないほど焦ってたのは店長も想像がつく」
二人とも、私を怒らない。
怒っているとすれば、どうして話さなかったのかということに対してだ。
「ごめんなさい」
「まあ、言い訳がましく言わずに真っ先に反省してたところはすごいと思うけどね。それじゃあ二人とも、遅番よろしく」
「はい」
「...頑張ります」
ぱたんと扉が閉まって、真昼とふたりきりになる。
「悪い、そんなことになっていたとは知らず...。店長には俺から説明しておいたから」
「ありがとう」
周りの人たちを気遣うところ、そういうところがかっこいいと思う。
真昼は少し、店長さんに似ているところがあるのかもしれない。
「遅番、頑張ろうな」
「...うん」
文句一つ言わない、優しい、親切、気配り上手...真昼のいいところは一言では表現できない。
「千夜」
「どうしたの?」
「...何かあったら言え」
「うん。真昼もね」
二人で夕方の仕事に集中する。
...遅番というのは何をするのか、少し楽しみに思いながら。
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