ノーヴォイス・ライフ

黒蝶

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第37話

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授業終わり、荷物をまとめていると後ろから声をかけられた。
「あ、あの…」
「どうかしたの?」
「合同イベントって手芸用品のお店を出していいんですよね?」
「うん。自作のものならお店を出して、そうじゃないものはリサイクルの店に並べて貰う予定になってるよ」
「スペース、余ってますか?僕も手芸品を売り出したくて…」
滅多に話しているところを見たことがない女子生徒の名前を思い出そうとするけど、なかなか出てこない。
「スペースはこの角っこが余る予定だから、ここなら出せるよ。申請書類がいるから、書いてもらってもいい?」
「はい。ありがとうございます」
南雲実雪と書かれたのを見て思い出した。
いつもぬいぐるみを持っている、通信制と併修しながら通っている子だ。
「できました」
「たしかに預かりました。それじゃあ、お疲れ」
「お疲れ様でした!」
ぬいぐるみ、可愛い雑貨、手芸…その単語たちでいいお店があるのを思い出した。
翌日、昼間制がテスト期間中で早く終わってくれたのですぐに雑貨屋へ向かう。
「いらっしゃいませ」
「すみません、プレゼントセット一式をこの日までに仕上げてもらうことって可能ですか?」
「承りました」
お姉さんが親切に対応してくれたおかげであっという間に終わってしまった。
あとは定時制の出店から頼まれた買い出しを終わらせるだけだけど、行く途中で迷子になっている子どもを見つける。
「ママ、どこ…」
「お母さんとはぐれちゃったのか。お兄さんと一緒に探しに行こう」
周囲の大人たちが安堵したのを感じる。
最近は大人が困っている子どもに話しかけただけで不審者呼ばわりされてしまうと、新聞の特集記事で目にしていた。
この中にだって、声をかけようか迷っていた人たちがひとりやふたりいたはずだ。
制服のまま買い物に来てよかった。
「すみません、迷子みたいです」
「ありがとうございます。…こんにちは。お名前を教えてもらえるかな?」
「ママ、ママ…!」
子どもは不安がって泣くばかりで、なかなか会話にならない。
どうしようか困っていると、何かに興味を示した男の子がどこかへ向かって走り出した。
「え、あ、」
「お姉さんは今の子の服の特徴をアナウンスしてください。俺はあの子をもう1度連れてきます」
早口でそれだけ話して追いかける。
何に興味を持ったんだろうと思っていると、男の子の無邪気な声が聞こえた。
「ぴょんぴょん、ぴょんぴょん」
「……」
困った顔をしているその人を俺は知っている。
テーブルが折り紙だらけになっていて、男の子は蛙が気になっているようだった。
小さな手を握って、蛙の後ろを押す。
「飛んだ、飛んだ!」
楽しそうにはしゃぐ様子はさっきまでの不安そうな顔と大違いだ。
「お嬢さん、もしよかったら俺と一緒に来てもらえませんか?」
マスクをしたその人は驚いた様子で俺を見ている。
「こんにちは、桜雪ちゃん。その子迷子なんだ。もし時間があるようなら、迷子センターまで一緒に来てほしい」
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