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約束のスピカ
問5
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ずっと部屋にいると時間感覚がない。
久しぶりに外に行ってみると、隣の校舎から生徒たちがわいわい話している声がする。
僕はあんなふうにできなかった社会不適合者だ。
人付き合いが苦手で、いつも避けてきた。
先生以外と話すのは難しいと思っていたんだ。
「あ、あの、これ…」
滅多に人が来ない旧校舎にやってきた人に話しかけてみたけど、やっぱり視えていないみたいだった。
今日は珍しくおかげさんにも会っていない。
どうしようか迷っていると、前から人間じゃなさそうな見た目の何かが歩いてきた。
《オマエ、美味ソウダナ》
『話し方が変だと思ったら、多分それは人間じゃない。やっつけちゃって大丈夫だよ』
おかげさんの言葉どおりなら、対応はこれで良いはずだ。
「…僕のこと、食べるつもり?」
包丁を構えると、相手ががばっと襲いかかってきた。
《いたダキマす!》
「それなら切る」
みじん切りの要領で包丁を動かすと、相手は悲鳴をあげてその場に倒れた。
念のため包丁の先でつんつんしてみたけど、ちゃんと気絶させられてるみたいだ。
「これで、色々なものを切れるのかな…」
たとえば、廊下で話している男子生徒の後ろにひっついているもの。
たとえば、教師に怒られて泣きそうになっている生徒から出ている真っ黒いもの。
たとえば、人に悪さをしようとしている何か。
《久しぶりに来てみたら…君、強くなったね》
「本当?」
《本当。俺は影がある場所ならどこでも行けるけど、君みたいに学園中をまわれるわけじゃないんだ。…外に出たい?》
「ううん。僕にはここでの生活が合ってるみたいだから」
《外の世界って怖いもんね。じゃあ、俺はこいつを引き取っていくから》
おかげさんはそう言ってそのまま消えていった。
…そういえば、学園から出られないってどういうことだろう。
生徒が登校しきった校門に近づいて手をのばすと、ばちっと嫌な音をたててはね返された。
存在ごと消えるという意味で出られないわけじゃなくて、物理的に結界みたいなものに邪魔されて出られないみたいだ。
「…いっそ、消してくれればよかったのかもしれない」
先生に謝りたいけど、合わせる顔がない。
そもそも、視えていないであろう人にどうやって伝えればいいんだろう。
持っていた図鑑を広げると、どこからか紅葉の葉が落ちてくる。
「もう秋なんだね」
紅葉といえば、初めて猫さんに会ったときもこんな日だった。
『どうしたの?…そっか。怪我、してるんだね』
急いで手当てすると、猫さんはにゃんとひと鳴きした。
人懐っこい猫さんだと思ったのは覚えてる。
その日は先生が用事でいなくて、朝のホームルーム以外旧校舎にいた。
退屈だったから、空き教室に入ってきた落ち葉で遊んだ。
あの猫さんが妖だったなら、僕に合わせてくれていたのかもしれない。
「…猫さん、探してみようかな」
久しぶりに外に行ってみると、隣の校舎から生徒たちがわいわい話している声がする。
僕はあんなふうにできなかった社会不適合者だ。
人付き合いが苦手で、いつも避けてきた。
先生以外と話すのは難しいと思っていたんだ。
「あ、あの、これ…」
滅多に人が来ない旧校舎にやってきた人に話しかけてみたけど、やっぱり視えていないみたいだった。
今日は珍しくおかげさんにも会っていない。
どうしようか迷っていると、前から人間じゃなさそうな見た目の何かが歩いてきた。
《オマエ、美味ソウダナ》
『話し方が変だと思ったら、多分それは人間じゃない。やっつけちゃって大丈夫だよ』
おかげさんの言葉どおりなら、対応はこれで良いはずだ。
「…僕のこと、食べるつもり?」
包丁を構えると、相手ががばっと襲いかかってきた。
《いたダキマす!》
「それなら切る」
みじん切りの要領で包丁を動かすと、相手は悲鳴をあげてその場に倒れた。
念のため包丁の先でつんつんしてみたけど、ちゃんと気絶させられてるみたいだ。
「これで、色々なものを切れるのかな…」
たとえば、廊下で話している男子生徒の後ろにひっついているもの。
たとえば、教師に怒られて泣きそうになっている生徒から出ている真っ黒いもの。
たとえば、人に悪さをしようとしている何か。
《久しぶりに来てみたら…君、強くなったね》
「本当?」
《本当。俺は影がある場所ならどこでも行けるけど、君みたいに学園中をまわれるわけじゃないんだ。…外に出たい?》
「ううん。僕にはここでの生活が合ってるみたいだから」
《外の世界って怖いもんね。じゃあ、俺はこいつを引き取っていくから》
おかげさんはそう言ってそのまま消えていった。
…そういえば、学園から出られないってどういうことだろう。
生徒が登校しきった校門に近づいて手をのばすと、ばちっと嫌な音をたててはね返された。
存在ごと消えるという意味で出られないわけじゃなくて、物理的に結界みたいなものに邪魔されて出られないみたいだ。
「…いっそ、消してくれればよかったのかもしれない」
先生に謝りたいけど、合わせる顔がない。
そもそも、視えていないであろう人にどうやって伝えればいいんだろう。
持っていた図鑑を広げると、どこからか紅葉の葉が落ちてくる。
「もう秋なんだね」
紅葉といえば、初めて猫さんに会ったときもこんな日だった。
『どうしたの?…そっか。怪我、してるんだね』
急いで手当てすると、猫さんはにゃんとひと鳴きした。
人懐っこい猫さんだと思ったのは覚えてる。
その日は先生が用事でいなくて、朝のホームルーム以外旧校舎にいた。
退屈だったから、空き教室に入ってきた落ち葉で遊んだ。
あの猫さんが妖だったなら、僕に合わせてくれていたのかもしれない。
「…猫さん、探してみようかな」
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