63 / 71
追憶のシグナル
第12項
しおりを挟む
翌朝、何事もなかったように登校すると、おさげ眼鏡の少女が教室に佇んでいた。
「……いる」
「今は俺も視えてる。なんでだろ?波長が合ってきたとか?」
陽向の視え方は時々不安定だ。
本人曰く、波長が合ったり満月の夜はいつも以上に視えるらしい。
一般的に満月の夜霊力が強くなり、新月の夜弱くなる。
それは体質に関しても同じで、しかも怪異や妖の力も同じ条件で左右されるらしい。
「あの子に話しかけたら、」
「陽向、おはよう!」
「あ、ああ。おはよう」
「岡副君、今日は何飲んでるの?」
「スポーツドリンクだよ」
人気者の陽向から距離をとって、おさげ眼鏡の少女の表情を確認してみる。
少し離れた場所から見た感じでは、どう言葉で表せばいいのか分からないものだった。
物憂げにも見えるし、憎悪のようなものを隠しているようにも見える。
解決するには、やっぱり直接話してみるしかなさそうだ。
「…あの、放課後話をしませんか?」
相手からの反応はない。
どうしたものかと頭を抱えると、か細い声がかえってきた。
《…あなた、やっぱり私が視えるの?》
その言葉に大きく頷く。
すると、相手はほっとしたように私の手を掴んだ。
《お願い。私は誰も殺したくない。これ以上血で汚したくないの……!》
ぼたぼたと真っ赤な液体が掴まれた腕に降り注ぐ。
……誰も見ないような隅の席で本当によかった。
「なんとかします。今夜、あなたの結界へ行きますから…」
《それなら私も、自分の体に戻らなくては。…といっても、夜までは入れないのだけれど》
「分かりました」
おさげ眼鏡の少女は私から離れて、いつも空いている席に腰掛ける。
その姿は、ただ授業を受ける真面目な生徒にしか見えなかった。
自分の席に座りなおすと、周りからの視線にはっとする。
「あいつまたひとりで喋ってる」
「え、やば…」
「近寄ったら呪われるかもよ?早く行こう」
大丈夫。こんなことは日常茶飯事だ。
【もうおまえ喋るなよ!】
【桜良ちゃん、怖い!】
小さい頃は、少し歌ったり人に話しかけただけでそんな反応がかえってきた。
【あなたのこと、家族とは思えないの】
【気味悪くて人を呼べない。必要な金は振り込むからもう関わらないでくれ】
家族と呼べる存在なんていなかった。
だから別に、もうなんとも……
「陽向、次の体育何やる?」
「俺は弓道選択してるけど…」
「時間あったらサッカーの助っ人来てくれない?」
「岡副君、サッカー上手いの!?やってほしいな」
「えっと…気が向いたらかな」
陽向が笑って過ごせる世界ならそれでいい。
私がどんな目に遭っても、それはきっとあのときの罰だから。
「……いる」
「今は俺も視えてる。なんでだろ?波長が合ってきたとか?」
陽向の視え方は時々不安定だ。
本人曰く、波長が合ったり満月の夜はいつも以上に視えるらしい。
一般的に満月の夜霊力が強くなり、新月の夜弱くなる。
それは体質に関しても同じで、しかも怪異や妖の力も同じ条件で左右されるらしい。
「あの子に話しかけたら、」
「陽向、おはよう!」
「あ、ああ。おはよう」
「岡副君、今日は何飲んでるの?」
「スポーツドリンクだよ」
人気者の陽向から距離をとって、おさげ眼鏡の少女の表情を確認してみる。
少し離れた場所から見た感じでは、どう言葉で表せばいいのか分からないものだった。
物憂げにも見えるし、憎悪のようなものを隠しているようにも見える。
解決するには、やっぱり直接話してみるしかなさそうだ。
「…あの、放課後話をしませんか?」
相手からの反応はない。
どうしたものかと頭を抱えると、か細い声がかえってきた。
《…あなた、やっぱり私が視えるの?》
その言葉に大きく頷く。
すると、相手はほっとしたように私の手を掴んだ。
《お願い。私は誰も殺したくない。これ以上血で汚したくないの……!》
ぼたぼたと真っ赤な液体が掴まれた腕に降り注ぐ。
……誰も見ないような隅の席で本当によかった。
「なんとかします。今夜、あなたの結界へ行きますから…」
《それなら私も、自分の体に戻らなくては。…といっても、夜までは入れないのだけれど》
「分かりました」
おさげ眼鏡の少女は私から離れて、いつも空いている席に腰掛ける。
その姿は、ただ授業を受ける真面目な生徒にしか見えなかった。
自分の席に座りなおすと、周りからの視線にはっとする。
「あいつまたひとりで喋ってる」
「え、やば…」
「近寄ったら呪われるかもよ?早く行こう」
大丈夫。こんなことは日常茶飯事だ。
【もうおまえ喋るなよ!】
【桜良ちゃん、怖い!】
小さい頃は、少し歌ったり人に話しかけただけでそんな反応がかえってきた。
【あなたのこと、家族とは思えないの】
【気味悪くて人を呼べない。必要な金は振り込むからもう関わらないでくれ】
家族と呼べる存在なんていなかった。
だから別に、もうなんとも……
「陽向、次の体育何やる?」
「俺は弓道選択してるけど…」
「時間あったらサッカーの助っ人来てくれない?」
「岡副君、サッカー上手いの!?やってほしいな」
「えっと…気が向いたらかな」
陽向が笑って過ごせる世界ならそれでいい。
私がどんな目に遭っても、それはきっとあのときの罰だから。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
白苑後宮の薬膳女官
絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。
ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。
薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。
静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる