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追憶のシグナル
13件目
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「修二がここにいる?そんなはずは、」
「どうして俺たちがここまで来られたと思う?」
「あ…」
初対面の相手の家を知っているのは、ストーカーしていた場合か、知っている人に案内してもらった場合だけだ。
前者なら恋人の名前まで知るはずはない。
「本当に修二が…」
《真澄、約束守れなくてごめん。できることならもっと一緒にいたかった》
「岩倉さんが、約束守れなくてごめん、もっと一緒にいたかったって言ってます」
「私のお祝い、忘れないでくれただけでいい。一緒にいられるだけで、幸せだったのに……どうして」
彼女が悲しんでいるのを見ると胸が痛くなる。
俺は死ねないから、桜良を置いて死ぬことは絶対にない。
それでも、いつか別れがきてしまうならきっとこの苦しみを味わうことになる…そんなことをぼんやり考えていた。
《そういえば、死んだのは俺だけなのか?》
「周りの何人かも巻きこまれたけど、死んだのはおまえだけだ。…近くにいた子どもをかばったんだろ?」
「え…。それ、どういうことですか?」
詩乃先輩はある記事を見せながら説明しはじめた。
「ここに載ってる証言、あの場にいた男の子の母親のものなんだ。
『お兄ちゃんは僕のヒーローです』って話してたらしい。骨折はしたらしいが、命に別条はないと聞いた」
《そっか、よかった…。俺だけで終わったならそれでいい》
「自分だけですんだならよかったって言ってる。…素敵な彼氏さんだったんだね」
彼女からすれば複雑だろう。
犯人は軽傷の上、全く反省していない。
思ったよりスピードが出たのが悪いと供述していると記事で読んだ。
《俺のことを忘れてもいい。真澄が笑っていてくれることが俺の救いだから》
「自分のことを忘れてもいい、あなたが笑っていてくれることが救いだって」
「…忘れられるわけないでしょ?もう少しで渡せたのに、結局行けないまま終わるし」
「何の話ですか?」
谷津さんは、ポケットに仕舞っていた手作りのお守り袋のようなものを取り出す。
中から出てきたのは、2枚のチケットだ。
《それ、俺が観たかった映画のプレミアチケット!?入手困難だったのに、どうやって…》
「彼氏さん、びっくりしてますよ。入手困難なのにって」
「懸賞に応募しまくって当てたの。…本当はあの事故の日に渡すつもりだった」
谷津さんの目には涙が浮かんでいる。
岩倉も驚いた様子で、申し訳なさそうに頭を撫でようとした。
「……!今、修二…?」
「死霊は生者に物理的に鑑賞できない。けど、今あなたの頭を撫でようとしたのは岩倉修二だ」
《…こんな簡単なこともできないのか》
「修二……」
通訳しなくても大丈夫ならふたりきりにしてやりたかった。
困った顔をしている岩倉に、俺は手を差し出す。
「ちょっと握って。あくまで一時的ではあるけど、なんとかできるかもしれない」
滅多にやらない方法だろうけど、何をしようとしているか先輩には分かったらしい。
「私にも協力させてくれ。こんなに平和な方法、滅多に使えないから」
「どうして俺たちがここまで来られたと思う?」
「あ…」
初対面の相手の家を知っているのは、ストーカーしていた場合か、知っている人に案内してもらった場合だけだ。
前者なら恋人の名前まで知るはずはない。
「本当に修二が…」
《真澄、約束守れなくてごめん。できることならもっと一緒にいたかった》
「岩倉さんが、約束守れなくてごめん、もっと一緒にいたかったって言ってます」
「私のお祝い、忘れないでくれただけでいい。一緒にいられるだけで、幸せだったのに……どうして」
彼女が悲しんでいるのを見ると胸が痛くなる。
俺は死ねないから、桜良を置いて死ぬことは絶対にない。
それでも、いつか別れがきてしまうならきっとこの苦しみを味わうことになる…そんなことをぼんやり考えていた。
《そういえば、死んだのは俺だけなのか?》
「周りの何人かも巻きこまれたけど、死んだのはおまえだけだ。…近くにいた子どもをかばったんだろ?」
「え…。それ、どういうことですか?」
詩乃先輩はある記事を見せながら説明しはじめた。
「ここに載ってる証言、あの場にいた男の子の母親のものなんだ。
『お兄ちゃんは僕のヒーローです』って話してたらしい。骨折はしたらしいが、命に別条はないと聞いた」
《そっか、よかった…。俺だけで終わったならそれでいい》
「自分だけですんだならよかったって言ってる。…素敵な彼氏さんだったんだね」
彼女からすれば複雑だろう。
犯人は軽傷の上、全く反省していない。
思ったよりスピードが出たのが悪いと供述していると記事で読んだ。
《俺のことを忘れてもいい。真澄が笑っていてくれることが俺の救いだから》
「自分のことを忘れてもいい、あなたが笑っていてくれることが救いだって」
「…忘れられるわけないでしょ?もう少しで渡せたのに、結局行けないまま終わるし」
「何の話ですか?」
谷津さんは、ポケットに仕舞っていた手作りのお守り袋のようなものを取り出す。
中から出てきたのは、2枚のチケットだ。
《それ、俺が観たかった映画のプレミアチケット!?入手困難だったのに、どうやって…》
「彼氏さん、びっくりしてますよ。入手困難なのにって」
「懸賞に応募しまくって当てたの。…本当はあの事故の日に渡すつもりだった」
谷津さんの目には涙が浮かんでいる。
岩倉も驚いた様子で、申し訳なさそうに頭を撫でようとした。
「……!今、修二…?」
「死霊は生者に物理的に鑑賞できない。けど、今あなたの頭を撫でようとしたのは岩倉修二だ」
《…こんな簡単なこともできないのか》
「修二……」
通訳しなくても大丈夫ならふたりきりにしてやりたかった。
困った顔をしている岩倉に、俺は手を差し出す。
「ちょっと握って。あくまで一時的ではあるけど、なんとかできるかもしれない」
滅多にやらない方法だろうけど、何をしようとしているか先輩には分かったらしい。
「私にも協力させてくれ。こんなに平和な方法、滅多に使えないから」
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