路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when I get married.-New dark appearance-

第95話

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ー**ー
次の日。診療所は一応開けているものの、珍しく人がこない。
(病気の人が少ないわけだから、いいことなんだけど...)
「なっ...」
「チェックメイト」
「カムイ、また勝ちましたね」
メルが紅茶を淹れながら、俺とエリックがチェスをしている所を見ている。
「メルもやってみるか?」
「私はあまり強くないので...」
エリックに誘われていたが、『オークス』を捕まえたあと、メルと旅行に行ったときのことを思い出す。
(もしかして、あのとき俺が手加減しないでやったから...)
「メル、エリックと勝負してみて?」
「でも...」
「大丈夫、俺がついてるから」
「分かりました」
メルはにこにことしている。
俺は席を立ち、メルと場所を交代した。
「はじめは一人でやってみます...」
「うん、分かった」
「よろしく頼む」
「はい」
メルはポーンを動かす。
エリックも同様に、ポーンを動かす。
(ここからが勝負か...)
ー*ー
(困りました...)
しばらくして、私は次の一手に苦戦していた。
「...メル。この街には、夏のパレードがあるのを知ってる?」
「え?いえ、知りません...」
「騎士団の人たちが剣舞を披露するらしいよ」
「そうなんですね...」
何故突然そんな話をしているのだろう。
そんなことを思いつつ、盤面に目をやる。
(そういうことですか...)
私はナイトを動かす。
「チ、チェックです」
「なっ...よく見てなかった」
エリックさんは本当に気づいていなかったらしく、私はカムイの方を見る。
「...」
カムイはふっと微笑んでくれた。
そこからは自力でなんとか勝つことができた。
「強いな、メルは」
「そ、そんなことないです...」
「カムイに手加減なしでやられたか?」
「うう...」
「エリック、そろそろ包帯を換えようか」
「ああ」
二人が診療所へ向かったあと、私はもう一度紅茶を淹れなおした。
ー**ー
「エリック、負けたことを根にもってるでしょ」
「そんなわけないだろう」
「でも、いつもより手が焦ってたように見え見えだったけど?」
「それは、」
俺はそこまで話して、不穏な空気を察知した。
(...三人か)
俺は仕切りにしているカーテンを閉める。
「何を、」
「エリックは黙ってて」
診療所の扉が開く。
「今日は診察ですか?」
「...あんたは依頼を聞き入れていると聞いた」
「お話だけでも聞きましょうか」
やはり、『裏』に関する人物のようだ。
「あんたに殺してほしいやつが、」
「断る」
俺は即答だった。
『人は殺さない』。俺の大切な誓いだ。
「ならこの診療所を壊して、めちゃくちゃにしてやる」
「...帰った方が身のためですよ?」
「くっ...」
「カムイ?何か...!」
(しまった!)
メルに近くにあった医療用メスが向けられる。
「...!」
ー*ー
(どうしましょう...)
その刃先はまっすぐとこちらを向き、私の腕を引き裂いた。
「きゃあ...!」
「メル!」
「おい、クソガキ。この娘を無事に解放してほしければ...」
パン!
「ぎゃあ!」
パン!パン!パン!
「ぐわあ!」
私は何が起こったのか、全く分からなかった。
「警官の前でそんなことをするとはいい度胸だな、おまえら」
「エリック、さん...」
その瞬間、三人のうちの一人が悲鳴に近い声で叫んだ。
「まさか、『伝説の刑事』エリックか?...早いところ引こう!」
私を捕まえていた人も、私から手を離して逃げようとしていた。
ガキイン!
でも、その人たちの足元には、見覚えのあるナイフが刺さった。
「...メルに手を出しておいて、無事でいられると思ってるの?」
「悪かった、悪かったから、許してくれえっ!」
カムイの殺気は、いつもよりも怖かった。
私は咄嗟にカムイに抱きつく。
「ダメですよ、カムイ。この方たちは謝ってます。だから...」
「...次があると思うな。次きたら、千倍にして返してやる」
カムイは低い声で唸るように言った。
その人たちは逃げるように帰っていった。
「カムイ、エリックさんの包帯を換えるんですよね。私は向こうに行ってますから...」
戻ろうとしたら、カムイは私にそっと耳打ちした。
「...あとでちゃんと手当てして、そのあとゆっくり話をしよう」
私は震えるのを堪えて、なんとかテーブルに辿り着いた。
(カムイがくるまえに、震えを止めなくては)
ー**ー
またメルに、怪我をさせてしまった。
エリックの包帯を換えながら、どうして何もできなかったのだろうと考えていた。
「...っ!」
「エリック、無茶しすぎだから...。まだ治ってないのに、銃なんて使ったらダメだよ」
「それは、悪かった」
「それに、『伝説の刑事』だってバレちゃったよ?」
「まあ、それはなんとかなるだろう。それより...」
エリックが俺の髪をぐしゃぐしゃにする。
「早くメルの所へ行ってやれ」
「俺がメルのそばにいたら、また怪我をさせてしまうかもしれない...」
俺はそれが嫌でしかたない。
「余計なことは考えずに、行ってみろ。おまえと共に生きると決めた、メルの意思を大切にしてやれ」
「...ありがとう」
俺はエリックの包帯交換を済ませ、急いでリビングへと向かった。
(メルが怖がっているなら、その恐怖を取り除きたい)
だが、俺にできるだろうか。
エリックはああ言ってくれたけど、メルの側にいることが、許されるだろうか...。
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