路地裏のマッチ売りの少女

黒蝶

文字の大きさ
197 / 220
Until the day when I get married.-Light of a new request-

閑話『Questioning of the defendant』

しおりを挟む
「被告人、前へ」
その一言で、私はとても緊張してしまう。
「...はい」
どんなことを言われるのかな。
少し、怖い。
「それでは検察側、質問をはじめてください」
《アイリス目線》
「被告人、あなたが燃やしたんですよね?」
違うよ。
私はそんなことできないから。
「ううん」
「これはあなたが燃やした家の数々です」
「...」
なんだかよく分からないものを見せられた。
私はやっていないのに。
「ここに死体を持ってきてもいいんですよ?」
「私はいいけど、他の人が嫌だと思う。人が死んでいるものなんて、見たがる人はいないと思う」
「では質問を変えます。これはあなたのですよね?」
見せられたのは、全く知らないマッチの箱。
「知らない」
「あなたの体液を調べてもいいですか?」
「分かっ...」
「異議あり!」
エリックが偉い人の話を止めた。
「被告人は無実なのに、何故そのようなことをしなければならないのでしょうか?」
「それは犯人かどうか確認する為に必要だから、」
「では何故アイリスを犯人だと決めつけるような発言ができるのでしょうか?」
「異議を認めます」
偉い人はなんだか怖い顔をしていた。
怒っているのかもしれない。
「被告人!認めてください」
「やってないことは本当にやってない」
私はばっさり言い放った。
「...そんなこと言っていいのか?」
偉い人のうちの一人が私に近づいてこう囁いた。
「おまえのお友だちをこれ以上騙して何になるんだ?」
私は怒ってしまいそうになるのを抑えながら、やっていないと訴え続けた。
「検察側、何を話しているんですか?内緒話なら私も混ぜていただきたいですね。もっとも...被告人は嫌がっているようですが」
「...っ、すいません!」
どうしてこの人たちは、私を犯人にしたいんだろう。
『恐ろしい人が関わっている』とエリックが言ってたのを思い出した。
...もしかして、偉い人も言いくるめられてしまうくらい怖い人なのかな?
「検察側、他に質問はありますか?」
「いえ、ありません。これで終了です。...今のところはね」
あとでまた嫌なことを聞かれるのかと思うと、涙が出そうになった。
本当にやっていないのに、そのことをやったと言われるのがこんなに辛いことだと、私は全く知らなかった。
「続いて...弁護人代理、お願いします」
「分かりました」
エリックからの質問...正直に答えたらいいよね?
嘘をついたりしなくても、いいんだよね?
エリックは私と目が合った瞬間、心配そうな瞳で見つめていた。
「...私は平気だから、質問を」
私はエリックにそれだけ伝えた。
《エリック目線》
どうやらアイリスに、心配していたのを見透かされたらしい。
(きっちりこなさなくてはならないのに、俺がこんな弱腰でどうするんだ)
「では被告人、質問をはじめます」
「うん」
アイリスのいつもと変わらないマイペースさに、俺は心底安心した。
「被告人は、もし目の前で人が倒れていたらどうしますか?」
「他の人に助けを求める。本当は私だけで助けたいけど、私は非力だから」
「分かりました。では、次の質問です」
俺は何問か、アイリスの性格が分かるような質問をした。
アイリスは正直に答え、真面目な態度を崩すことはなかった。
(今のところ順調だな)
「あの!」
「なんですか、証人」
ついにはじまった。
「ここに、真犯人の手がかりがあります」
民衆はざわめきだす。
証拠があるのは事実。
だが、証拠としてとおるかが問題だ。
(ワイヤーがあるから証拠にはなるはずだ)
「弁護人代理の捜査を手伝ったとき、現場から拾ったものを証拠として提出します」
近くに落ちていたワイヤー、破片を拾い集め、メルが組みたててくれた火炎瓶...。
これだけあれば、アイリスでないことは確かなはずだ。
「それが被告人のものだとしたら...」
「もう罪をなすりつけるのは止めてください。被告人がこんなに高価なワイヤーを購入できると本当に思っていらっしゃるのですか?」
「盗んだのかもしれないだろう!」
俺はつい、舌打ちをしてしまった。
「...ふざけるな」
「あ?」
溢れたものは止められない。
「こんなに優しい子が、人の家に火をつける?そんなことできるわけないだろう!いつだって人優先な彼女がそんなことすると思っているのか...?毎日辛い思いをしながら生きてきた彼女がようやく幸せになれるところを、あんたたちは組織の都合だけで邪魔をするのか。...これだけ証拠があるのに、何故現実を見ないんだ...」
俺の言葉はようやく止まった。
民衆が耳を傾けてくれた。
法廷なのに、拍手が巻きおこった。
「エリック...」
アイリスが泣いている。
涙を拭ってやりたいのに、今はそれができない。
俺はもどかしい気持ちでいっぱいだった。
「...弁護人代理、ありがとうございます。時に証人。何か言いたいことがあるようですね?」
カムイが間をおいて、こう切り出した。
「もう一つ、話したいことがあります。...それは、八年前の殺人事件についてです」
(これで一気にたたみかけられればいいが...)
しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

処理中です...