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Until the day when I get married.-Light of a new request-
第135話
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ー*ー
翌日、エリックさんが急に仕事が入ってしまったらしく、アイリスさんが遊びにきていた。
流石にアイリスさんの目の前で調べるわけにはいかないので、童話の本を出していた。
「どうしてその子は...」
「『どうしてその子は泣いているの?』だと思います」
「...ありがとう」
文字が読めないアイリスさんは、なんとか読み書きを覚えようとしているらしく、協力してほしいとアイリスに頼まれた。
(頼ってくださるのはとても嬉しいのですが...)
「アイリスさん、本当に私でいいんですか?カムイの方が教え方が上手いと思うのですが...」
「あなたがいい」
「分かりました」
私はちゃんとアイリスさんに教えられているのか、不安になった。
「俺が書きは教えようか?メルが読みを教えて、俺が書きを教えるのはどうだろう?」
私が考えていることを察したのか、カムイがそう言ってくれた。
「分かった」
「読むのと書くの、どっちの方が得意?」
「読む方」
「了解」
そのあとも、私は読み方を教えた。
アイリスさんははじめの頃よりすらすら読めるようになっていた。
「私より覚えるのが早いです!」
「...そう?」
「はい。私はおばあさまに何度も教えてもらわないとできませんでしたから...」
昔のことを思い出して、私は少し懐かしい気分になっていた。
「次は書いていこうか」
ー**ー
二人が仲良く話しているのを聞きながら、俺はメルが自分のすごさに気づいていないことに気づいた。
(字は早く始めても小学校くらいからが平均なんだけど...)
メルは学校にさえ行ったことがないはずだ。
それに、メルのおばあさんが亡くなったのがメルが五歳の頃...。
「...あの、」
「ごめん、少し考え事をしてて...。ここからだったよね?」
今はとにかくアイリスに字を教えることに集中しなければと、俺は気合いを入れなおした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「今日はここまでにしよう」
「分かった」
アイリスはかなり疲れている様子だった。
「紅茶を淹れました」
「ありがとう」
「じゃあ、俺も」
俺はプディングをテーブルに運んだ。
「美味しそうです...!いつの間に作っていたんですか?」
「二人が話してる間に、ちょっと急ぎめで作っただけだよ」
実は二人が本を読んでいる間、俺には特にできることはなく...。
そのため、疲れるであろう二人にせめて甘いものでもと思っただけなのだ。
だが、思っていた以上に二人は喜んでくれたようだ。
「美味しい。初めて食べた」
「私もです。カムイは本当にお料理が上手ですよね」
メルがにこにこしながら俺の方を見ている。
俺はなんだか照れくさくなり、髪をかきあげた。
(メルは本当にいい子だな。アイリスとも打ち解けてるし、このまま時が止まってしまえばいいのに)
暫く談笑していると、扉がいつもの回数ノックされた。
「エリック」
「すまない、ようやく片がついた。...って、プディングか?」
「うん。久しぶりに作ってみたんだ。エリックも食べる?」
「ああ、いただこう」
こうして、四人での楽しいひとときはあっという間に過ぎた。
ー*ー
二人が帰ったあと、カムイがいつも鍵をかけている引き出しを開けた。
「ここに事件の資料をしまっているんだ」
「そうなんですか、知りませんでした...」
「残っていたのは、この破片と靴跡、あとは何かのメモ」
「破片、組立ててもいいですか?」
「いいけど、足りていないかもしれないよ?」
「やらせてください」
三分かけて、私はようやく完成させた。
「これは、薬の瓶でしょうか?」
その小瓶は欠片が足りず、少しかけていた。
「メモはなんとか読める部分は読んだんだけど...『まさかあいつに殺られるなんて。あいつは狂ってる。あいつの名前は...』そこから擦りきれていて、読めない」
犯人がこっそり消した...ということだろうか。
「ということは、犯人は文字が読める人ですよね?」
「うん。でも暗殺者や秘密警察の存在を知る人物なんて、限られる。誰に聞けばいいのか、分からないんだ」
私は話を聞きながら、あるアイデアが浮かんだ。
だが、カムイは賛成してくれるだろうか。
「あの、カムイ」
「どうしたの?」
「メアさんなら、分かるんじゃないでしょうか?」
「...そうか、父親がああだったから...。でも、メアは嫌がるんじゃないかな?」
「たしかに無理やり聞き出すのはいけないことだと思いますが、一応聞いてみるのはいいのではないでしょうか?」
カムイは少し考えるような仕草をしたあと、大きく頷いた。
「手がかりが少ないから、一応聞いてみよう」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「アイリス」
「...どうしたの?」
なんだかエリックの様子がおかしい。
何かを焦っているような、そんな表情。
「正直に教えてほしい」
私は頷いてみせる。
その質問は、一瞬意味が理解できないものだった。
「...きみは、人を殺したのか?」
「そんなことしてない」
「そうなんだよな...疑うようなことを聞いて、悪かった」
私の頭を撫でながら、どこか切羽つまっていた。
「明日の新聞、どうするか」
エリックが何と呟いたのか、私には分からなかった。
翌日、エリックさんが急に仕事が入ってしまったらしく、アイリスさんが遊びにきていた。
流石にアイリスさんの目の前で調べるわけにはいかないので、童話の本を出していた。
「どうしてその子は...」
「『どうしてその子は泣いているの?』だと思います」
「...ありがとう」
文字が読めないアイリスさんは、なんとか読み書きを覚えようとしているらしく、協力してほしいとアイリスに頼まれた。
(頼ってくださるのはとても嬉しいのですが...)
