路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when I get engaged.-The light which comes over darkness-

第35話

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ー**ー
次の日。
天気は雨だった。
メルはとてもガッカリしていた。
「残念だね、公園はまた今度行こう?」
「はい...」
「雨でも本屋には行けるよ。今から行こうか」
「はい」
俺は先に外へ出て傘をさし、メルに手渡す。
「これで濡れないから」
「ありがとうございます」
俺は右手をメルに差し出す。
「行こう」
「はい!」
メルは俺の手をとって走り出す。
(よかった、さっきよりは元気になったみたいだ)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「色々な本があるんですね...」
メルが本屋の中をキョロキョロしている。
「うん。俺はこれが欲しくてきたんだ」
「分厚い本ですね...」
メルがとても驚いている。
俺が持っているそれは、千ページ以上あるからだ。
「まあね。今日はこれだけじゃなくて...メル、選んで」
「え?」
目の前には、メモ帳が大量に並んでいた。
ー*ー
私は目の前にある色とりどりの物を見渡した。
水玉模様のもの、ケーキが書かれているもの、無地のもの...。
「私が選んでいいんですか?」
「うん」
「それじゃあ...」
私はシンプルな白い無地のものを選んだ。
「なら、それはメルの分ね」
「え⁉カムイが使うんじゃないんですか⁉」
「...ははっ、俺はメルが選んだものに合わせた色のものを買おうと思っていたんだ。じゃあこの白いのはメルの分ね。俺は...黒にしようかな」
(私はお金を持っていないのに...)
こういう時、いつも申し訳なく思う。
私はお金を稼いでいないのに、カムイがいつも買ってくれるからだ。
私は何もカムイにできていないのに、カムイはいつだって優しくしてくれる。
「メルは分からないことを、一生懸命覚えようとするでしょ?それに、毎日色んなことがあるから...そういうことを、このメモ帳に書いておけばいい。それともう一つ別に、二人で書くノートを作る」
そんなふうに思っていてくれたのだと感謝しつつ、もう一つのノートというものが気になった。
「それには何を書くんですか?」
「そうだな...たとえば、嫌なことがあったり、直接言いづらいことや伝えるタイミングを見失ったとき、これに書いておけば二人とも読めるでしょ?そういうのがあってもいいんじゃないかなって」
(伝えるタイミングを見失ったとき...)
左眼のことを、書いてもいいのだろうか。
他にも、感謝の気持ちをたくさん書いてもいいのだろうか。
カムイのことをもっと知りたいと、そう書いてもいいのだろうか。
「...今から楽しみです!」
「それじゃあお会計してくるね」
「はい」
カムイがお金を払っている間、私は外を見た。
私は向かいの雑貨屋さんを見て、目をそらすことができなくなっていた。
「あれは...」
ー**ー
会計を済ませてメルの方を見ると、彼女が何かを見ていた。
メルが見ている方に視線を向けると、雑貨屋があった。
そしてそこには、大量の入浴剤があった。
「メル、少しだけあの雑貨屋さんに行ってみようか」
「はい」
メルは本当に嬉しそうにしている。
(顔に出やすいな、メルは)
俺は入浴剤を手に取って見る。
男の俺には、メルの好みが分からない。
メルが見ているものを一緒に見る。
(『ベビーピンクのお湯、安らぎのピーチの香り』、か)
この間も思ったのだが、メルはフルーツの香りが好きなのだろうか?
「メル、それ買ってみようか」
「いいんですか...?」
メルはワガママを言わない。
本当はもっと、ワガママを言ってほしい。
俺が叶えられることなら、なんだって叶えたい。
店を出たとき、雪が降っていた。
「帰ったらお風呂だね」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺はバスタブに湯をためる。
「それじゃあメルから入ってもいいよ」
「ダメです、それではカムイが風邪をひいてしまいます!」
どうしてメルはいつも俺の心配ばかりしてくれるんだろうか。
「その、いっ...一緒に入ってください」
(この子に悪気はない、この子は純粋に一緒に入りたいだけ...)
俺は自分に自分で暗示をかける。
「それじゃあメルが身体を洗って、バスタオルを身体に巻いたあとならいいよ」
「はい!」
俺はメルにメモ帳を渡し、バスルームに向かう足音を聞いたあと、早速ノートに書く。
(...よし)
「カムイ」
「すぐ行くよ!」
俺はノートをテーブルに置き、メルのいるバスルームへ向かった。
ー*ー
ゆっくりお風呂に入った結果、もう夜になっていた。
(今日のお礼を書いてみましょう!)
私はテーブルの上にあったノートを開く。
それにはカムイの字でこう書いてあった。
『メル

お願いがあります。
もっと俺に、ワガママを言ってください。
言いたいことも、もっと俺に言ってください。
我慢しないで...どんな些細なことも、俺に教えて?
俺はどんなメルでも嫌いになんかならないし、迷惑だなんて思わないから』
(カムイ...)
私はマッチで暖炉に灯をともす。
...ワガママを言ってもいいのだろうか。
言いたいことを言っても、迷惑にならないのだろうか。
(それなら一つだけ、お願いしてもいいでしょうか?)
ー**ー
俺が入浴を済ませたときには、もう十二時をまわっていた。
「メル、寝ようか」
「はい」
いつもの調子で俺はベッドルームに入る。
メルがベッドに寝転んでこちらを見ている。
「どうしたの?」
「あの、カムイ...ぎゅーってしてもらってもいいですか?」
俺はその質問に戸惑った。
要はベッドの上で抱きしめられたいということなのだろうか。
「いいよ、もっとこっちにおいで」
メルは俺にしがみついてくる。
「...!」
「安心します。カムイの腕のなかは、一番安心できます...」
メルはうとうとしながらそう言った。
「今日はいっぱい歩いたから疲れたよね。大丈夫、絶対に離さないから。...おやすみ」
俺はそっとメルの唇に口づけをおとした。
「すぅ...」
とても幸せそうなメルの寝顔を見て、俺まで幸せな気持ちになった。
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