路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

文字の大きさ
72 / 220
Until the day when I get engaged.-The light which comes over darkness-

第37話

しおりを挟む
ー*ー
この日は晴れていた。
「おはようございます」
「うん、おはよう」
(カムイに気づかれないように...)
私は密かに早起きをして、サンドイッチを作った。
「今日は公園に行ってみようか」
「はい!」
カムイは私の手をとり、公園へと向かっていく...。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「わあ...」
今までなんとも思わなかった雪景色が、とても輝いて見える。
「このあたりは、すぐに雪が積もるんだ。綺麗だよね」
「はい!」
私は持っていたバスケットをベンチに置き、カムイに駆け寄る。
「メル、雪ウサギ作ろうか」
「雪ウサギ...?」
「ほら、こんな感じで形にして...」
カムイが作ったものはとても綺麗で、今にも動き出しそうだった。
「可愛いです」
「メルもやってごらん?」
「はい!」
私はやってみたものの、なかなか形が整わない。
「あ、それはこうして...」
カムイの手が私の手を包みこむ。
とても寒いはずなのに、とても温かく感じて心地よかった。
「ほら、できたよ」
「可愛いです」
二人で微笑みあっていると、カムイの顔に雪玉がぶつかった。
「...相変わらずの怪力だね、ナタリー?」
ー**ー
メルと微笑ましく過ごしていたというのに、恐ろしい怪力が現れた。
「はじめてカムイの顔に当てた!」
「二人とも、すまねえだよ...」
ベンが申し訳なさそうにしている。
「いや、別にいいよ」
「カムイ、顔が赤くなってしまっています!」
「メル、大丈夫だから...っ」
メルは自分の手で俺の両頬を挟んだ。
「こうすればあたたかくなりますから...」
「あ、ありがとう」
そんなメルの行動に、つい照れてしまいそうになる。
俺は顔が火照るのを必死に抑えた。
「ところで...人の顔に当てたんだ。覚悟はできてるよね、ナタリー」
「え、あ、いや...」
「問答無用」
俺はナタリーに向かって雪玉を投げる。
「ぐはっ!」
しかし俺が当ててしまったのは...
「仲良くやっているようだな、おまえたち」
エリックの肩だった。
「ごめんねエリック。きみの後ろのレディに当てようとしたんだ」
「まったく...休憩だからときてみれば、何故勢揃いしている?」
俺だけ仲間外れかよ...とエリックが小さく呟いていた。
「あ、えっと...みなさんも食べますか?あまり自信はないのですが...」
メルはバスケットを開ける。
中には、大量のサンドイッチが入っていた。
(朝からなにかそわそわしていたのはこれか)
ー*ー
「いいの⁉いただきます!」
「ナタリー、一気に食べるのはよくないだよ」
「俺もいただこう」
みんなが喜んで食べてくれて、本当によかったと思う。
余分に作っておいて正解だったようだ。
ふとカムイの方を見ると、少しだけむすっとしている。
「カムイ...?」
「俺だけが独占できるはずだったのに」
「え?」
(もしかして、ヤキモチというやつでしょうか?)
「カムイには、また別の日に別のものを作りますから...」
私は隣に座っているカムイの頭をそっと撫でた。
「楽しみにしてる」
カムイは元気になったようだ。
「ねえ、二人とも」
「なんだあ?」
「雪だるま作りたいから手伝ってよ」
「俺はもう少し食べてから行く」
「おいらはもう大丈夫だぞお」
カムイはベンさんと一緒に、何かをやりに行ってしまった。
「メルはカムイとラブラブなんだね」
「ラブラブ...?」
ナタリーさんに言われたことの意味がよく分からなかった。
「メル、要するにきみとカムイの仲がとてもいいという意味だ」
エリックさんが丁寧に教えてくれる。
「ありがとうございます。でも...ナタリーさんたちには負けていると思います。本当にお二人は仲がいいですから」
「そうかな?」
ナタリーさんが少し照れている。
「そういえばナタリーさんとベンさんは、どこで出会ったのですか?」
「メル、それは...」
エリックさんが言いづらそうにしている。
「...あたしはね、ベンたちに助けてもらったの。本当はもうとっくに死んでいたはずなの」
「どういうことですか...?」
「ナタリーはこう見えて実は...」
エリックさんが話している途中、遠くでカムイが呼ぶ声がした。
「すまない。俺は行ってくる」
エリックさんは行ってしまった。
「ごめんなさい、言いたくないなら聞きませんから」
私はナタリーさんに謝る。
本当に申し訳ないことをしたと、とても反省した。
「いやいや、メルが悪い訳じゃないし気にしないで!今から四、五年前の話だけど...話すと長くなるから」
ナタリーさんはとても寂しそうにしていた。
(なにか事情があるのでしょうか)
色々考えていると、
「メル、雪だるまができたよ!」
カムイの声が聞こえた。
「ナタリーさんも行きましょう!」
「うん!」
大きな雪の塊が二つ。
目と鼻と口もちゃんとある。
「これが雪だるまですか?」
「うん」
「雪だるまもはじめてなの⁉メルってやっぱり面白いね」
「ナタリー、お嬢さんをいじめるようなことを言うのはダメだよ」
「まったく、おまえはいつまでたっても子どもだな」
「今のは聞き捨てならないわ」
このあとナタリーさんが雪だるまの顔を持ちあげ、ベンさんとエリックさんを追いかけていた...。
ー**ー
「今日はとても楽しかったです!」
メルが嬉しそうに言うものだから、俺も嬉しくなる。
俺も決して楽しくなかったわけではない。
エリックたちと調査し、ナタリーの『事件』を解決した頃を少しだけ思い出した。
「次は二人きりでどこかに出掛けようね」
「はい!」
俺はベッドルームでメルを抱きよせ、口づけを落とした。
しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

処理中です...