「アイリスさん、本当に私でいいんですか?カムイの方が教え方が上手いと思うのですが...」
「あなたがいい」
「分かりました」
私はちゃんとアイリスさんに教えられているのか、不安になった。
「俺が書きは教えようか?メルが読みを教えて、俺が書きを教えるのはどうだろう?」
私が考えていることを察したのか、カムイがそう言ってくれた。
「分かった」
「読むのと書くの、どっちの方が得意?」
「読む方」
「了解」
そのあとも、私は読み方を教えた。
アイリスさんははじめの頃よりすらすら読めるようになっていた。
「私より覚えるのが早いです!」
「...そう?」
「はい。私はおばあさまに何度も教えてもらわないとできませんでしたから...」
昔のことを思い出して、私は少し懐かしい気分になっていた。
「次は書いていこうか」
ー**ー
二人が仲良く話しているのを聞きながら、俺はメルが自分のすごさに気づいていないことに気づいた。
(字は早く始めても小学校くらいからが平均なんだけど...)
メルは学校にさえ行ったことがないはずだ。
それに、メルのおばあさんが亡くなったのがメルが五歳の頃...。
「...あの、」
「ごめん、少し考え事をしてて...。ここからだったよね?」
今はとにかくアイリスに字を教えることに集中しなければと、俺は気合いを入れなおした。
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「今日はここまでにしよう」
「分かった」
アイリスはかなり疲れている様子だった。
「紅茶を淹れました」
「ありがとう」
「じゃあ、俺も」
俺はプディングをテーブルに運んだ。
「美味しそうです...!いつの間に作っていたんですか?」
「二人が話してる間に、ちょっと急ぎめで作っただけだよ」
実は二人が本を読んでいる間、俺には特にできることはなく...。
そのため、疲れるであろう二人にせめて甘いものでもと思っただけなのだ。
だが、思っていた以上に二人は喜んでくれたようだ。
「美味しい。初めて食べた」
「私もです。カムイは本当にお料理が上手ですよね」
メルがにこにこしながら俺の方を見ている。
俺はなんだか照れくさくなり、髪をかきあげた。
(メルは本当にいい子だな。アイリスとも打ち解けてるし、このまま時が止まってしまえばいいのに)
暫く談笑していると、扉がいつもの回数ノックされた。
「エリック」
「すまない、ようやく片がついた。...って、プディングか?」
「うん。久しぶりに作ってみたんだ。エリックも食べる?」
「ああ、いただこう」
こうして、四人での楽しいひとときはあっという間に過ぎた。
ー*ー
二人が帰ったあと、カムイがいつも鍵をかけている引き出しを開けた。
「ここに事件の資料をしまっているんだ」
「そうなんですか、知りませんでした...」
「残っていたのは、この破片と靴跡、あとは何かのメモ」
「破片、組立ててもいいですか?」
「いいけど、足りていないかもしれないよ?」
「やらせてください」
三分かけて、私はようやく完成させた。
「これは、薬の瓶でしょうか?」
その小瓶は欠片が足りず、少しかけていた。
「メモはなんとか読める部分は読んだんだけど...『まさかあいつに殺られるなんて。あいつは狂ってる。あいつの名前は...』そこから擦りきれていて、読めない」
犯人がこっそり消した...ということだろうか。
「ということは、犯人は文字が読める人ですよね?」
「うん。でも暗殺者や秘密警察の存在を知る人物なんて、限られる。誰に聞けばいいのか、分からないんだ」
私は話を聞きながら、あるアイデアが浮かんだ。
だが、カムイは賛成してくれるだろうか。
「あの、カムイ」
「どうしたの?」
「メアさんなら、分かるんじゃないでしょうか?」
「...そうか、父親がああだったから...。でも、メアは嫌がるんじゃないかな?」
「たしかに無理やり聞き出すのはいけないことだと思いますが、一応聞いてみるのはいいのではないでしょうか?」
カムイは少し考えるような仕草をしたあと、大きく頷いた。
「手がかりが少ないから、一応聞いてみよう」
「はい!」
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「アイリス」
「...どうしたの?」
なんだかエリックの様子がおかしい。
何かを焦っているような、そんな表情。
「正直に教えてほしい」
私は頷いてみせる。
その質問は、一瞬意味が理解できないものだった。
「...きみは、人を殺したのか?」
「そんなことしてない」
「そうなんだよな...疑うようなことを聞いて、悪かった」
私の頭を撫でながら、どこか切羽つまっていた。
「明日の新聞、どうするか」
エリックが何と呟いたのか、私には分からなかった。
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