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約束のスピカ
問6
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探せばすぐ会えると思っていたのに、猫さんはなかなか見つからない。
「猫さん…」
たまたまここにいただけなのかもしれない。
僕みたいに地縛霊だったなら別だけど、そうじゃないなら外の世界で自由に生きられるはずだ。
…そう思ったら、今の自分が不思議に思えた。
死んだのに生きてて、寧ろ今の方が気が楽だなんて…やっぱり僕は普通の世界で生きるのが向いていなかったみたいだ。
「よって、この公式を使うと…」
聞き覚えのある声がして思わず隠れてしまう。
生きてるときの癖ってなかなか抜けないみたいで、いつの間にか理科準備室まで来ていた。
先生の授業だけはちゃんと出ていたから、少しだけ懐かしく感じてしまう。
『流山、ちょっと来い』
『な、なに?』
その日見せられたのは、あんまりグロテスクじゃない生物の図形だった。
『これなら大丈夫そうか?』
『…5分くらいなら』
どうしても図を見ていると気持ち悪くなって、生物分野の問題だけはいつも白紙で出していた。
なんでやってないんだって怒られるのかと思ったら、先生はいくつもイラストを描いて用意してくれていたのだ。
『先生、またキャラメル食べてるの?』
『嫌なことがあったときや考え事してたとき、あとは食べたいときに食べる』
『本当に好きなんだね』
僕も時々分けてもらって、一緒に食べることがあった。
「…久しぶりに食べたくなっちゃったな」
《何を?》
いきなり現れたおかげさんに吃驚したけど、驚かせたと思っていないのかわくわくした様子で近づいてくる。
「ある人が用意してくれるお弁当が美味しかったんだ」
《へえ…どんなお弁当だったの?》
「だし巻き卵が美味しかった。色んなものを作ってきてくれて、1番楽しい食事の時間だったかもしれない」
1番思い出せるのはハンバーグが入っていて、スープまでついていたお弁当だ。
『今日こそ完食してほしい』
『…頑張る。いただきます』
殴られたり蹴られたりしている影響からか、どうしても食欲がないときもあった。
だけど、家で残飯をあさるよりずっと温かい時間を過ごせていたんだ。
『先生が一緒に食べてくれるならいいよ』
余り物をあげると言われて咄嗟にそう答えたら、毎日余ったから試食してほしいってお弁当を作ってくれるようになった。
毎日美味しいご飯を食べながら、星の話をする。
その時間だけが僕を僕でいさせてくれた。
《いいなあ…そんなに心がこもったものなら食べてみたい》
「おかげさんはそういうことなかったの?」
《恋人はいた。時々料理を作ってきてくれて、お弁当交換をしてたよ》
なかなか自分のことを話してくれないおかげさんから聞けたのは、星みたいなきらきらした話だった。
なんとなくだけど、僕とおかげさんは少し似ている気がする。
……いつか、もう少しおかげさんとも仲良くなれるかな。
「猫さん…」
たまたまここにいただけなのかもしれない。
僕みたいに地縛霊だったなら別だけど、そうじゃないなら外の世界で自由に生きられるはずだ。
…そう思ったら、今の自分が不思議に思えた。
死んだのに生きてて、寧ろ今の方が気が楽だなんて…やっぱり僕は普通の世界で生きるのが向いていなかったみたいだ。
「よって、この公式を使うと…」
聞き覚えのある声がして思わず隠れてしまう。
生きてるときの癖ってなかなか抜けないみたいで、いつの間にか理科準備室まで来ていた。
先生の授業だけはちゃんと出ていたから、少しだけ懐かしく感じてしまう。
『流山、ちょっと来い』
『な、なに?』
その日見せられたのは、あんまりグロテスクじゃない生物の図形だった。
『これなら大丈夫そうか?』
『…5分くらいなら』
どうしても図を見ていると気持ち悪くなって、生物分野の問題だけはいつも白紙で出していた。
なんでやってないんだって怒られるのかと思ったら、先生はいくつもイラストを描いて用意してくれていたのだ。
『先生、またキャラメル食べてるの?』
『嫌なことがあったときや考え事してたとき、あとは食べたいときに食べる』
『本当に好きなんだね』
僕も時々分けてもらって、一緒に食べることがあった。
「…久しぶりに食べたくなっちゃったな」
《何を?》
いきなり現れたおかげさんに吃驚したけど、驚かせたと思っていないのかわくわくした様子で近づいてくる。
「ある人が用意してくれるお弁当が美味しかったんだ」
《へえ…どんなお弁当だったの?》
「だし巻き卵が美味しかった。色んなものを作ってきてくれて、1番楽しい食事の時間だったかもしれない」
1番思い出せるのはハンバーグが入っていて、スープまでついていたお弁当だ。
『今日こそ完食してほしい』
『…頑張る。いただきます』
殴られたり蹴られたりしている影響からか、どうしても食欲がないときもあった。
だけど、家で残飯をあさるよりずっと温かい時間を過ごせていたんだ。
『先生が一緒に食べてくれるならいいよ』
余り物をあげると言われて咄嗟にそう答えたら、毎日余ったから試食してほしいってお弁当を作ってくれるようになった。
毎日美味しいご飯を食べながら、星の話をする。
その時間だけが僕を僕でいさせてくれた。
《いいなあ…そんなに心がこもったものなら食べてみたい》
「おかげさんはそういうことなかったの?」
《恋人はいた。時々料理を作ってきてくれて、お弁当交換をしてたよ》
なかなか自分のことを話してくれないおかげさんから聞けたのは、星みたいなきらきらした話だった。
なんとなくだけど、僕とおかげさんは少し似ている気がする。
……いつか、もう少しおかげさんとも仲良くなれるかな。
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