路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when I get engaged. -In linear light-

第58話

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ー*ー
次の日。目を開けると、視界いっぱいにカムイの顔がうつる。
穏やかな寝息をたてて寝ている彼を見て、私は心の底から安心した。
(ちゃんと寝てくれてよかったです...)
カムイの髪に目をやると、寝癖がついている。
何度撫でてもぴょんぴょんとはねる髪に、私は思わず笑みをこぼした。
「ん...」
カムイが私の手をとる。
「ん、メル?」
「おはようございます」
「うん、おはよう...」
カムイはそう言って目を閉じてしまう。
(え...)
いつもなら目を開けて、すぐに食事の支度をするカムイが、再び眠ってしまった。
疲れているのだろうか。
私は掴まれたままの手をそっと振り払おうとすると、逆にひかれてしまう。
「カムイ⁉」
「くぅ...」
カムイとの距離が近くなって、昨夜のことを思い出す。
(なんだか頭がふわふわする、不思議なキスでした...)
自分の口から漏れ出ていた声を思い出して、私は頬が熱くなっていくのを感じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから二時間後。ようやくカムイは起きた。
「おはようございます」
「うん、おはよう」
カムイが優しく私の頭を撫でてくれる。
その感覚が心地よくて、私はつい、身体を預けてしまう。
「メル、今夜馬車がくるから...だから、もう一度海に行こうか」
「はい!」
(お昼ご飯にサンドイッチを作っていきましょう)
ー**ー
メルの右手の包帯を替える。
消毒したとき、傷に滲みて少し苦しそうな表情をするメルを見るたび、罪悪感でいっぱいになる。
「ごめんね...」
「もう謝らないでくださいって、昨日も言ったじゃないですか。カムイが悪い訳じゃないんです。それに、カムイの苦しみが半分もらえるなら、全然平気ですよ?」
「メル、それじゃあその代わりに...メルの悲しみや苦しみも、半分頂戴?」
「えっ...、いいんですか?」
「当たり前でしょ、だってメルは俺の大事な彼女だから」
メルは顔を真っ赤にしている。
(可愛い...)
メルの頭をわしゃわしゃと撫で、俺は立ち上がる。
「メル、着替えたらおいで」
「はい」
俺はシャツの上にベストを着て、素早くベッドルームをあとにした。
(メルと思い出になるようなことがしたいな...さて、何がいいか)
ー*ー
「おまたせしました!」
「寒くない?」
「大丈夫です」
カムイがいつものように手をさしのべてくれる。
「ありがとうございます」
「それじゃあ行こうか」
「はい!」
私はバスケットを持っていく。
(今日はハムサンドにしてみましたが、カムイは気に入ってくださるのでしょうか?)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
三分もたたないうちに、海にたどりつく。
波が暴れるように動いている。
「うーん...やっぱり雨あがりだとこうなるよね」
「そうなんですか?」
「うん、高い波がくるんだ。でも...まあ、砂浜近くまでは大きい波はこないから、この間みたいには遊べると思うよ」
「本当ですか?」
「うん。...ほら、こんなふうにね!」
パシャッ!
「カムイ、ずるいです。私もやります」
パシャッ!パシャッ!
何度も何度もかけあううちに、いつの間にか右手にかかってしまっていた。
(...!滲みます!)
「ごめんメル!大丈夫...?」
「はい...」
「ちょっときて」
「え?」
ー**ー
傷が膿んでいないかを調べ、俺は急いでメルの包帯を替えた。
「ごめんね...痛かったよね」
「いえ、大丈夫です!それよりも、おなかすきませんか?」
「ちょっとだけ」
「じゃあ、これ食べてください!紅茶も淹れてきましたから」
メルがにこにこしながらバスケットを開ける。
(ハムサンドか...こんなものまで作れるのか)
メルは本当にすごい子だと思う。
「美味しいよ」
「よかったです...!」
メルは本当に幸せそうに笑っていた。
「メル」
「...⁉」
メルは驚いたような顔をしていたが、ハムサンドをもぐもぐと食べはじめる。
「カムイはいきなりすぎます...」
恥ずかしそうに目を逸らされてしまう。
「ごめんごめん。...もうそろそろ馬車がくるかもしれない」
「ええ⁉もうですか...?」
残念そうに言うメルの頭を撫でて、
「大丈夫、またいつでも連れてくるから!約束ね」
「はい!」
俺たちはゆびきりをして、コテージに戻った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
帰りの馬車のなかで、俺はメルに密かに作っていたものを渡した。
(海の思い出...にはならないけど、喜んでくれるといいな)
「わあ...」
それは、ライムグリーンのケープ。
コテージに置いてあった裁縫道具で密かに作ったのだ。
「ごめんね、布がそれしかなくて...」
「嬉しいです、ありがとうございます!」
メルが早速羽織ろうとしたので、ネグリジェに羽織った方がいいと薦めておいた。
「カムイ」
「んー?」
「やっぱり、カムイが一番好きです!」
「...!」
メルが顔を寄せてきて、そっとキスしてくれた。
(どうしてこうも可愛いんだ...)
馬車が揺れるなか、家にたどりつくまで厭きるほどに口づけを繰り返した...。
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