路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

文字の大きさ
159 / 220
Until the day when I get married.-New dark appearance-

第118話

しおりを挟む
カムイたちからの連絡を受け、俺はパレード及び剣舞が行われる会場に向かっていた。
「...くくっ」
服は騎士団の服装。
顔に十字架の傷跡。
...どうやら探している人物らしかった。
「少しいいだろうか」
「なんでしょう?」
男は苛ついたような口調で話す。
メルやカムイを巻きこまずに済むのなら、それに越したことはない。
「あなたが持っているワイヤーは、何に使うのかと思ってな」
「...ちっ!」
男は走りだす。
「待て!」
男はひたすら走る。
人ごみに紛れられ、とうとう俺は見失ってしまった。
...すまない、カムイ。
すまない、メル。
捕まえられなかった...。
そんな思いを胸に抱えながら、俺は男を一旦諦め二人の元へ向かった。
ー**ー
『待て!』
通信機から入ってきたのは、そんなエリックの声だった。
「エリック?」
『はっ、はあ...』
しばらくして、荒い息づかいが聞こえてきた。
『すまない。逃がしてしまった...』
「気にしないで。怪我はない?」
『...ああ』
声が近くで聞こえる。
「エリックさん、すごい汗です...!」
「メル、すまないな」
「...?」
メルはきょとんとしている。
エリックの顔が知られたことは、正直言って少しまずい。
エリックを見た瞬間、即行逃げてしまう場合がある。
(犯人がきてくれるといいけど...)
「ワイヤーの話を持ち出した瞬間、目つきが変わった。奴で間違いない」
「...分かった」
エリックがそう言うなら、それを信じようと思った。
それならば、犯人がこの近くまできていてもおかしくはないはずだ。
もしかすると、犯行の準備をしているかもしれない。
「...メル、この近くで何でもいいから変わったことはある?」
メルは眼帯を少しだけずらし、一生懸命辺りを見回している。
「えっと...あっちの道に、細い糸があります!」
俺の目には何も見えなかった。
ー*ー
「すまない、俺には何も見えないんだが...」
「俺も見えない」
「近づいたら見えると思います」
私は素早く左眼を隠して、通りの反対側へと二人の手をひいた。
「ここです」
やっぱりそこには、細い糸がぴんと張られていた。
「すごいね、メルは」
カムイがよしよしと頭を撫でてくれた。
(やっぱり褒められるのは嬉しいです...)
「よし、俺が切る」
エリックさんは折り畳み式ナイフをポケットから取り出し、それを切りはじめた。
「あの、少しだけ待っていただけませんか...?」
「分かった」
私は少しだけ左眼が使えるようにして、糸を見た。
(あっちに繋がっているように見えます...あ!)
「カムイ、見つけました!」
「本当?」
「はい!お顔に傷があります」
「俺はここで糸を切ってから追いつく。二人は早く行ってくれ」
「メル、その人の所へ連れていって」
「はい!」
私はカムイと小走りで傷がある男の人の所へ向かった。
ー**ー
結局、メルに手伝わせる形になってしまった。
「ごめんね、メル」
「...話してほしかったです。最近カムイが私に教えてくれなかったことは、この事だったんですよね?」
「そうだよ」
「私には、何もできないと思います。でも、それでも話してほしかったです...」
メルが不安げな表情をしているのが、その声だけで伝わってくる。
(そんな顔をさせたくなかったのに)
「いました、あの人です」
『こちらエリック、ワイヤーは切った。どっち方面へ向かえばいい?』
「えっと、大きな通りの方です」
『了解』
エリックがくるまで待つべきだと思った。
だが、男は新たな武器を取り出した。
「カムイ、あのナイフに細い糸がついてます!」
「しまった、隠し武器だ!」
あれほど気をつけてと言ったのに、ここから見えるお偉いさんは油断している。
「...くっ!」
ー*ー
男がナイフを投げたと同時に、カムイがナイフを投げつけた。
キィィィン!
「なっ...」
カムイはナイフをナイフで弾きかえした。
でもそのナイフはひゅんと音をたて、カムイの方へ飛んでいく。
「カムイ!」
腕がビキビキと痛む。
でも、カムイに傷ついてほしくない。
ひゅん!
「ぁ...」
細い糸が、私にあたった。
「メル!」
閉じかけていた傷口が、また開いた音がした。
ナイフはカムイが止めてくれた。
「きゃあ!」
「なんだ!」
周りが騒ぎになってしまった。
私は痛む腕を押さえ、カムイの方を向いた。
「カムイ、怪我はありませんか?」
「何してるの、メル...」
「そんなお顔をしないでください。私は平気ですから...」
「...」
男は黙ったままこちらを向く。
その時、後ろから聞き覚えのある声がした。
「現行犯だ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「...」
メルが怪我をしている。
もしかすると、前の怪我が悪化したのかもしれない。
カムイが怒りを抑えているのが見える。
「待て!」
俺は迷いなく男を確保しようと動いた。
だが、男の動きは全く読めない。
「そのままそこで止まれ」
「...」
俺が近づこうとした瞬間だった。
「エリックさん、近づいちゃダメです!その人の回りに、細い糸がいっぱいあります!」
メルは左眼を押さえながら俺に力いっぱい訴えた。
しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

処理中です...