路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when Christmas comes.

第9話

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ー*ー
ナタリーさんが泣き止んだのを見て、カムイがドアの方を見て優しい声音で言う。
「ナタリー、お迎えだ」
「遅いからきちまっただよ」
扉の方を見ると、立っていたのはベンさんだった。
「ベン...」
「おいら、何も見てなかっただが、何かあっただか?」
「ナタリーがいつもの調子で馬鹿力を発揮してうちの椅子を壊しただけだよ」
カムイがからっと言うと、ナタリーさんも続けて言う。
「そうよ、馬鹿力で壊しちゃったの!新しいのを持ってこないとね」
「そうだっただか!二人とも、申し訳ないだよ」
「いえ、私はナタリーさんと色々なお話ができて楽しかったです」
私は素直な気持ちを伝えた。
「またナタリーの相手をしてやってほしいだか」
「その前に...ベン。メルの眼のことを他の人に話さないでくれるかな?彼女なりに事情があるんだ」
「それはすまなかっただ...。お嬢さん、本当にすまなかっただ」
大男のベンさんが頭を下げる。
「気にしないでください」
(知らなかったのだから仕方ありません)
「椅子、早めによろしくね」
「了解だよ」
「ナタリーさん、またお話ししましょうね」
「うん!」
ナタリーさんは少しだけ元気を取り戻したようだ。
...二人を玄関で見送ってふと空を見あげたとき、夜になったのだとはじめて気づいた。
ー**ー
俺は少し弱々しく見えるメルを見て、つい抱きしめてしまった。
「カムイ...?」
「お疲れ様。頑張ったね」
「そんなことは...」
「ね?メルの瞳、綺麗だって思ってるの俺だけじゃなかったでしょ?」
「...はい」
照れくさそうにしているメルを見て、好きだと言ってしまいそうになる。
「でも、まだ外で瞳を出して歩きたくないと思ってる。...あたり?」
「どうして、分かったんですか?」
「メルのことなら分かるよ。でも今は、それでいいと思うよ。俺には瞳を見せてくれている。今はそれだけで充分だよ。ゆっくりでいいから、いつか外を眼帯なしで歩けるといいね」
メルのさらさらな髪を梳く。
「はい...!」
メルの身体が震えた。
「そろそろ中に入ろうか。今日は星が綺麗だけど...」
「窓から見えますかね?」
「見えるよ、きっと」
メルの手をひき、扉を閉じた。
...このまま二人で、ずっといたい。
ー*ー
「あの、カムイ...夕飯はどうしましょうか?」
「アップルパイが食べたいな」
(アップルパイ...)
リンゴを使った料理は基本的に作れる。
だから私は、アップルパイを仕上げた。
「メル、料理人になれそうだね」
「ええ⁉そんなことないです!」
「ほら、メルも見てないで食べてみなよ」
目の前に突きだされたフォークを口に入れる。
「...美味しいと思います、多分」
「どうしたの?顔真っ赤にして...」
「カムイは時々意地悪です」
「ごめんごめん。可愛い子がいると、ついね」
「可愛いってあんまり言わないでください...」
褒められなれていないからなのか、カムイに言われたからなのか...『可愛い』と言われると照れてしまう。
「可愛いから、仕方ないでしょ?」
「それなら、カムイはカッコいいです」
「え、」
(動揺してるのでしょうか...?)
「カムイは、カッコいいでふっ⁉」
アップルパイを口に入れられ、喋ることができなくなってしまった。
「そんなに可愛い声であんまり言わないで...」
カムイの顔が赤くなっているように見えた。
(...どうしてこんなに緊張してしまうのでしょうか)
おばあさまに言われた言葉を思い出す。
《メル、男の人に対して一緒にいたいだとか安心するだとか...そういう感情が芽生えたら、それはきっと恋だよ》
...この感情は、恋なのだろうか。
ー**ー
「メル」
「はっ、はい!」
(なにか緊張してる?)
「これ、新しい眼帯を買うまではこれで我慢してくれる?」
それは、医療用眼帯だった。
「いただいてしまってもいいんですか?」
「うん、勿論だよ」
「これで一緒にお出掛けできますね!」
メルは嬉しそうに眼帯を手に持っている。
「そうだね。次は公園とか行ってみるのもいいかもしれないね」
「はい!とても楽しみです!」
メルのわくわくしたような顔は少しだけ子どもらしかった。
(そういう顔を、ずっと見ていたい)
「メル、明後日くらいにクリスマスツリーを出すから...手伝ってくれる?」
「はい、勿論です」
「じゃあそれまでは、ご飯をよろしくね」
「他にお手伝いできることは...」
「いい子でお留守番してて?」
メルは少し頬を膨らませる。
「そこまで子どもじゃないです...」
「ははっ、そうだね。じゃあ家を任せるね」
「はい」
月明かりに照らされて、メルが可憐に微笑んでいた。
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