ノーヴォイス・ライフ

黒蝶

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第4話

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「桜雪ちゃんはどれ食べたい?」
見やすいように広げられたメニュー表の中からハンバーグ定食を選ぶ。
「了解。じゃあ俺はカツとじ御膳にしようかな。…すみません」
夏霧さんは店員さんに注文までしてくれて、本当にありがたかった。
「そうだ、聞きたいことがあるんだけど…このお守り、桜雪ちゃんのだよね?」
夏霧さんに見せられたのは、間違いなくなくしたお守りだった。
めいっぱい頷くと、夏霧さんはほっとしたように手渡してくれる。
「旧校舎で初めて会った日、目の前に落ちてたからもしかしたらって思ったんだ。
でも、なかなか話題にするタイミングが見つからなくて…ずっと持っててごめんね」
首を横にふって、メモ帳に走り書きで言葉を並べる。
「【とても大切なもので、なくして困っていたんです。見つけてくれてありがとうございました】」
「そんなにかしこまらないで。そんなに年が離れてるわけでもないし、丁寧に話してもらえるのは嬉しいけど距離を感じて嫌なんだ。
桜雪ちゃんが嫌じゃなければもっと仲良くなりたいし、もっと色々なことを教えてほしいんだ」
そんなふうに言ってもらえたのは初めてで、どんな反応をすればいいのか困ってしまった。
「ごめん。いきなりこんなこと言われても困るよね」
カツとじを食べる手を止めて、夏霧さんは立ちあがろうとした。
このままだと傷つけてしまいそうで、その袖を咄嗟に掴んでしまう。
「俺、ちょっと…どうしたの?」
「……」
書いている間にいなくなってしまわないだろうか。
不安に思っていると、夏霧さんが座り直した。
「大丈夫。ゆっくりでいいから」
いつもより汚い字になってしまったものの、なんとか言葉を紡ぎきる。
「【仲良くしたいだなんて言ってもらえたのは初めてで、少し戸惑ってしまったんです。
私といたら迷惑をかけることも沢山あるだろうし、気持ちを伝えるのもそんなに上手じゃないし…。それでも、一緒にいていいんですか?】」
夏霧さんはふっと笑って、わくわくした様子で答えた。
「俺は、桜雪ちゃんと話せて楽しいって思ってる。迷惑だなんて思わないし、気持ちを知りたいって思ったんだ。
俺もあんまり気の利いた言葉がすらすら出てくるわけじゃないけど、仲良くなりたいんだ。…俺と友だち、はじめてみない?」
この人はいい人だ。私をからかっているわけでもなく、本気で思っていることをぶつけてくれている。
「あと俺、今電話がかかってきてたから外で出てこようと思っただけだよ」
「……!」
夏霧さんは楽しそうに笑っていて、勘違いしたことに恥ずかしく感じる。
「ちょっと待ってて。すぐ戻るから」
頬に熱が集まるのを感じながら、夏霧さんの背中を見送る。
伝えたい言葉を綺麗に書いて、残りのハンバーグを食べ終えた。
「【私も夏霧さんのことを知りたいです。色々教えてください】」
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