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Until the day when I get married.-Light of a new request-
第133話
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「楽しいか?」
「...うん」
エリックがブランコというものをこいでくれている。
少し恥ずかしいけど、なんだか楽しい。
わくわくする。
自分にこんな感情があるなんて、全く知らなかった。
《待っててね》
ふいに、昔のことを思い出す。
ずっと待ってたのに、帰ってこなかった。
そのときエリックが私の耳元でこっそり囁いた。
「何があったかは話さなくていい。だが...俺が側にいることは覚えておけ」
「...分かった」
嬉しい。
恥ずかしい。
話しても、いいのかな。
でも...この人たちは、私を捨てない?
また置いていかれるのは嫌。
でも、離れたくない。
私は私が分からなくなった。
メルやカムイにもつ気持ちとは違うもの。
エリックにもつこのぽかぽかしたもの。
この気持ちは、何?
ー*ー
「お二人とも、お昼御飯にしませんか?」
「いただこう」
「...美味しい」
二人とも黙々と食べている。
お腹が空いていたのか、それともそういう性格なのか...。そんなことを考えていると、カムイが私にこっそり教えてくれた。
「アイリスは今日まで知らなかったけど、エリックは食べる時はだいたい静かだよ」
「そうなんですか」
「うん。でも、人と食べているときに黙っているのは珍しいな」
もしかすると、緊張しているのかもしれない。
私はなんとか二人の緊張を解こうと思った。
「お二人とも、楽しめましたか?」
「ああ。ブランコなんて久しぶりだったからな」
「私ははじめてだったけど、エリックと乗るなら、楽しい...のかもしれない」
「...!ゲホゲホ!」
エリックさんが噎せている。
カムイがポットから紅茶を注ぎ、エリックさんに渡した。
「大丈夫?」
ー**ー
どうやらお互い自分の恋心に気づきはじめているらしい。
ブランコに乗っている間、エリックが何か囁いていたのを見た。
何を言っていたのかは分からないが、アイリスが恥ずかしそうにしているということは、何か嫌なことを言われたわけではないということだ。
(どうすればいいんだろう)
「アイリスさんも飲み物は如何ですか?」
「ほしい」
「分かりました」
アイリスはメルから飲み物を受け取ると、無表情で飲み干していた。
何故メル以上に表情の変化がないのか、気になるところではある。
それに、とある古い新聞記事が頭から離れない。
(まさか、ね)
「カムイ?」
「ごめん、なんでもない」
気づくと、メルが心配そうに俺の顔を覗きこんでいた。
「そろそろ帰ろうか」
「はい」
事前に帰りの馬車の手配をしていたので心配だったが、時計を見ると丁度いい時間になっていた。
「アイリス、もしよければなんだけど...きみのお母さんのこと、もう少し聞かせてくれない?」
「...」
「嫌ならいいから、」
「分かった。ちゃんと話す」
馬車に乗ったあと、アイリスは話をはじめた。
「私は、捨てられた」
ー*ー
捨てられたとは、どういうことなのだろう。
「父親は知らない。でも、お母さんは...私を育ててくれた。優しくしてくれた」
(優しいお母さん...羨ましいです)
私には母との思い出がないからなのか、とても羨ましく思えた。
だが、そんな優しい人が子どもを捨てたりするのだろうか。
「お母さんと最後にあったのは、八年前なんだよね?」
アイリスさんはこくりと頷いた。
「なあ、何か関係があるのか?」
「いや?聞きたかっただけだよ」
(カムイが嘘を言ってます)
最近気づいたことがある。
カムイは嘘を言っているとき、口角が左だけあがる。
今はその状態だった。
(エリックさんたちには、言わない方がいいのかもしれません)
私は敢えて何も言わないことにした。
「待っててって言って...そのあと、帰ってこなかった。私が悪いところがあったのかと思って、持っているものを全部売った。もしかすると、それで帰ってきてくれるかもしれないって、そう思った」
「...そうか」
エリックさんは苦しげな表情でアイリスさんを見つめていた。
「でも、こなかった。私がどんなに望んでも、帰ってきてくれなかった」
その辛さが、私にはよく分かる気がした。
「あと一つ教えてほしいんだけど...銃の扱いは、お母さんに教わったの?」
ー**ー
俺は核心をつく質問をした。
もう後戻りはできない。
「うん。お母さんは銃が上手で、教えてもらった」
...これで、俺の仮説はあたってしまった。
「ありがとう」
「エリックさん、おうちですよ」
「ああ、よく見てなかった。ほら、おりられるか?」
エリックはアイリスをエスコートして、そのまま家に入っていった。
「あの、カムイ」
「どうしたの?」
メルは真剣な表情で俺の方を真っ直ぐ見ている。
「もしかして...アイリスさんのお母様のこと、何か分かったんですか?」
どうしてメルには分かってしまうのだろう。
「どうしてそう思うの?」
「誤魔化さないで、教えてください。カムイが一人で調べる必要はないと思うんです」
「メル...」
メルには話しておくべきだろうか。
俺は迷いながら、その仮説を口にした。
「まだ俺の臆測なんだけど、アイリスの母親は...『秘密警察』、つまり俺のような存在だったかもしれない」
「どういうことですか?」
「話した方がいい?」
「教えてください」
「...分かった」
家路はまだまだ遠い。
その間に、全てを話そう。
「これは、八年前の話なんだけど...」
「...うん」
エリックがブランコというものをこいでくれている。
少し恥ずかしいけど、なんだか楽しい。
わくわくする。
自分にこんな感情があるなんて、全く知らなかった。
《待っててね》
ふいに、昔のことを思い出す。
ずっと待ってたのに、帰ってこなかった。
そのときエリックが私の耳元でこっそり囁いた。
「何があったかは話さなくていい。だが...俺が側にいることは覚えておけ」
「...分かった」
嬉しい。
恥ずかしい。
話しても、いいのかな。
でも...この人たちは、私を捨てない?
