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Until the day when I get engaged. -Of light, ahead of it...-
第88話
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ー**ー
俺は、あいつと拳をあわせた。
「カムイ!」
俺の後ろにはメルがいる。
...ここでひくわけにはいかない。
「ふふっ、楽しいね♪」
「これのどこが楽しいんだよ」
「僕はこうやって、誰かと遊びたかったんだ」
満足げにあいつは立て続けに技をくりだしてくる。
「くっ...」
「カムイ!」
「メル、近づいちゃダメだ」
「でも、」
「お願い。メルのことを俺に守らせて」
「...!」
メルは納得してくれたらしく、後ろへとさがってくれた。
(腕が痛い...。だが、今怪我をしている場合じゃない)
「...っ」
エリックが呻いているのが目にはいる。
いくら体質の効果があるとはいえ、あの怪我ではもうできることは少ないだろう。
早く手当てをしてやりたい。
「ぼうや、僕と一緒にきてよ」
「断る。俺はもう、独りじゃないから」
「...やっぱり早めに迎えに行くんだったな」
攻撃が止む。
「どういう意味だ?」
「例えば...その子を誘拐させたり、その子のお父さんと引き合わせたり?」
俺は腹がたってしょうがなくなった。
「なんであんなことしたんだよ!メルがどれだけ傷ついたと思ってるんだ!どうしてそんなことを...」
俺は怖くて後ろを向けなかった。
メルがどんな表情をしているのか、見ることができなかった。
俺がメルと関係をもたなければ、メルは...。
だが、俺の不安は後ろからの一言で消え去った。
「気づいていませんでした...。あなたは、すごく賢い方なんですね!」
俺が後ろを振り向くと、メルがにこにこしていた。
「...バカにしてるの?きみのお父さんを殺したんだよ?それなのに、僕を褒めてるの?」
ー*ー
愚かだと、そう思われてしまうかもしれない。
それでも私は、思ったことを素直に話すだけだ。
「はい!普通なら、気づかれてしまうでしょう?それなのに、あなたは誰にも気づかれずにやっていたんですよね...。だから、そのせいで寂しさが溜まってしまったのではないですか?」
「...僕のことが、分かるの?」
「はい。私も、カムイに助けていただくまでは独りだったので...その寂しさはよく分かります」
心まで凍るような寒さ。
芯までとおる冷たさ。
体が動かなくなる感覚。
それらは全部、私が味わってきたものだった。
「きみは、俺を許せるの?」
「はい」
「化け物って言ったのに?」
「はい」
「お父さんを殺したのに?」
「...はい」
『許す』というのは、ある意味難しいことだと認識はしている。
でも、誰かが彼を許さなければ何も変わらないのだ。
「憎んでも何も変わらないのなら、私はあなたを許します。その代わり、ちゃんと警察に行ってください」
「...」
「メルらしい意見だね」
「カムイ」
「それもそうか。...俺も今は許せないけど、いつか水に流してやる。その代わり、メルが言ったようにちゃんと自首しろ」
「...」
彼は黙ったままだ。
「おまえたち!早くこっちにこい!」
エリックさんが叫ぶ声が聞こえた。
「...!」
ー**ー
エリックが天井を銃で指している。
よく見ると、亀裂がはいっていた。
(走って間に合う距離じゃない)
俺は咄嗟にあいつがいるのも構わず、メルの背後にまわり背中を強く押した。
「カムイ!」
(俺は間に合わないかな...)
「メル、エリックに向かって走って。俺もすぐに行くから」
「でも!」
「メル、こっちだ」
俺は崩壊していく天井を見つめた。
(まさか、こんなところで死ぬなんてね)
「...あーあ」
しかも、俺の周りを滅茶苦茶にしたこいつと一緒に...。
そんなことを想像していると、背中に衝撃がはしった。
「!」
「もう...きみたちのせいだからね。お陰で、最後の最後に変なお節介をしちゃったじゃないか」
俺の背中を押したのは、間違いなくあいつだった。
「じゃあね、ぼうや」
俺は必死で駆け寄った。
(間に合え...!)
そのとき、一緒に走っている小さな体があった。
「...!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
僕のなかに、優しさなんてないと思ってた。
でも、あんなに必死な女の子がいたら、誰だって心をかき乱されるに違いない。
「最後の最後で、いいことができたみたいだ...」
僕の上に崩れた天井が落ちて...くることはなかった。
「誰でも、優しさをもっているんですよ」
「...!」
その手は俺よりも小さくて。
誰のものかは明らかだった。
「なんで、」
「死んだら終わりだろ?」
反対の手は、ぼうやに掴まれていた。
「なんで僕を助けた?僕はきみたちの敵でしょ?」
「かっこよく死んで終われるなんて思ってたの?」
「...!」
「隣街の警察がきてる。これから、おまえの本当の名前や生い立ちを調べる。裁判とよくて懲役刑が待ってるおまえを待つのは嫌だけど...次会ったら、何かごちそうするよ」
「私も一緒に作って待ってますね」
「...なんで優しくするんだよ」
僕は問わずにはいられなかった。
僕は人殺しだ。
犯罪者だ。なのに...なんでこの二人はこんなことができる?
