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第3幕
耐久☆
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「真昼、どうして...」
どうして気づかれてしまったのだろう。
(隠しとおせているつもりだったのに...)
「見ていれば分かる。それより大丈夫なのか?」
「我慢できるから、気にしないで」
「...噛みたいことは否定しないんだな」
真昼は苦笑しながら私の頭をそっと撫でた。
「一応言っておくけど...千夜、おまえは独りじゃない」
「...うん」
「困ったら俺に言え。...無理なら他の奴等でもいいから」
「真昼に、すぐ言う」
「それじゃあ...約束」
そっと差し出された小指に、少しだけ震える小指を絡める。
「ゆびきりって、なんだか久しぶりにしたような気もするな」
「そう、かな...?」
「まあ、おまえとは何度かしてるけど。...取り敢えず、これから仕事に戻れそうか?」
私は覚悟を決めて、首を縦にふる。
「そういえば、染さんは...」
「染谷なら少し前に帰っていった。...何かあったら連絡してくれって言ってたけど、何の話してたんだ?」
「内緒」
「分かった、ならもう聞かない。...そろそろ行くか」
「うん」
それから二人で部屋を出て、周りにいた店長さんたちに声をかけて...残りの三時間、なんとか乗り切ろうと思っていた。
けれど、やっぱりそこまで甘くはなかった。
(駄目...もう少しだから、ちゃんと、我慢しなきゃ)
お仕事を頑張るって決めた。
カフェでは吸血したくないって思っている。
けれど...
「千夜、ちょっとこっちこい」
けれどやっぱり、真昼には分かってしまうのだ。
「おまえが嫌だと思ってるのは分かってる。けど、このままじゃ本当に倒れるぞ」
「あと...どれくらい?」
「十五分ってところだな」
「なら、頑張らせて...お願い」
真昼は息を吐きながら了承してくれた。
どうしても無理そうならすぐ言えと囁かれて、耳が少しだけくすぐったかった。
「佐藤さん、大丈夫そうならお会計をお願いできませんか...?」
「分かりました、やります」
そこからは時間が早く進んだような気がする。
途中、何度か危ないところはあったけれど、その度に誰かが側にいてくれたおかげでなんとか理性を保つことができた。
(あとは片づけを頑張ったら、家に帰って呑むことができる...)
「佐藤、お疲れ」
「お疲れ様です...」
「今日はもうあがって。...御舟もあがらせるから」
「え、でも、まだ...」
「片づけなら私たちでできちゃいます。任せてください」
「ごめんなさい...ありがとう、ございます」
なんとか無事に耐えきることができた。
できたけれど、それからどうやって家に辿り着いたのか覚えていない。
ーー次に目を開いたときには、自分の腕に巻かれた包帯と、自身の腕の手当てをしている真昼の姿が見えた。
どうして気づかれてしまったのだろう。
(隠しとおせているつもりだったのに...)
「見ていれば分かる。それより大丈夫なのか?」
「我慢できるから、気にしないで」
「...噛みたいことは否定しないんだな」
真昼は苦笑しながら私の頭をそっと撫でた。
「一応言っておくけど...千夜、おまえは独りじゃない」
「...うん」
「困ったら俺に言え。...無理なら他の奴等でもいいから」
「真昼に、すぐ言う」
「それじゃあ...約束」
そっと差し出された小指に、少しだけ震える小指を絡める。
「ゆびきりって、なんだか久しぶりにしたような気もするな」
「そう、かな...?」
「まあ、おまえとは何度かしてるけど。...取り敢えず、これから仕事に戻れそうか?」
私は覚悟を決めて、首を縦にふる。
「そういえば、染さんは...」
「染谷なら少し前に帰っていった。...何かあったら連絡してくれって言ってたけど、何の話してたんだ?」
「内緒」
「分かった、ならもう聞かない。...そろそろ行くか」
「うん」
それから二人で部屋を出て、周りにいた店長さんたちに声をかけて...残りの三時間、なんとか乗り切ろうと思っていた。
けれど、やっぱりそこまで甘くはなかった。
(駄目...もう少しだから、ちゃんと、我慢しなきゃ)
お仕事を頑張るって決めた。
カフェでは吸血したくないって思っている。
けれど...
「千夜、ちょっとこっちこい」
けれどやっぱり、真昼には分かってしまうのだ。
「おまえが嫌だと思ってるのは分かってる。けど、このままじゃ本当に倒れるぞ」
「あと...どれくらい?」
「十五分ってところだな」
「なら、頑張らせて...お願い」
真昼は息を吐きながら了承してくれた。
どうしても無理そうならすぐ言えと囁かれて、耳が少しだけくすぐったかった。
「佐藤さん、大丈夫そうならお会計をお願いできませんか...?」
「分かりました、やります」
そこからは時間が早く進んだような気がする。
途中、何度か危ないところはあったけれど、その度に誰かが側にいてくれたおかげでなんとか理性を保つことができた。
(あとは片づけを頑張ったら、家に帰って呑むことができる...)
「佐藤、お疲れ」
「お疲れ様です...」
「今日はもうあがって。...御舟もあがらせるから」
「え、でも、まだ...」
「片づけなら私たちでできちゃいます。任せてください」
「ごめんなさい...ありがとう、ございます」
なんとか無事に耐えきることができた。
できたけれど、それからどうやって家に辿り着いたのか覚えていない。
ーー次に目を開いたときには、自分の腕に巻かれた包帯と、自身の腕の手当てをしている真昼の姿が見えた。
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