また置いていかれるのは嫌。
でも、離れたくない。
私は私が分からなくなった。
メルやカムイにもつ気持ちとは違うもの。
エリックにもつこのぽかぽかしたもの。
この気持ちは、何?
ー*ー
「お二人とも、お昼御飯にしませんか?」
「いただこう」
「...美味しい」
二人とも黙々と食べている。
お腹が空いていたのか、それともそういう性格なのか...。そんなことを考えていると、カムイが私にこっそり教えてくれた。
「アイリスは今日まで知らなかったけど、エリックは食べる時はだいたい静かだよ」
「そうなんですか」
「うん。でも、人と食べているときに黙っているのは珍しいな」
もしかすると、緊張しているのかもしれない。
私はなんとか二人の緊張を解こうと思った。
「お二人とも、楽しめましたか?」
「ああ。ブランコなんて久しぶりだったからな」
「私ははじめてだったけど、エリックと乗るなら、楽しい...のかもしれない」
「...!ゲホゲホ!」
エリックさんが噎せている。
カムイがポットから紅茶を注ぎ、エリックさんに渡した。
「大丈夫?」
ー**ー
どうやらお互い自分の恋心に気づきはじめているらしい。
ブランコに乗っている間、エリックが何か囁いていたのを見た。
何を言っていたのかは分からないが、アイリスが恥ずかしそうにしているということは、何か嫌なことを言われたわけではないということだ。
(どうすればいいんだろう)
「アイリスさんも飲み物は如何ですか?」
「ほしい」
「分かりました」
アイリスはメルから飲み物を受け取ると、無表情で飲み干していた。
何故メル以上に表情の変化がないのか、気になるところではある。
それに、とある古い新聞記事が頭から離れない。
(まさか、ね)
「カムイ?」
「ごめん、なんでもない」
気づくと、メルが心配そうに俺の顔を覗きこんでいた。
「そろそろ帰ろうか」
「はい」
事前に帰りの馬車の手配をしていたので心配だったが、時計を見ると丁度いい時間になっていた。
「アイリス、もしよければなんだけど...きみのお母さんのこと、もう少し聞かせてくれない?」
「...」
「嫌ならいいから、」
「分かった。ちゃんと話す」
馬車に乗ったあと、アイリスは話をはじめた。
「私は、捨てられた」
ー*ー
捨てられたとは、どういうことなのだろう。
「父親は知らない。でも、お母さんは...私を育ててくれた。優しくしてくれた」
(優しいお母さん...羨ましいです)
私には母との思い出がないからなのか、とても羨ましく思えた。
だが、そんな優しい人が子どもを捨てたりするのだろうか。
「お母さんと最後にあったのは、八年前なんだよね?」
アイリスさんはこくりと頷いた。
「なあ、何か関係があるのか?」
「いや?聞きたかっただけだよ」
(カムイが嘘を言ってます)
最近気づいたことがある。
カムイは嘘を言っているとき、口角が左だけあがる。
今はその状態だった。
(エリックさんたちには、言わない方がいいのかもしれません)
私は敢えて何も言わないことにした。
「待っててって言って...そのあと、帰ってこなかった。私が悪いところがあったのかと思って、持っているものを全部売った。もしかすると、それで帰ってきてくれるかもしれないって、そう思った」
「...そうか」
エリックさんは苦しげな表情でアイリスさんを見つめていた。
「でも、こなかった。私がどんなに望んでも、帰ってきてくれなかった」
その辛さが、私にはよく分かる気がした。
「あと一つ教えてほしいんだけど...銃の扱いは、お母さんに教わったの?」
ー**ー
俺は核心をつく質問をした。
もう後戻りはできない。
「うん。お母さんは銃が上手で、教えてもらった」
...これで、俺の仮説はあたってしまった。
「ありがとう」
「エリックさん、おうちですよ」
「ああ、よく見てなかった。ほら、おりられるか?」
エリックはアイリスをエスコートして、そのまま家に入っていった。
「あの、カムイ」
「どうしたの?」
メルは真剣な表情で俺の方を真っ直ぐ見ている。
「もしかして...アイリスさんのお母様のこと、何か分かったんですか?」
どうしてメルには分かってしまうのだろう。
「どうしてそう思うの?」
「誤魔化さないで、教えてください。カムイが一人で調べる必要はないと思うんです」
「メル...」
メルには話しておくべきだろうか。
俺は迷いながら、その仮説を口にした。
「まだ俺の臆測なんだけど、アイリスの母親は...『秘密警察』、つまり俺のような存在だったかもしれない」
「どういうことですか?」
「話した方がいい?」
「教えてください」
「...分かった」
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その間に、全てを話そう。
「これは、八年前の話なんだけど...」
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