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追憶のシグナル
12件目
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「ここか」
幸い、引換券は本人が持っていた。
死ぬときに握りしめたままだったから、ずっとポケットに入れていたらしい。
「すみません、花束を取りに来たんですけどありますか?」
「はい。…おまたせしました、こちらになります」
小さくて可愛らしいテディベアが真ん中にちょこんと座っている、白い花が周りを覆っている花束。
「よかったな、まだあって」
《ああ。あとは彼女の家に行くだけだ》
俺だけで行くと伝えてはみたものの、詩乃先輩に最後まで協力させてほしいと押し切られてしまった。
「…桜良、聞こえる?」
耳元でかつかつと音がしてほっとする。
「どっちに行ったら近道かな?」
ふたりに聞こえないように尋ねると、短い言葉が返ってきた。
『左。そこから一本道』
「ありがとう。…こっちの方が近道みたいだ」
《この道、毎日使ってたな。懐かしい…》
別の学校の制服を身に纏った少年は、今だけは噂から解放された状態でいる。
全部桜良のおかげだけど、できるだけ自分のことを知られたくないから黙っていてほしいと言われた。
指示どおりに歩いていると、あっという間に谷津という札がかかった家に辿り着く。
《真澄》
どうやらほうきを持っている子が探し人ということで間違いないようだ。
不審者だと思われてもいい。なんとか直接想いを届けてやりたいと思っている。
「あの、すみません」
「…?はい」
見た目がチャラ男だからか、警戒されてしまったようだ。
「谷津真澄さんでしょうか?」
「そうですけど…あなたたち誰なんですか?」
「俺は、あなたの彼氏さんの友人です。…岩倉さんから、あなたに贈り物です」
ブーケを渡すと、目の前の少女の瞳が揺れる。
動揺しているのか、ただ驚いているのか…しばらく沈黙が流れたが、やがて谷津真澄はぽろぽろと涙を零しはじめた。
「ごめんなさい。突然のことで、まだ…」
「俺の方こそ申し訳ないです。ただ、どうしてもお渡ししたかったんです」
ハンカチを差し出すと、岩倉が俯き申し訳なさそうに呟く。
《真澄、ごめん。俺が誕生日に渡せていたら、直接手渡しできたのに》
「…本当は誕生日に渡す予定だったみたいだ」
「え?」
詩乃先輩が唐突に岩倉の言葉を伝えはじめる。
谷津さんは混乱したように先輩へ問いかけた。
「からかっているんですか?それとも、慰めようとしているんですか?」
「どっちでもないよ。信じるか信じないかはあなた次第だ。…今ここに、岩倉修二が立っていると言ったら信じてくれるか?」
視えない人間に信じてもらうのは難しい。
彼女はどうだろう。僅かな可能性を信じてくれるだろうか。
幸い、引換券は本人が持っていた。
死ぬときに握りしめたままだったから、ずっとポケットに入れていたらしい。
「すみません、花束を取りに来たんですけどありますか?」
「はい。…おまたせしました、こちらになります」
小さくて可愛らしいテディベアが真ん中にちょこんと座っている、白い花が周りを覆っている花束。
「よかったな、まだあって」
《ああ。あとは彼女の家に行くだけだ》
俺だけで行くと伝えてはみたものの、詩乃先輩に最後まで協力させてほしいと押し切られてしまった。
「…桜良、聞こえる?」
耳元でかつかつと音がしてほっとする。
「どっちに行ったら近道かな?」
ふたりに聞こえないように尋ねると、短い言葉が返ってきた。
『左。そこから一本道』
「ありがとう。…こっちの方が近道みたいだ」
《この道、毎日使ってたな。懐かしい…》
別の学校の制服を身に纏った少年は、今だけは噂から解放された状態でいる。
全部桜良のおかげだけど、できるだけ自分のことを知られたくないから黙っていてほしいと言われた。
指示どおりに歩いていると、あっという間に谷津という札がかかった家に辿り着く。
《真澄》
どうやらほうきを持っている子が探し人ということで間違いないようだ。
不審者だと思われてもいい。なんとか直接想いを届けてやりたいと思っている。
「あの、すみません」
「…?はい」
見た目がチャラ男だからか、警戒されてしまったようだ。
「谷津真澄さんでしょうか?」
「そうですけど…あなたたち誰なんですか?」
「俺は、あなたの彼氏さんの友人です。…岩倉さんから、あなたに贈り物です」
ブーケを渡すと、目の前の少女の瞳が揺れる。
動揺しているのか、ただ驚いているのか…しばらく沈黙が流れたが、やがて谷津真澄はぽろぽろと涙を零しはじめた。
「ごめんなさい。突然のことで、まだ…」
「俺の方こそ申し訳ないです。ただ、どうしてもお渡ししたかったんです」
ハンカチを差し出すと、岩倉が俯き申し訳なさそうに呟く。
《真澄、ごめん。俺が誕生日に渡せていたら、直接手渡しできたのに》
「…本当は誕生日に渡す予定だったみたいだ」
「え?」
詩乃先輩が唐突に岩倉の言葉を伝えはじめる。
谷津さんは混乱したように先輩へ問いかけた。
「からかっているんですか?それとも、慰めようとしているんですか?」
「どっちでもないよ。信じるか信じないかはあなた次第だ。…今ここに、岩倉修二が立っていると言ったら信じてくれるか?」
視えない人間に信じてもらうのは難しい。
彼女はどうだろう。僅かな可能性を信じてくれるだろうか。
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