ノーヴォイス・ライフ

黒蝶

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第35話

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「ごちそうさまでした」
近くのファミレスで食事して、少し散策しようという話になって店を出る。
少し寒く感じていると、肩が少し重くなった。
「それ羽織ってて。寒さしのぎにはなるはずだから」
「【ありがとうございます】」
町には沢山の人の笑顔が溢れていて、なんとなく自分だけ別の世界にいるような気分になった。
わいわいにぎやかな場所はやっぱり苦手だ。
「もう少し静かな場所に行こうか」
手を引かれるまま辿り着いたのは、前に穂さんが教えてくれた書店カフェだった。
「もしよければなんだけど、桜雪ちゃんが好きな推理小説を教えてくれない?
ちょっと読んでみたいとは思ってて、何を選べばいいのか迷ってるんだ」
推理小説のコーナーをじっと見て、何冊か持っていく。
「この中なら、個人的にこれが1番読みやすそうだね」
短篇集になっているそれは、たしかに読みやすいと思う。
手軽に読めるし1話完結だからきりがいいところで止めやすい。
「桜雪ちゃん、読んだことあるの?」
首を縦にふって、残りの本を元通りに並べる。
穂さんはその間にもうお会計を済ませていて、カフェスペースで休憩することになった。
「もうすぐ合同イベントだね。楽しみ?」
「……【ちゃんとできるか不安です】」
楽しみという気持ちより、どこかで迷惑をかけてしまわないかという不安の方が大きかった。
「勿論丁寧さも大事だけど、主催側が楽しんでない催し物なんてきっと誰も楽しめないと思う。
だから…不安になったら俺を呼んで。楽しいことで埋め尽くすから」
にっこり笑う穂さんの眩しさに、やっぱりときめいてしまう。
「桜雪ちゃん?」
呼びかけられてはっとする。
メモに急いで言葉を書いて見せた。
「【すみません。やっぱり静かで落ち着くなって思っていたんです】」
「そっか。ならいいんだ。…そろそろ送っていくよ。駅にバイク停めさせてもらってるんだ」
ヘルメットを借りてまた後ろに乗せてもらう。
鼓動が伝わってしまわないか心配になりながら、申し訳なく思いながら腕の力を強めた。
「今日も楽しかったよ。えっと…【またね】」
「…!【おやすみなさい】」
穂さんが手話を使ってくれるのが嬉しくて、つい手話で返答してしまった。
ちゃんと伝わったかは分からない。
一応お礼のメモと、少しでもガソリン代の足しになればと挟んだお金を受け取ってもらえるように願った。
それからしばらくして、誰もいない部屋でノートを見ながらメッセージを送る。
【こんばんは。八坂です。都合のいいときにお返事いただけますと幸いです。実は相談したいことがあります。それは──】
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