206 / 220
Until the day when I get married.-Light of a new request-
番外編『The story spun with you』ーSelect1,Forestー(前篇)
しおりを挟む
そこは、深い深い森のなか。
私は独りでただただ進む。
ーーおうちに帰りたい。
そんな言葉が聞こえてきて、私は導かれるように森の奥に進んだ。
(独りは怖いです...)
ー*ー
更に奥へ進むと、そこにはお菓子でできた大きな家があった。
(あそこに人が住んでいるのでしょうか?)
「ごめんください」
「...お困りかい、お嬢さん」
その嗄れた声は、どこか聞き覚えがあった。
「えっと、『森で迷子になってしまったんです』」
...変だ。
言葉が勝手に出てくる。
「おまえには、兄妹がいるんじゃないかい?」
「いえ、私は...『私には、兄がいます』」
(どうなっているんですか、これ...!)
そのあとも言葉が止まらず、やむを得ずその家に入ることになった。
足が勝手に動いて止まらないのだ。
そのとき、どす黒い何かが聞こえた。
《しめしめ、こいつも食ってやろう》
...食べる?
ー**ー
「いきなり何をするんだ!」
がしゃがしゃと牢屋を叩くが、全くびくともしない。
「ひっひっひ...グレーテルがくるまで待ってもらうよ、ヘンゼル」
『グレーテル』『牢のなか』『ヘンゼル』...物語のなかに入った、とでもいうのだろうか。
俺は薄汚れた紙切れを見つけた。
【きみには、能力を選択する権利がある。水なんていうのを授けよう】
...それならここから出して、元の世界に還してくれと願うのは、いけないことだろうか。
「さあ、グレーテル。こちらへおいで」
はっと意識を戻すと、そこには見覚えのある可愛らしい少女がいた。
「メル...!」
「『メル』?誰だいそれは」
「『ごめんなさい、おばあさん。グレーテルを探してくれてありがとう』」
...付け焼き刃でも、何もしないよりはいい。
(どうやってメルと話せばいいんだ)
「グレーテル、私はご飯を作ってくるからここでいい子にしてな!」
「は、はい...」
メルはすっかり怯えている。
(メル...)
「大丈夫ですよ、カムイ。私、人の心が覗けるみたいなので...」
(何を言っているんだ?)
「そう言われても、何故かこうなってしまっていたんです」
俺は悟った。
俺に能力が付与されたとあった。
つまり、メルが同じ状態でもおかしくはないということだ。
ー*ー
自分でも分からない。
だが、何故かそれだけは分かる。
「相手の心が見えるなんて、変な気分です」
「...俺にも能力がついたらしいんだ」
「そうなんですか?」
「メル、魔女の心を視てここの鍵を探すことってできる?」
「はい!やってみます」
「...絶対二人で帰ろう」
「はい!ところでカムイの能力って、」
「なにお喋りしてるんだい!」
「『ごめんなさい、お腹が減っているの』ねえ、おばあさん。この牢の鍵はどこにあるんですか?」
口が勝手に動くのをなんとか抑え、目の前のおばあさんに尋ねてみた。
「ふん!そんなの知らなくていいだろう!」
《暖炉の近くにかけてあるのがそうだなんて、この子は気づかないだろうからね!》
(暖炉の近く...)
「ヘンゼル、変なことを吹きこんだりしてないだろうね!」
「何を言っているの、おばあさん。僕はそんなことしないよ」
こういうとき、カムイは本当にすごいと思う。
私ならきっと、慌ててしまって上手く言えない。
「ねえ、おばあさん。ここから出してよ...。僕もお腹が減ったよ」
「仕方ないねえ...」
開けてくれるのかと思ったが、やはり違うようだ。
小窓のような場所が開き、そこからカムイの食事が運びいれられた。
《やっぱり開けてくれるほど優しくないか...》
《この子にはしっかり食べてもらわないといけないからね...》
二人の心の声が聞こえる。
カムイは嬉しそうに頬張っていた。
《こんなので太るような鍛え方してないし。でもまあ、大人しく食べないとストーリーが進まないからね》
心でそう毒づきながら。
ー**ー
メルが不安がっているのがよく分かる。
心を読むことはできないが、メルの表情は強ばっていた。
そのまま夜になり、メルはそっとベッドを抜け出した。
(見つからないように、気をつけて)
「はい...」
メルが小刻みに震える様子を見て、おまじないをかけることにした。
(二人で還って、ご飯を一緒に食べよう。それからいつもどおりに話して、疲れを癒そう?)
「カムイ...」
やはり心のなかが駄々漏れなのはとてつもなく恥ずかしい。
(メルが見つかりませんように)
メルが戻ってくるまで、俺はあることを試してみることにした。
そうこうしているうちに、メルが小走りで戻ってきた。
どうやら魔女には見つからなかったようだ。
「どれで開けられるんでしょうか...?」
「数が多すぎるね...」
(こんなことを頼みたくはないけど...)
「私が本当に持っている力で探してみますね!」
メルは左眼でじっと見ている。
「これです!」
力は健在らしい。
「メル、作戦をたてよう」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こうしてヘンゼルとグレーテルは、悪い魔女を欺き、元の世界に還る方法を探すことにしました。
ヘンゼルの能力も、必ず役に立つでしょう。
グレーテルの勇気も、きっと。
私は独りでただただ進む。
ーーおうちに帰りたい。
そんな言葉が聞こえてきて、私は導かれるように森の奥に進んだ。
(独りは怖いです...)
