路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

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Until the day when I get married.-Light of a new request-

第129話

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「悪かった」
エリックに頭をさげられた。
「そんなに謝らなくていい」
「だが、」
「なれてるから」
そう、なれてる。
「どういうことだ?」
「...なんでもない」
私は椅子にそっと座った。
置いていかれるのは、なれてる。
だって...
《いつもみたいに、いい子で待っててね?》
お母さんもそう言って、ある日突然帰ってこなかったから。
ー*ー
「あの二人、相性よさそうだよね」
「カムイもそう思っていたんですか?」
「ということは、メルも?」
「はい!」
あの二人が話しているとき、二人ともお互いの意見をちゃんと言っているような気がする。
それに、エリックさんは女性が苦手なはずなのに、初対面の時からあんなに仲良く話せている。
だから、決して悪くはないと私は思っていた。
「喧嘩してないといいね」
「はい」
「メル、お願いがあるんだけど...」
「なんでしょう?」
「明日、一緒に花を見に行ってほしいんだ。特に理由はないんだけど、この時季に咲く、とても綺麗な花がある」
「どんなお花なんですか?」
「雨に咲く花だよ」
雨に咲く花...ということは、この時季に一番綺麗に咲く花なのだろうか。
「行きたいです!」
でも、アイリスさんはどうするのだろう?
「明日から数日、エリックは仕事が休みなんだ」
「そうなんですか」
カムイと二人で出掛けるのは、なんだか久しぶりな気がする。
(とても楽しみです)
ー**ー
メルと二人きりになるのは、久しぶりな気がする。
こんなことを言ったら、メルに笑われてしまうだろうか。
「よし、じゃあもう今日は寝よう」
「はい。おやすみなさい」
俺はメルを抱きしめ、そのまま目を閉じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌朝、俺はいつもより早く目が覚めた。
(メルが寝ているということは、まだ六時前か)
俺は隣にいるメルの身体に、そっと聴診器を当てた。
「...」
昨日倒れたので心配だったが、どうやら杞憂だったようだ。
「カムイ...」
「?」
俺はメルの方を見たが、メルの目は閉じられたままだった。
(寝言か?)
「...俺の夢を見てくれているのかな?」
まるで俺がそう言ったのが聞こえているかのように、メルはこくりと頷いた。
(さて、準備しますか)
俺はサンドイッチを作る。
今回行く場所は隣街。
『ディーラー街』とは反対方向だ。
メルは楽しんでくれるだろうか。
...無理をさせていないだろうか。
「おはようございます、カムイ」
ー*ー
「おはよう。よく眠れた?」
「はい!」
とても幸せな夢を見ていたような気がする。
(どんな夢だったでしょう?)
「メル、準備はゆっくりでいいからね」
そう言って微笑むカムイの手には、少し大きめのバスケットが握られていた。
「ごめんなさい、本当は起きて私が作ろうと思っていたのに...」
「気にしないで。今日は俺が作りたい気分だったんだ」
「ありがとうございます」
私は急いで準備をした。
「お待たせしました!」
「馬車を呼んであるから、行こう」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「わあ...」
そこは辺り一面綺麗な花が咲いていた。
「これはなんていうお花ですか?」
「紫陽花だよ」
「紫陽花...色々な色があって、とっても綺麗です!」
「花言葉は色々あるんだけど...よく聞くのは、『元気な女性』とか、『辛抱強い愛情』、かな」
「素敵な花言葉ですね」
私が笑ってカムイを見ると、カムイも微笑みかえしてくれた。
(お出掛けできてよかったです)
ー**ー
俺は少しだけ、嘘をついた。
紫陽花の花言葉で割りと有名なものがもう一つある。
(この花に『移り気』なんていう意味があるって知ったら、メルは驚くかな?)
なんとなく、言いたくなかった。
花の色が変化することからついたその花言葉は、俺はどうしても好きになれなかった。
「そういえば...今日はどうしてここに連れてきてくれたんですか?」
「ここは、家族できたことがある場所なんだ」
ここはまだ両親が健在だった頃、よく訪れていた場所だった。
《カムイ、今年も綺麗に咲いてるわね》
《うん!》
《カムイ、来年もこような》
《うん!》
その『来年』がこなかったことを、なんとなく思い出してしまった。
「悲しそうなお顔をしなくても、私がずっと側にいます」
「...!ごめんね」
「いえ、気にしないでください」
メルは俺の手をきゅっと握ってくれた。
(そういえば...)
「...『一家団欒』」
「?」
「『一家団欒』っていう花言葉もあったなって」
「素敵です!」
メルが嬉しそうに目を細めたのを見て、俺もつられて嬉しくなってきた。
雨の季節は少し苦手に思っていたのだが、メルといればそんなのふきとびそうだ。
「メル」
「はい」
「ありがとう」
咲き誇る紫陽花の前で、俺は普段恥ずかしくてなかなか言えない、めいっぱいの感謝の気持ちを伝えた。
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