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3枚目
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「今日の撮影、入ってくれるか?」
「……分かりました」
実を言うと、私が写真に収めるのは風景が多い。
人物を撮るとどれもしっくりこないし、結局却下されてしまう。
だから今日も、本当なら隣町の絶景スポットに行きたかった。
「俳優の細田隆道さんだ」
「こんにちは。カメラマンの中島です」
「細田です。よろしくお願いします」
最近話題のドラマに出演していた俳優さん、という情報しか知らない。
雑誌やネット記事で好きな食べ物くらいは調べておいたけど、それ以上の知識は特にない。
「それでは早速、次回のドラマのお話を伺っていきたいのですが……」
インタビュアの質問に答えるその子は緊張しているように見える。
「それでは最後に写真を撮りましょうか」
「は、はい」
ひと目見ただけで感じた。
そうか、この子は写真があまり好きじゃないんだ。
「こっちに目線ください」
「は、はい」
表情が硬い。これでは彼の良さが全て消えてしまう。
巷で微笑みの貴公子と呼ばれているのに、この表情ではきっと駄目だと言われる。
別のカメラマンがため息を吐いたのを見て思った。
どうせ私の写真が却下されるなら、好きなようにやらせてもらおうと。
「細田さん」
「は、はい!すみません」
「謝らないでください。私はただ、これを食べてほしいと思っただけなんです」
事前に買っておいた、細田さんの好物らしいあんドーナツ。
はじめは困惑していた彼も、一口齧って表情を変えた。
「美味しい……!これ、どこのお店のものなんですか?」
「駅前のものです」
「知らなかった……もちもち感がたまらない!」
その笑顔を1枚写真に収める。
「素のあなたの1枚、いただきました」
「……分かりました」
実を言うと、私が写真に収めるのは風景が多い。
人物を撮るとどれもしっくりこないし、結局却下されてしまう。
だから今日も、本当なら隣町の絶景スポットに行きたかった。
「俳優の細田隆道さんだ」
「こんにちは。カメラマンの中島です」
「細田です。よろしくお願いします」
最近話題のドラマに出演していた俳優さん、という情報しか知らない。
雑誌やネット記事で好きな食べ物くらいは調べておいたけど、それ以上の知識は特にない。
「それでは早速、次回のドラマのお話を伺っていきたいのですが……」
インタビュアの質問に答えるその子は緊張しているように見える。
「それでは最後に写真を撮りましょうか」
「は、はい」
ひと目見ただけで感じた。
そうか、この子は写真があまり好きじゃないんだ。
「こっちに目線ください」
「は、はい」
表情が硬い。これでは彼の良さが全て消えてしまう。
巷で微笑みの貴公子と呼ばれているのに、この表情ではきっと駄目だと言われる。
別のカメラマンがため息を吐いたのを見て思った。
どうせ私の写真が却下されるなら、好きなようにやらせてもらおうと。
「細田さん」
「は、はい!すみません」
「謝らないでください。私はただ、これを食べてほしいと思っただけなんです」
事前に買っておいた、細田さんの好物らしいあんドーナツ。
はじめは困惑していた彼も、一口齧って表情を変えた。
「美味しい……!これ、どこのお店のものなんですか?」
「駅前のものです」
「知らなかった……もちもち感がたまらない!」
その笑顔を1枚写真に収める。
「素のあなたの1枚、いただきました」
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