「俺はもう、誰も死なせない。全てを守る。...それは、おまえについても同様だ」
「...っ」
僕ははじめて、泣いたような気がした。
涙で霞んで見えなかったけど、誰かの名前を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
「...おとなしくきてもらうぞ」
ああ、僕の完敗だ。
でも待ってくれる人がいるなら...僕はどんな罰でも受けよう。
...いつかぼうやたちに、偽りのない本当の僕が話せる日がくると信じて。
俺は、あいつと拳をあわせた。
「カムイ!」
俺の後ろにはメルがいる。
...ここでひくわけにはいかない。
「ふふっ、楽しいね♪」
「これのどこが楽しいんだよ」
「僕はこうやって、誰かと遊びたかったんだ」
満足げにあいつは立て続けに技をくりだしてくる。
「くっ...」
「カムイ!」
「メル、近づいちゃダメだ」
「でも、」
「お願い。メルのことを俺に守らせて」
「...!」
メルは納得してくれたらしく、後ろへとさがってくれた。
(腕が痛い...。だが、今怪我をしている場合じゃない)
「...っ」
エリックが呻いているのが目にはいる。
いくら体質の効果があるとはいえ、あの怪我ではもうできることは少ないだろう。
早く手当てをしてやりたい。
「ぼうや、僕と一緒にきてよ」
「断る。俺はもう、独りじゃないから」
「...やっぱり早めに迎えに行くんだったな」
攻撃が止む。
「どういう意味だ?」
「例えば...その子を誘拐させたり、その子のお父さんと引き合わせたり?」
俺は腹がたってしょうがなくなった。
「なんであんなことしたんだよ!メルがどれだけ傷ついたと思ってるんだ!どうしてそんなことを...」
俺は怖くて後ろを向けなかった。
メルがどんな表情をしているのか、見ることができなかった。
俺がメルと関係をもたなければ、メルは...。
だが、俺の不安は後ろからの一言で消え去った。
「気づいていませんでした...。あなたは、すごく賢い方なんですね!」
俺が後ろを振り向くと、メルがにこにこしていた。
「...バカにしてるの?きみのお父さんを殺したんだよ?それなのに、僕を褒めてるの?」
ー*ー
愚かだと、そう思われてしまうかもしれない。
それでも私は、思ったことを素直に話すだけだ。
「はい!普通なら、気づかれてしまうでしょう?それなのに、あなたは誰にも気づかれずにやっていたんですよね...。だから、そのせいで寂しさが溜まってしまったのではないですか?」
「...僕のことが、分かるの?」
「はい。私も、カムイに助けていただくまでは独りだったので...その寂しさはよく分かります」
心まで凍るような寒さ。
芯までとおる冷たさ。
体が動かなくなる感覚。
それらは全部、私が味わってきたものだった。
「きみは、俺を許せるの?」
「はい」
「化け物って言ったのに?」
「はい」
「お父さんを殺したのに?」
「...はい」
『許す』というのは、ある意味難しいことだと認識はしている。
でも、誰かが彼を許さなければ何も変わらないのだ。
「憎んでも何も変わらないのなら、私はあなたを許します。その代わり、ちゃんと警察に行ってください」
「...」
「メルらしい意見だね」
「カムイ」
「それもそうか。...俺も今は許せないけど、いつか水に流してやる。その代わり、メルが言ったようにちゃんと自首しろ」
「...」
彼は黙ったままだ。
「おまえたち!早くこっちにこい!」
エリックさんが叫ぶ声が聞こえた。
「...!」
ー**ー
エリックが天井を銃で指している。
よく見ると、亀裂がはいっていた。
(走って間に合う距離じゃない)
俺は咄嗟にあいつがいるのも構わず、メルの背後にまわり背中を強く押した。
「カムイ!」
(俺は間に合わないかな...)
「メル、エリックに向かって走って。俺もすぐに行くから」
「でも!」
「メル、こっちだ」
俺は崩壊していく天井を見つめた。
(まさか、こんなところで死ぬなんてね)
「...あーあ」
しかも、俺の周りを滅茶苦茶にしたこいつと一緒に...。
そんなことを想像していると、背中に衝撃がはしった。
「!」
「もう...きみたちのせいだからね。お陰で、最後の最後に変なお節介をしちゃったじゃないか」
俺の背中を押したのは、間違いなくあいつだった。
「じゃあね、ぼうや」
俺は必死で駆け寄った。
(間に合え...!)
そのとき、一緒に走っている小さな体があった。
「...!」
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僕のなかに、優しさなんてないと思ってた。
でも、あんなに必死な女の子がいたら、誰だって心をかき乱されるに違いない。
「最後の最後で、いいことができたみたいだ...」
僕の上に崩れた天井が落ちて...くることはなかった。
「誰でも、優しさをもっているんですよ」
「...!」
その手は俺よりも小さくて。
誰のものかは明らかだった。
「なんで、」
「死んだら終わりだろ?」
反対の手は、ぼうやに掴まれていた。
「なんで僕を助けた?僕はきみたちの敵でしょ?」
「かっこよく死んで終われるなんて思ってたの?」
「...!」
「隣街の警察がきてる。これから、おまえの本当の名前や生い立ちを調べる。裁判とよくて懲役刑が待ってるおまえを待つのは嫌だけど...次会ったら、何かごちそうするよ」
「私も一緒に作って待ってますね」
「...なんで優しくするんだよ」
僕は問わずにはいられなかった。
僕は人殺しだ。
犯罪者だ。なのに...なんでこの二人はこんなことができる?
「俺はもう、誰も死なせない。全てを守る。...それは、おまえについても同様だ」
「...っ」
僕ははじめて、泣いたような気がした。
涙で霞んで見えなかったけど、誰かの名前を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
「...おとなしくきてもらうぞ」
ああ、僕の完敗だ。
でも待ってくれる人がいるなら...僕はどんな罰でも受けよう。
...いつかぼうやたちに、偽りのない本当の僕が話せる日がくると信じて。
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