峽(はざま)

黒蝶

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終幕

アディショナルタイム☆

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「...千夜」
「何の用事?」
「あのね、もう一度話がしたくて...」
本当は逃げたい。
だけど、舞花は今一人で立っている。
...だから私も一人で立ち向かう。
真昼が待ってると言ってくれたのは、きっとそれもあるからだから。
(ちゃんと話さないと)
「舞花、私はあなたのことを友だちだとはもう思っていない。...この前のことでもっとそう思ったよ」
舞花は焦っている。
...いつもならここで、誰かが庇ってくれるから。
店長たちも、染さんも...真昼も。
私をがむしゃらに庇ったことなんてない。
「舞花は周りの人たちにいつも護られてきたように私には見える。...価値観が違いすぎて、私とは合わないと思う」
「この前は言い過ぎたから、謝るから...!」
「私は私を大切に想ってくれる人の側にいたい。...だから、もう側にはいたくない。ごめんなさい」
頭をさげて背を向けようとすると、腕を強い力でひかれる。
「嫌だ!千夜は私のものでしょ?」
...もう、終わってる。
今までで一番冷めた視線を向けて、ぱっと振り払った。
「...!千夜、」
「私はもう、あなたと一緒にいたくない。...物としか見られていない生活なんて嫌。私にとって、それは友だちじゃないから」
「それじゃあ、もう会ってくれないの?」
「...ごめんなさい」
舞花はやっと納得してくれたようで、引き留めようとした手をおろした。
舞花に不幸になってほしいとは思わない。
舞花にも舞花の価値観があるはずだから。
(だけど、無理矢理一緒にいてもそれは苦しいだけだから)
「舞花にとって、本当に大切な人を見つけて。...今度はちゃんと幸せになって」
後ろを振り返らずに、そのままカフェへ向かう。
...中では真昼が待っていてくれた。
「お疲れ。ちゃんと話せたか?」
「...うん」
真昼はそっかと一言だけ言って、何も聞かずに黙っていてくれた。
これで前を向いて進めればいい。
...舞花も、私も。
「何か飲むか?」
「勝手に使っていいの?」
「店長から許可もらった。...夕飯作るか」
「それも、許可もらったの?」
真昼は眩しい笑顔で私を見つめた。
「もらってないわけないだろ?さて、何がいいかな...」
だんだん、堪えていたものが溢れ出す。
そうしてどんどん、止まらなくなってくる。
「頑張ったな」
ただ頭を撫でてくれる。
その行動だけで、真昼の優しさを感じた。
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