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約束のスピカ
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流山瞬の葬儀はごく少人数で執り行われた。
俺なんか入れないんじゃないかと思っていたのに、両親が俺をあっさり中に入れてくれる。
「そちらにどうぞ」
「すみません」
こんなことをしても意味がないことは知っている。
それでも、家族の顔を見られただけで前進だ。
「今回は誠に申し訳ありません」
「いえ。あの子にはもっと頑張ってほしかったんですけどね…」
焼香だけあげに来た校長と、虐待していた可能性が高い遺族。
俺から見た真実を叫びたくなるのを必死に抑え、なんとか参列しているのがばれないように警戒した。
本来であれば今日も学園内で授業をしなければならないところを、後輩教員たちと副校長のおかげで抜けられたのだ。
全てが終わり、帰ろうとしたところで小さな子どもを抱きあげる流山の家族が話しているのを聞いてしまった。
「まさか自分で死ぬなんてね」
「残念だよ。もっと教育してやらないといけなかったのに」
「いいじゃない。私たちにはもうこんなに可愛い天使がいるんだから」
【あの家に可愛い子どもがきた】…その意味を今更知ることになるなんて思っていなかった。
涙ひとつ見せないのは気丈に振る舞っているからだろうと思っていたのに、本心からいなくなって喜んでいる声がする。
喪服スーツのまま天文部室へ入って気づいたのは、今朝は日記を読んでいないということだ。
【噂を倒す】
「なんで流山のことだけ変わったんだ?…俺のせいなのか」
関わったから、ちゃんと話さなかったから…また涙が出そうになったとき、部屋に鑑識と思わしき人物がやってきた。
「室星先生でしょうか?」
「そうですが…」
「あなたにだけはお見せしておかなくてはと思ったんです。…遺体の傍らにこれが置いてありました」
袋の中には血がべっとりついた封筒と手紙が入っていて、中にははっきりした綺麗な字でこう書かれていた。
【先生、ごめんなさい】
もう帰ってこない寂しそうな表情を思い出すと、胸が苦しくなる。
「…警察に話したら、いじめについて調べてもらえますか?」
「いじめ?どういうことですか?」
流山の体にあった傷が日に日に増えていたことを話すと、鑑識は顔をしかめる。
「そんなことがあったなんて…。たしかに1度児童相談所に連絡はきていたみたいですけど、それ以上のことは知らなかったんです。
証言してくれそうな方はいらっしゃいますか?」
「煙草の痕は俺しか見ていませんが、何人かの生徒から暴力をふるわれているようだと話を聞いていました。…俺の力が及ばなかったんです」
「すぐに他の捜査官たちにも知らせます」
本当のことが分からないままでもいい。
分かったところで流山が俺に笑いかけてくれることはもうないのだから。
だが、どれだけ酷い目に遭わされていたか誰かに知っていてほしい。
それに耐え続け、限界まで踏ん張った人を責めないでほしいだけなのだ。
先程見た言葉が頭から離れない。
「…謝るのは俺の方だ」
未来予知日記を過信していたようだ。
理不尽なことがあっても、という先代の言葉の意味を理解した。
心に穴が開いたまま、そのまま部屋に籠もる。
目を閉じて思い出すのは、ある日の小さな出来事だった。
俺なんか入れないんじゃないかと思っていたのに、両親が俺をあっさり中に入れてくれる。
「そちらにどうぞ」
「すみません」
こんなことをしても意味がないことは知っている。
それでも、家族の顔を見られただけで前進だ。
「今回は誠に申し訳ありません」
「いえ。あの子にはもっと頑張ってほしかったんですけどね…」
焼香だけあげに来た校長と、虐待していた可能性が高い遺族。
俺から見た真実を叫びたくなるのを必死に抑え、なんとか参列しているのがばれないように警戒した。
本来であれば今日も学園内で授業をしなければならないところを、後輩教員たちと副校長のおかげで抜けられたのだ。
全てが終わり、帰ろうとしたところで小さな子どもを抱きあげる流山の家族が話しているのを聞いてしまった。
「まさか自分で死ぬなんてね」
「残念だよ。もっと教育してやらないといけなかったのに」
「いいじゃない。私たちにはもうこんなに可愛い天使がいるんだから」
【あの家に可愛い子どもがきた】…その意味を今更知ることになるなんて思っていなかった。
涙ひとつ見せないのは気丈に振る舞っているからだろうと思っていたのに、本心からいなくなって喜んでいる声がする。
喪服スーツのまま天文部室へ入って気づいたのは、今朝は日記を読んでいないということだ。
【噂を倒す】
「なんで流山のことだけ変わったんだ?…俺のせいなのか」
関わったから、ちゃんと話さなかったから…また涙が出そうになったとき、部屋に鑑識と思わしき人物がやってきた。
「室星先生でしょうか?」
「そうですが…」
「あなたにだけはお見せしておかなくてはと思ったんです。…遺体の傍らにこれが置いてありました」
袋の中には血がべっとりついた封筒と手紙が入っていて、中にははっきりした綺麗な字でこう書かれていた。
【先生、ごめんなさい】
もう帰ってこない寂しそうな表情を思い出すと、胸が苦しくなる。
「…警察に話したら、いじめについて調べてもらえますか?」
「いじめ?どういうことですか?」
流山の体にあった傷が日に日に増えていたことを話すと、鑑識は顔をしかめる。
「そんなことがあったなんて…。たしかに1度児童相談所に連絡はきていたみたいですけど、それ以上のことは知らなかったんです。
証言してくれそうな方はいらっしゃいますか?」
「煙草の痕は俺しか見ていませんが、何人かの生徒から暴力をふるわれているようだと話を聞いていました。…俺の力が及ばなかったんです」
「すぐに他の捜査官たちにも知らせます」
本当のことが分からないままでもいい。
分かったところで流山が俺に笑いかけてくれることはもうないのだから。
だが、どれだけ酷い目に遭わされていたか誰かに知っていてほしい。
それに耐え続け、限界まで踏ん張った人を責めないでほしいだけなのだ。
先程見た言葉が頭から離れない。
「…謝るのは俺の方だ」
未来予知日記を過信していたようだ。
理不尽なことがあっても、という先代の言葉の意味を理解した。
心に穴が開いたまま、そのまま部屋に籠もる。
目を閉じて思い出すのは、ある日の小さな出来事だった。
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