ー*ー
更に奥へ進むと、そこにはお菓子でできた大きな家があった。
(あそこに人が住んでいるのでしょうか?)
「ごめんください」
「...お困りかい、お嬢さん」
その嗄れた声は、どこか聞き覚えがあった。
「えっと、『森で迷子になってしまったんです』」
...変だ。
言葉が勝手に出てくる。
「おまえには、兄妹がいるんじゃないかい?」
「いえ、私は...『私には、兄がいます』」
(どうなっているんですか、これ...!)
そのあとも言葉が止まらず、やむを得ずその家に入ることになった。
足が勝手に動いて止まらないのだ。
そのとき、どす黒い何かが聞こえた。
《しめしめ、こいつも食ってやろう》
...食べる?
ー**ー
「いきなり何をするんだ!」
がしゃがしゃと牢屋を叩くが、全くびくともしない。
「ひっひっひ...グレーテルがくるまで待ってもらうよ、ヘンゼル」
『グレーテル』『牢のなか』『ヘンゼル』...物語のなかに入った、とでもいうのだろうか。
俺は薄汚れた紙切れを見つけた。
【きみには、能力を選択する権利がある。水なんていうのを授けよう】
...それならここから出して、元の世界に還してくれと願うのは、いけないことだろうか。
「さあ、グレーテル。こちらへおいで」
はっと意識を戻すと、そこには見覚えのある可愛らしい少女がいた。
「メル...!」
「『メル』?誰だいそれは」
「『ごめんなさい、おばあさん。グレーテルを探してくれてありがとう』」
...付け焼き刃でも、何もしないよりはいい。
(どうやってメルと話せばいいんだ)
「グレーテル、私はご飯を作ってくるからここでいい子にしてな!」
「は、はい...」
メルはすっかり怯えている。
(メル...)
「大丈夫ですよ、カムイ。私、人の心が覗けるみたいなので...」
(何を言っているんだ?)
「そう言われても、何故かこうなってしまっていたんです」
俺は悟った。
俺に能力が付与されたとあった。
つまり、メルが同じ状態でもおかしくはないということだ。
ー*ー
自分でも分からない。
だが、何故かそれだけは分かる。
「相手の心が見えるなんて、変な気分です」
「...俺にも能力がついたらしいんだ」
「そうなんですか?」
「メル、魔女の心を視てここの鍵を探すことってできる?」
「はい!やってみます」
「...絶対二人で帰ろう」
「はい!ところでカムイの能力って、」
「なにお喋りしてるんだい!」
「『ごめんなさい、お腹が減っているの』ねえ、おばあさん。この牢の鍵はどこにあるんですか?」
口が勝手に動くのをなんとか抑え、目の前のおばあさんに尋ねてみた。
「ふん!そんなの知らなくていいだろう!」
《暖炉の近くにかけてあるのがそうだなんて、この子は気づかないだろうからね!》
(暖炉の近く...)
「ヘンゼル、変なことを吹きこんだりしてないだろうね!」
「何を言っているの、おばあさん。僕はそんなことしないよ」
こういうとき、カムイは本当にすごいと思う。
私ならきっと、慌ててしまって上手く言えない。
「ねえ、おばあさん。ここから出してよ...。僕もお腹が減ったよ」
「仕方ないねえ...」
開けてくれるのかと思ったが、やはり違うようだ。
小窓のような場所が開き、そこからカムイの食事が運びいれられた。
《やっぱり開けてくれるほど優しくないか...》
《この子にはしっかり食べてもらわないといけないからね...》
二人の心の声が聞こえる。
カムイは嬉しそうに頬張っていた。
《こんなので太るような鍛え方してないし。でもまあ、大人しく食べないとストーリーが進まないからね》
心でそう毒づきながら。
ー**ー
メルが不安がっているのがよく分かる。
心を読むことはできないが、メルの表情は強ばっていた。
そのまま夜になり、メルはそっとベッドを抜け出した。
(見つからないように、気をつけて)
「はい...」
メルが小刻みに震える様子を見て、おまじないをかけることにした。
(二人で還って、ご飯を一緒に食べよう。それからいつもどおりに話して、疲れを癒そう?)
「カムイ...」
やはり心のなかが駄々漏れなのはとてつもなく恥ずかしい。
(メルが見つかりませんように)
メルが戻ってくるまで、俺はあることを試してみることにした。
そうこうしているうちに、メルが小走りで戻ってきた。
どうやら魔女には見つからなかったようだ。
「どれで開けられるんでしょうか...?」
「数が多すぎるね...」
(こんなことを頼みたくはないけど...)
「私が本当に持っている力で探してみますね!」
メルは左眼でじっと見ている。
「これです!」
力は健在らしい。
「メル、作戦をたてよう」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こうしてヘンゼルとグレーテルは、悪い魔女を欺き、元の世界に還る方法を探すことにしました。
ヘンゼルの能力も、必ず役に立つでしょう。
グレーテルの勇気も、きっと。
0
あなたにおすすめの小説
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
差し出された毒杯
しろねこ。
恋愛
深い森の中。
一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。
「あなたのその表情が見たかった」
毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。
王妃は少女の美しさが妬ましかった。
そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。
スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。
お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。
か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。
ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。
同名キャラで複数の作品を書いています。
立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。
ところどころリンクもしています。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる