峽(はざま)

黒蝶

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終幕

エピローグ『峽』☆

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「真昼、お弁当」
「ありがとう。それじゃ、いってきます」
そうして見送った後、私は少しだけ掃除する。
(...これで綺麗になったかな)
それから出掛ける準備をして、すぐに外へ出る。
「おはようございます」
「佐藤、眠そうだけど大丈夫?」
「...はい」
本当は眠い。眠くて仕方ない。
けれど、そうも言ってはいられない。
「が、頑張ります...」
動きまわっていると、色んな人の笑顔が目にはいる。
「それじゃあみんな、お疲れ様!」
店長さんの号令で、みんなが帰っていく。
そんななか、お店に入ってきた人が一人。
「染さん」
「佐藤ちゃん、お疲れ様。これ、御舟に届けておいてもらってもいい?」
「分かりました」
「今度一緒にお茶でもしようぜ」
「...はい」
そうこうしているうちに、厨房から愛しい人が出てくる。
「お疲れ様」
「お疲れ。今染谷の声がしたような気がしたんだけど...」
「これ、渡しておいてって言われた」
「忘れてたレポートか。俺たちも帰るか」
「...うん」
楽しく話していた帰り道、突然喉の渇きに襲われる。
「...っ」
我慢するつもりだったけれど、ふらふらとその場に崩れおちてしまいそうになる。
「向こうで少し休憩するか」
「ごめんなさい...」
私は相変わらず普通ではない。
「気にするな。俺を噛みたいか?」
「嫌だ」
「...なら、ここの消毒してくれないか?」
それは、少しだけ切れた傷。
「これ、どうしたの...?」
「さっき何かに引っ掛かって切れた」
「そうだったんだ...それじゃあ、少しだけ」
真昼の血をもらうのも、残念ながらなくなることはない。
本当はこんなことしたくないけれど、どうしても耐えられないときは結局もらってしまうことがある。
「...大丈夫か?」
「うん。ありがとう。理性、吹き飛ばないから」
「おう」
独りならきっと諦めていた。
無理だってやる前から思っていた。
私は相変わらず普通ではない。
けれど、沢山の人からもらったこのぬくもりを大切にしたいと思う。
「真昼...好き」
「千夜、こんなところで何恥ずかしいこと言ってるんだ...」
「ちゃんと伝えたかったから」
本当の私を知っても、それでもいいと側にいてくれる人がいる。

ーーだから私は、この峽を背負って生きていく。
大切な人たちと一緒に、ずっと...。
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